ピーター・ディンクレイジ「ゲーム・オブ・スローンズ」ティリオンと『シラノ』主人公の共通点語る
ドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」のティリオン・ラニスター役などで知られるピーター・ディンクレイジが、2月25日公開のミュージカル映画『シラノ』で主演を務める。歌やアクションなどさまざまなことに挑戦したピーターが、本作の撮影の裏側や演じたシラノという役柄について語った。
エドモン・ロスタンの戯曲「シラノ・ド・ベルジュラック」を『プライドと偏見』『つぐない』のジョー・ライト監督が再構築した本作は、17世紀のフランスを舞台に3人男女の切ない恋模様を描く。主人公の剣豪シラノ(ピーター・ディンクレイジ)は、長年思いを寄せるロクサーヌ(ヘイリー・ベネット)に気持ちを打ち明けることができないでいるなか、ロクサーヌが、青年クリスチャン(ケルヴィン・ハリソン・Jr)に惹かれていることを知る。そして、詩の才能もあるシラノは、言葉で愛情を表現するのが得意ではないクリスチャンの代わりに、ラブレターを書くことになる。
シラノは腕の立つ剣豪ということで、劇中では殺陣やアクションも多く、ピーターは「恐怖や不安も伴った」そうだが、「素晴らしいスタッフたちに支えられました。特にスタントチームやスタントコーディネーター、イタリア人と英国人のスタントマンたちが、安心・安全で自信を持って撮影できる環境をつくってくれました。彼らのおかげで楽にできるような形で挑むことができました」と周囲に感謝する。
さらに、ミュージカルシーンでは、魅力的な歌声を披露。「普段は、好きな歌手を真似して歌います。ニーナ・シモンやフレディ・マーキュリー、(劇中の音楽を手掛けたロックバンド)ザ・ナショナルのボーカル、マット・バーニンガーです」と明かし、歌唱の練習については「マットの声を真似して、歌いやすい音程を掴めたら、調整するために彼の声を聞くのを一旦止め、歌いやすい自分なりの声にしていきました」といった方法を用いたという。
戯曲のシラノは鼻が大きい設定だが、本作ではその設定がなくなっている。ピーターはそのことについて、「個人的にはよかったと思います。わたしの身体的な特徴や違いを考慮すると、大きな鼻が似合うとは思いませんでした。個人的な意見ですが、ハンサムな俳優が大きな偽物の鼻をつけていたことに違和感を覚えることがありました。観客も鼻が偽物であることに気がついていますし、その俳優も役を終えると鼻を取って帰宅する」と見解を述べ、「大きな鼻を付けなかったってことで、とても解放的に演じることができました」と振り返った。
また、シラノと「ゲーム・オブ・スローンズ」で演じた人気キャラクター・ティリオンとの違いや比較についての質問には、「ティリオンもシラノも、言葉というのを誰よりもうまく表現できる、頭の良いキャラクターです。多くの人はそういったところが好きなんだと思います」と分析。ただ、「ティリオンは、自分の感情に対して正直」と違いがあるようで、「ティリオンは、争いごとや闘いに自ら身を投じることはほとんどなく、シラノとは違って、剣を使うことに自信があるわけでもありません。部分的にこの2人に親近感を覚えます」と両方を演じたからこそ感じた気持ちを吐露した。
自分のありのままの姿を受け入れてもらえるのか、と不安になるというシラノの心情は、現代社会においても通ずるものがある。ピーターは、「インターネットで自分をよく見せようとしがち」と現代の人々の生きづらさを指摘。「真の自分を見せることは難しいのか?」という問いには「とても難しいと思います。わたしは若くないですし、インターネットやSNSを避けてきました。そういったものに恐怖を感じますし、現在もやっていません。自分自身をさらけ出すことになりますし、危険性もあるからです。誰もが自由に見て、なんとでも言えるような環境なので、自分がよく見られるように、人々は表向きの魅力的な自分をネット上に作り出しています。それは、シラノがクリスチャンと共にしたことと全く同じです。100年以上年前に書かれたことが、現代社会においても起こっているということは驚愕です。賛同できるものではありません」と驚きを隠せない様子で、「愛というものは、誠実さ、真実、理解し合うことだと思います。しかしながら、正直すぎると、周りを怖がらせて、避けられてしまうことにも繋がりかねませんが、十分な誠実さ・正直な心を持っていれば、寂しい思いをすることはありません」と回答した。
ピーターは、妻エリカ・シュミットが手掛けた舞台版でもシラノを演じたことがあり、本作でも彼女は脚本と製作総指揮を担った。これまでに何度かエリカと仕事をしてきたことは、「苦痛だったか、楽しかったかと聞かれたら、間違いなく後者です。仕事が早く進みますし、お互いわかり合っているので、和やかな仕事環境をつくっていたと思います。それにいつも一緒にいるので、仕事が終わって家に帰った後でも、仕事のことを話し合える」と自身にとってプラスになっているようだ。
「生活と仕事は密接に関わっています。生活の大部分は仕事ですし、仕事をすることで生活をしている。この2つが一緒だということは利点があると思っています。仕事や作業を一緒に取り組むことができたなら、それはきっとよくなっていく。そして、絶え間なく影響を受け合うことができる」と互いの存在が刺激となっていると語っていた。(編集部・梅山富美子)