『ヴェノム』続編、上映時間を97分にした狙い アンディ・サーキス監督インタビュー
映画『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』(全国公開中)のメガホンを取ったアンディ・サーキス監督がリモートインタビューに応じ、本作のヴィラン・カーネイジや前作『ヴェノム』よりも短くなった上映時間について語った。
『ロード・オブ・ザ・リング』のゴラム役や『猿の惑星』のシーザー役などモーションキャプチャー俳優の先駆者として知られ、『ブレス しあわせの呼吸』『モーグリ:ジャングルの伝説』と長編映画も手がけるサーキス監督。続編参加のきっかけは、主演を務めるトム・ハーディからのラブコールだったそうで、以前からトムとのタッグを熱望していた監督は迷わずイエスと回答したという。
「演じるキャラクターや入り込む世界観という点では、私とトムは同じテイストや感性を持っていると思います。『ヴェノム』1作目での彼の演技も大好きだったので、電話がかかってきた時はワクワクしました。トムと(脚本の)ケリー・マーセルで考えた脚本を読んでみると、前作からかなり物語が進んでいたんです。キャラクターに重点を置くことだってできますし、イエスというまでそんなに長い時間はかかりませんでした」。
本作には、原作コミックで高い人気を誇る凶悪ヴィラン・カーネイジが登場する。「非常に邪悪で悪意に満ちているカーネイジですが、ヴェノムとはまた違うパワーがあります。ヴェノムは屈強でアメフト選手のような体型ですが、カーネイジの体型はクレタスの心理を反映したかのような滑らかなフォルムで、触手を凶器に変えたりすることもできます。ヴェノムが正面から立ち向かっても簡単に勝てるような相手ではありません」と説明したサーキス監督は、「コミックファンなら威嚇的でひねくれたR指定のカーネイジを期待すると思いますが、私たちはこの映画を幅広い層に楽しんでもらいたかったので、できる限り再現できるように取り組みました」とPG-13(13歳未満の鑑賞には保護者の同意が必要)でも原作に近いカーネイジの凶暴性を描くことを目標としていた。
近年のマーベル映画は、上映時間が2時間(120分)を超えることが当たり前となっているが、本作は1時間37分(97分)とかなりコンパクトで、前作『ヴェノム』の1時間52分(112分)よりも短い。サーキス監督は「そこまで長尺の映画を作るつもりはなかったです」と切り出すと、「もともと、私たちは物語が早々と進んでいくジェットコースター型の映画を作ろうとしていました。盛りだくさんの内容にカーネイジも盛り込んで、ストーリーが素早く膨らむようにしたかったんです」とその狙いを明かす。
「(本編は)主に二つのパートにわかれていて、一つはエディとヴェノムの物語。二人の関係性やブロマンスの要素を深掘りする時間を設けました。エディはヴェノムにとって最高の宿主であると同時に、それぞれが異なる信念を持っています。それがストーリーの一部で、もう一つはカーネイジの覚醒。二つの物語がうまく交差するように、私たちはクレタスがカーネイジへと変貌する過程に勢いをつけたかったんです」
エディとヴェノムを通して、シンビオートが人間の宿主とどのように適応し、いかにして適応できなくなるのかを描いたサーキス監督。「ヴェノムは物事をハッキリと言うタイプ。秘密にすることを拒み、リーサル・プロテクターとして悪人を成敗して市民を助ける役目を果たします。一方で、エディは大人しくしていたいタイプで、普通の生活を送りたがっています。出世もしたいし、新しい出会いもほしい。もとの生活を取り戻したい。対立する二人を深掘りすることはすごく楽しいことです。お互い不満を募らせ、我慢の限界が来た時、二人はぶつかり合う。そして、別れた時こそお互いを一番必要とする瞬間(=カーネイジの出現)が訪れるんです」とカップルのような二人の関係性を明かしていた。(編集部・倉本拓弥)