長澤まさみ『コンフィデンスマンJP』ダー子から学んだ「人を幸せにする力」
「コンフィデンスマンJP」シリーズの天才詐欺師・ダー子役で、見事なコメディエンヌぶりを発揮している長澤まさみ。劇場版第3弾『コンフィデンスマンJP 英雄編』(公開中)も話題を呼んでいるが、長澤は「ダー子は太陽のようなキャラクター。元気でいることのパワーには、人を幸せにする力があるんだと思います」とダー子が幅広く愛される理由を分析。自分の中に潜む“笑わせ力”を語るとともに、「自分一人で頑張るのではなく、人に頼ることも大切にしながら過ごしていきたい」と新年の抱負を明かした。
古沢良太の脚本、最大の魅力は「キャラクターへの愛」
本シリーズは、ダー子、ボクちゃん(東出昌大)、リチャード(小日向文世)の3人がコンフィデンスマン=信用詐欺師にふんして、欲望にまみれた人間たちから大金をだまし取る痛快エンターテインメント・コメディー。最新作では、地中海に浮かぶ世界遺産の島・マルタを舞台にだまし合いバトルが勃発する。
本作の製作決定は、前作『コンフィデンスマンJP プリンセス編』の大ヒット舞台あいさつの場で発表された。長澤は「前作の現場も、みんなどこかで『また会える』という気持ちで撮影していたように思います。だから『続編をやる』と聞いてもあまりびっくりしなかった(笑)。『やる』と言われたら、みんなすでに行く準備ができているような作品。不思議です」とシリーズへの愛着を語る。
仕掛けや伏線回収を味わえる爽快感あふれる展開は、本シリーズの大きな魅力だ。脚本を手掛けているのは、数々のヒット作を生み出し、2023年の大河ドラマ「どうする家康」を担当する古沢良太。最新作の脚本を読んだ長澤は「今回は特に物語が複雑に交差しているので、どうやって演じようかと頭を悩ませました」と最高難度の仕掛けを示唆しつつ、「ダー子たちの素の一面も描かれている。それは今までにないことで、難しさも感じました」と吐露する。
何度観ても楽しめる中毒性のある古沢脚本の最大の魅力は、「それぞれのキャラクターに対して、古沢さんからのたくさんの愛情が注がれているところ」だと続ける。「キャラクターとして命をもらった後には、ずっとその命が全うできるように脚本が描かれている。そういった愛情こそが、観ている方にとって沼にハマっていく原因なのかなと感じています」
ダー子と長い付き合いになるといいな
撮影現場では、新たに参戦したメンバーからも大いに刺激を受けたという。長澤が「完璧主義」と評したのが、オッドアイが印象的な捜査官・マルセル真梨邑役を演じた瀬戸康史。「瀬戸さんは普段はものすごく温厚な方なんです。人当たりも良くて、とても穏やか。でもお芝居となると、どっしりと構えてミスをしない。隙がない感じがあって、真梨邑役にぴったりでしたね」と惚れ惚れ。ボクちゃん、リチャードといったおなじみのメンバーとは「いい意味で、気を遣わずに撮影に取り組めている」そうで、「みんなもとても仲が良くて。一緒に現場を乗り越えていく“同志”としての信頼関係があります」と最高のチームワークを育んでいる。
2018年に連続ドラマとして放送されて以来、長きに渡ってダー子を演じてきた。本シリーズでなければ見せないような顔、動き、扮装が満載で、ダー子役は長澤のコメディエンヌとしての地位を確立したキャラクターのように感じる。ファンイベントでは、長澤が「これだけ愛されるキャラクターと出会えたことは、宝くじに当たるような確率」と語る一幕もあった。
ダー子から学んだのは、「元気でいることのパワーには、人を楽しませたり幸せにする力がある」ということ。長澤は「たとえば朝のあいさつを大きな声で言えると、その日の成り立ちが変わったりしますよね。ダー子を見ていると、その人のテンションやモチベーションが人生を作るんだと感じます」とダー子が愛される理由を噛み締めながら、「ダー子には無限大の魅力がある。長い付き合いになるといいなと思っています」とにっこり。
自身の“笑わせ力”については、「子どもの頃から『走っているときに口角が上がっている』と言われることが多くて。映画の撮影で『笑いながら走っていたから、もう1回。次は笑わないで走って』と言われたこともあります。息をしているだけで、口角が上がっちゃう(笑)。もともと、笑いのなにかが付いているのかも! いつもユーモアを持って生きたいなと思っています」と声を弾ませ、「笑いって、その人の持っている温度や、意図していないところから生まれるものなのかなと感じています」としみじみ。
2022年の抱負も
30代に突入してから、ますます女優としての輝きに磨きをかけている。長澤自身も「芝居を楽しんで、充実できていることを感じます」と実感を込め、「でも小日向さんを見ていると、私はまだまだだな! と思います」と大きな笑顔を見せる。
「今年もいろいろな撮影が続くので、健康づくりのための努力を怠らず、目の前のことにきちんと向き合っていきたい」と誠実な歩みを誓いながら、「若いころは『まず自分が頑張らなければ!』と思っていましたが、プライベートでもお仕事でも、これまで本当にすばらしい人たちと出会うことができました。それは私の財産。最近はそういう人たちに身を預けたり、甘えたり、寄りかかってみるのもいいものだなと感じています。自分一人で頑張るのではなく、いろいろな人に頼ることも大切にしながら日々を過ごしていきたいです」と未来を見据えていた。(取材・文:成田おり枝)