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宮川一朗太、デビュー作『家族ゲーム』オーディション裏話

第34回東京国際映画祭

TIFF『家族ゲーム』の4Kデジタルリマスター版上映に登壇した宮川一朗太
TIFF『家族ゲーム』の4Kデジタルリマスター版上映に登壇した宮川一朗太

 俳優の宮川一朗太が5日、TOHOシネマズシャンテで行われた第34回東京国際映画祭「日本映画クラシックス」部門作品『家族ゲーム』の4Kデジタルリマスター版上映に、共演者の由紀さおり伊藤克信とともに来場。デビュー作となった本作のオーディションで、森田芳光監督と交わしたやりとりを振り返った。

松田優作さんの遺作ギャラリー

 故・松田優作さんが破天荒な家庭教師を演じた本作は、問題児である次男の高校受験をシニカルに描いたホームコメディー。今年が、2011年に逝去した森田監督の生誕70周年(没後10年)という節目の年となることから、同作の4Kデジタルリマスター版がワールド・プレミア上映されることとなった。

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 沼田家の母・千賀子を演じた由紀は、久しぶりに会った“息子”の宮川について、「本当に変わらないね。最初に会った時からこのまんまでございました」とコメント。その言葉を受けた宮川が「さっき会った時に(“母”の由紀から)『大きくなったわね』と言われたんです」と返すと、由紀も「お互いにいい年になりましたので。息子がこんな風に社会人になるなんて思ってもいませんでした」と笑顔。さらに「僕は下着姿まで見られてますからね……」と宮川が付け加え、会場を沸かせた。

母親役の由紀さおりと

 沼田家の次男・茂之を演じた宮川は、オーディションで選ばれたという。「後から聞いたら3,000人以上の応募があったそうなんですが、当時は本当にやる気がなかったんですよ」と切り出した宮川は、「当時通っていた劇団が応募したんです。それで一次審査が通りましたという封筒が家に届いて。裏を見たら“にっかつ撮影所”と書いてあって。にっかつというとロマンポルノのイメージがあったので、とうとう劇団が僕をロマンポルノに売ったのかと思いました」と笑いながら述懐。「これは本当に若気の至りだったんですが、その頃はいろんなオーディションに落ちまくっていた時期だったので、ほとんどやる気がなかったんですよ。その時はタイトルが面白くなさそうだなと思ったし、森田芳光監督も知らなかったし、適当に答えてればいいかと思って横を向いて答えていたら、その生意気な感じがイメージにピッタリだと言われて合格したんです」と明かすと、「人生って何が幸いするか分からないですよね」としみじみ付け加えた。

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 ちなみに、沼田家の長男・慎一を演じた辻田順一の話題に及ぶと、宮川いわく現在は連絡がつかないそうで、「彼は実はけっこうモテたんですよ。(現場の)女子に一番人気があったのはお兄ちゃんだったんですよ」と当時のエピソードを披露。舞台あいさつの様子を収録していたテレビカメラに向かって「連絡をください!」と呼びかけるひと幕もあった。

 一方の由紀は、森田監督と初めて会った時にかけられた言葉を思い返す。「僕は『8時だョ!全員集合』の由紀さんが大好きですから。あの感じでやってくださいと言われて。何もしなくていいんで、遊びに来るような感じで来てくださいと言うので、分かりましたと言ったんですけどね」と思い返す。本作で有名な、横並びのテーブルでの食卓のシーンについては、「1列でご飯を食べるということは、やはり新しいマンションの暮らしの中で、家族が向き合っていないんだな、みんなそれぞれが自分の思う方向しか見ていないんだなということの象徴的なシーンなのかなと思ったんですけど、わたしがやるお母さんの役って、短大を出てお勤めをするという経験がないまま結婚しちゃってお母さんになったというホワンとした人だったから、問題意識を感じない方がいいんだなと。(森田監督が)何もしなくていいというのは、こういうことだなと思いました」と振り返った。

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 また家庭教師・吉本役で出演していた主演の故・松田優作さんについては「アウトローの役ではなく、家庭教師の役をやるということで、彼の中でも大きなチェンジの時だったと思うんですが、ものすごく優しい方だった」と語ると、「お昼休みになると、伊丹十三さんと優作さんと一緒にご飯を召し上がっていたんですけど、その時に『由紀さんも一緒にどう?』と言ってくださって。お昼ご飯に一緒に行くんだけど、とにかく二人は映画の話がすごかった。後に伊丹さんは映画を撮ることになるんですけど、あの時も時間ができると、スクーターに乗って映画を3本観てきたとか言って。これがいいとか、あそこがいいとか。もうご飯を食べるのを忘れて2人で映画の話をしていたんです。その話を聞くだけで幸せでしたね。貴重な体験でしたよ」としみじみと付け加えた。(取材・文:壬生智裕)

『家族ゲーム』4Kデジタルリマスター版(※2Kダウンコンバートで放送)は、11月21日21:00ほか日本映画専門チャンネルで放送

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