仮面ライダークウガから22年 オダギリジョー、特撮は独特な世界「自分を育ててくれたのは間違いない」
現在放送中のNHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」でも抜群の存在感を放つ俳優のオダギリジョー。新作映画『大怪獣のあとしまつ』(2月4日全国公開)では、元特務隊・隊員のブルース(青島涼)役で、その個性を遺憾なく発揮している。主演ドラマ「時効警察」や映画『転々』の三木聡監督と再びタッグを組んだオダギリが、自らキーパーソンと語るキャラクターや、三木監督作品への思いを語った。
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自分を育ててくれた特撮「仮面ライダークウガ」
本作は「空想特撮エンターテイメント」と銘打たれているが、オダギリと特撮作品と言えば、「仮面ライダークウガ」(2000)を思い出す人も少なくない。「僕はそれまで舞台の勉強をしていて、カメラを前にしてのお芝居はほぼ経験がなかったこともあり、随分と学ばせていただきました。俳優として、あの現場で育ててもらったところがありますね。一年間、役と向き合いその深みを追求できたし、作品を作る醍醐味を教わった現場でもありました。そういう意味でも、実にいいお仕事と巡り合えたと思っています」と今も「クウガ」のことを忘れてはいない。
現在では若手俳優の登竜門として、すっかり認知されている特撮ヒーロー作品。「クウガ」はその先鞭をつけた一作でもあるが、当時の反響はどのように受け取っていたのだろうか。「驚きや戸惑いはあったんだと思います。作品を喜んでもらえる状況というのは、とても嬉しく感じていましたが、逆に自分では何もできてないので、作品が成功したとしたら、それはプロデューサーや監督陣をはじめ、拘りぬいたスタッフのおかげだと思っていました」と率直な思いを語った。
イメージはハードボイルドなアメリカンヒーロー
『大怪獣のあとしまつ』は怪獣の死体処理を巡っての人間模様が描かれる、いわば“変化球の怪獣映画”である。「もう随分前のことになりますが、何かの機会に三木さんから映画の構想をうかがって、“面白そうだな”と思っていたんです」と作品の第一印象を明かしたオダギリは、「ただ、実際にやるとなると凄い規模の話になるわけで、当然お金も時間もかかります。これを成立させるのは難しいだろうな……と。ですが、それを有言実行して、実際に映画として完成させた。そのことは心からすごいと思うし、自分のことのように喜びを感じています」と三木監督に賛辞を送った。
軽妙な笑い、どこかシュールな雰囲気と、独自の味わいを持つ三木監督作品。オダギリは「日常のどこにでもあるような不条理や、誰も掘らないようなところを気付かせてくれるんですよね。本作も三木さんならでの視点に基づく作品ですが、今回は特にスケールが大きいので、三木さんらしい面白さがどう描かれるんだろうかと、すごく期待していました」と魅力を語ると、「三木さんとは長い関係で、それこそ20年近く一緒に仕事をしてきているのですが、いまだに呼んでもらえるのはやっぱり嬉しいです。それは、役者としての喜びですね」と三木監督の作品に出演できる喜びを噛み締めた。
オダギリが演じる青島は“ブルース”と呼ばれる爆破のプロで、本人曰く「映画の中盤から登場するキーパーソン」だという。「ちょうど映画を盛り上げるための役どころになればいいなと思いました。演じる上では、撮影現場で三木さんと細かく話し合いながら作っていて、それがスクリーンに形として表れていると思いますが、特別に自分からアプローチして役作りをしたつもりはありません」と謙虚さを見せるが、ブルースは毛皮を纏った作業着にドレッドヘアとインパクト絶大。中でもドレッドヘアはオダギリからの提案だったそうで、「三木さんはキャラクターの容姿にも拘る人なので、基本的には監督のイメージにお任せするんですが、髪型に関しては、ドレッドはどうですか? と提案した記憶があります。ブルースに対してハードボイルドなアメリカンヒーロー……そういったイメージがあったんです。日本映画ではあまり目にしないドレッドヘアを使うことで特異なキャラを表現できただろうし、メイクさんのおかげで想像以上に上手くいったと思います」と意図を明かした。
三木監督が提示する新しい特撮映画の見せ方
劇中では、オダギリふんするブルースがダム破壊に挑むシーンが登場する。「ダムに爆破ポイントを映写する場面も、実際のロケ地で大掛かりな撮影をしました。寒い中での撮影でしたが、スタッフもまた監督の作りたいものに応え、ベストを尽くされていたと思います」。
「『時効警察』もそうでしたが、テレビシリーズは時間もなければ予算も限られてくるし、特に時間に追われながらの撮影なので、現場はとても大変なんですよね。今回は時間的にも余裕を持って取り組まれていましたし、とにかく三木さんがやりたいことをやれていて、現場でも本当に楽しそうでした。見ていて微笑ましかったですよ」と撮影を振り返ったオダギリ。実際、三木作品としてはかつてないスケールの作品であり、またジャンルとしては初の「特撮もの」となる。そんな本作を、オダギリはこう分析する。「内容的にどうしても緊張感やサスペンス要素がストーリーを引っ張るじゃないですか。サスペンスのドキドキと笑いを共存させる事ってとても難しいと思うんです。今回、怪獣の死体に対応する現場サイドのドラマをサスペンスで描きつつ、総理周辺に笑いを集約させているのですが、そうやって二つの要素をミックスさせサスペンスと笑いを共存させるなんて、三木さんじゃなければできないことだと思います」。
オダギリ自身は、原体験として特撮作品を観て育ってきたわけではないという。「だから他とは比べられないのですが(苦笑)。普通の特撮映画だったら、笑いはそんなに深堀りしないですもんね(笑)。そこは三木さんにとっても挑戦だったと思いますが、『大怪獣のあとしまつ』では、ひとつ新しい特撮映画の見せ方を提示できたのではないでしょうか」と期待を寄せていた。(取材・文:トヨタトモヒサ)