“妊夫”役の斎藤工、おなかが大きくなり「心境が変わっていった」
俳優の斎藤工が10日、都内で行われたイベント「Netflix Festival Japan 2021」に出席。ドラマ「ヒヤマケンタロウの妊娠」で妊娠する主人公・桧山健太郎を演じる斎藤は、おなかが大きくなることで「自分の心境が本当に変わっていきました」と撮影中の変化を明かした。
本作は、坂井恵理の同名コミックを基にした社会派コメディードラマ。男性が妊娠・出産するようになった世界を舞台に、仕事優先でプレイボーイな主人公・桧山健太郎(斎藤)が、自身の妊娠を機にさまざまな社会の問題に直面し、パートナーの亜季(上野樹里)と共に奮闘しながら徐々に周囲や自分自身の“無意識の偏見”を変えていくさまをコミカルに描き出す。この日のイベントには上野、箱田優子監督も登壇した。
原作、脚本を読んだ際の感想について、斎藤は「男性妊娠というテーマの映画だと、ジャック・ドゥミ監督の『モン・パリ』だったり、シュワちゃん(アーノルド・シュワルツェネッガー)の『ジュニア』などが今までもあったんですけど、(本作は)また少し観点が違って、現代にアジャストしたものになっていて。社会派でありながら娯楽性をすごく感じました。この軽やかさがあれば、本当の意味での何かのきっかけ、問題提起になるんじゃないかなとも思いました」と明かす。
役づくりでは、実際におなかの重みを感じたことに大きな影響を受けたという斎藤。「実際におなかが大きくなっていくという、自分のフォルムというか重みみたいなものもかなり忠実にしていただいていたので、行動の重心が変わってきました。一人の生命体なんですけど、自分の大事にするコアの部分がよりおなかになってくるというような。妊娠されている方は、それまでの日常がちょっとずつ変化してくるんじゃないかなってことを疑似体験させていただきました。自分のフォルムが変化していくことによって、自分の心境が本当に変わっていきました」と振り返った。
一方、最初は「(原作の)表紙にいる女性が私の役かなと思っていた」という上野は、「よく読んでいくと何人かヒロインが出てきて、その後半の方で桧山と絡んでくる姉御肌のちょっと強気で仕事が大好きな女性がこのたびドラマでヒロインとして大きく描かれていく」と説明。「今の時代どういうヒロインだったらみなさんに共感して観ていただけるんだろうと、何度も(脚本を)書いていたんですが、途中から私も話に入らせていただいて、強気なところももちろんですけど、もう少し繊細な部分なども足していきながらよりリアリティーを出していきました」と、試行錯誤の末にドラマ版の亜季が誕生したという。
また、人生を変えたターニングポイントについて聞かれた斎藤は、「役者として仕事がない時に映画のコラムだったり、本当に生意気ながら人様の作品を言葉にするみたいな仕事をさせていただいていたんですけど、ずっと自分のなかで歯がゆくてフェアじゃないなという風に思って。そこから映画を作るようになりました。まず同じ土俵に立たないと、僕の中では自分自身の言葉に責任というか説得力がないなと思って」と自身の創作活動の原点に触れた。
上野は「15歳で東京に出てきたこと」をターニングポイントに選んだ。その理由について「当時は悲惨でしたよ。受験は終わってるし、母が亡くなったりとかいろいろありました。その時は高校に行ってもお仕事が忙しくて、なかなか学校に行けない、だから大学もおそらく行けないだろうみたいな中で劣等感がすごかったんです。けれど、今となってはその時東京に来たおかげで今の自分があるし、仕事をして20年という月日が流れたのも今となってはすごく良い経験だなって思えるので」と正直な思いを口にしていた。
最後に、斎藤は「個人的に現場に託児所を設けるというプロジェクトを目論んでいた流れがあったなかで、必然的に出会ったこのテーマの作品でした。この直前にもジェンダーバイアスのトレーニングを受けたり、リスペクトトレーニングを撮影前に受けたり(しました)。今これを作ったことによってまた一つの議論だったり、誰かにとっての必然が生まれることを心から願っております。でも、軽やかな娯楽でもあるので、楽しみにご覧いただけたらうれしいです」と呼びかけていた。(編集部・吉田唯)
ドラマ「ヒヤマケンタロウの妊娠」は2022年にNetflixにて全世界独占配信