「青天を衝け」徳川家康の役割とは何だったのか?黒崎博チーフPが総括
いよいよ残すところ最終話のみとなった吉沢亮主演の大河ドラマ「青天を衝け」(NHK総合ほか)。“日本資本主義の父”と呼ばれた渋沢栄一(吉沢)の生涯を描いた本作で、歴史の語り部を担った北大路欣也ふんする徳川家康は、序盤から大きな反響を呼んだ。そんな家康について、黒崎博チーフ・プロデューサーが総括した(以下、40回の内容に触れています)。
佐幕派、討幕派と複雑に入れ替わる江戸時代末期から明治に至る歴史は、とかく難解と言われ敬遠する人も多い。そんななか、歴史背景を丁寧に説明する役として、江戸時代を開いた徳川家康を登場させるというアイデアは、視聴者に多くの衝撃を与えた。
当初は、江戸幕府を作った人が、終わりを見届けるという位置づけだった家康。しかし黒崎は「最初は難解な幕末の歴史の語り部という役割として登場していただいたのですが、北大路さんの力というか、熱いまなざしによって、あっという間にストーリーテラーとしての立ち位置を超えて、一緒に物語を見てくれる人物になりました」と、当初の想像をはるかに超える存在になったことを明かす。
この言葉通り、徳川慶喜(草なぎ剛)が大政奉還し、実質的に幕府が終焉を迎えたあとにも家康は登場し栄一を見守る。黒崎は「『青天を衝け』に登場した家康さんは、栄一をイノベーターとして応援しているという視線がすごくにじみ出ている。若かりし栄一を、時に息子のように、そして孫のように見ている瞬間があったのかなと。そんな人としての視線を出してくださったのは、北大路さんの力だと思います」と感謝を述べていた。
12月19日放送の第40回「栄一、海を越えて」では、徳川慶喜が77歳の生涯を終えた。物語の最後に登場した家康は、白い波のような背景のなか「慶喜よ、よくぞ生き抜いてくれた」とねぎらいの言葉をかけた。黒崎は演出意図を「慶喜さんは徳川の世を閉じていった人。天国感を出してもいいのかなと思い、ああいう白い世界にしてみたのです」と語る。
最終回に向けて「もちろん家康さんには最後まで見届けていただこうと思っています」と明かすと「最後に家康のシーンを撮り切ったとき、吉沢さんも本当の肉親であるような感無量な表情を浮かべていました。なにか時空を超えた関係性が出来上がったような気がしました」と画期的な試みを振り返った。(取材・文:磯部正和)