アカデミー賞史上初の快挙！難民青年の秘密描く『FLEE フリー』6月公開

　第94回アカデミー賞で、史上初となる国際長編映画賞、長編ドキュメンタリー賞、長編アニメーション賞3部門ノミネートの快挙を成し遂げたドキュメンタリー映画『FLEE（英題）』が、『FLEE フリー』の邦題で6月より全国順次公開されることが決定した。

　主人公は、幼いころに父がタリバンに連行されたまま戻らず、残った家族とともに命がけで祖国を脱出したアフガニスタン出身のアミン。家族とも離れ離れになり、数年後に単身デンマークに亡命した彼は、30代半ばとなり研究者として成功を収め、恋人の男性と結婚しようとしていた。しかし、彼には恋人にも話していない、20年以上抱え続けていた秘密があった。その過酷な半生を、親友である映画監督の前で静かに語り始める。

　デンマーク、スウェーデン、ノルウェー、フランスの合作による本作は、主人公アミンをはじめ周辺の人々の安全を守るためにアニメーションで制作。タリバンとアフガニスタンの恐ろしい現実や、祖国から逃れて生き延びようとする人々の過酷な日々、そして居場所を奪われることの悲劇。アミンの物語には紛争、難民、人種差別、LGBTQ+など数々のテーマが内包されており、自身も迫害から逃れるためにロシアを離れたユダヤ系移民であるヨナス・ポヘール・ラスムセン監督は、「難民であることはアイデンティティではありません。それは誰にでも起こりうる状況です。アミンは難民ですが、彼はそれだけではありません。彼は学者であり、家の所有者であり、夫なのです」と語っている。『シェイプ・オブ・ウォーター』のギレルモ・デル・トロ監督は、オスカーのアニメーション部門にドキュメンタリー映画である本作がノミネートされると、「『FLEE フリー』がアニメーションを芸術として発展させたことをとても嬉しく思う」と自身のTwitterに投稿した。

　本作は、『サウンド・オブ・メタル　～聞こえるということ～』などのリズ・アーメッドと、ドラマシリーズ「ゲーム・オブ・スローンズ」のニコライ・コスター＝ワルドーが、エグゼクティブプロデューサーとしてサポート。昨年のサンダンス映画祭ではワールド・シネマ・ドキュメンタリー部門のグランプリを、アヌシー国際アニメーション映画祭では最高賞となるクリスタル賞ほか3部門を受賞。各国の映画祭で69受賞144部門ノミネートの評価を得ている（2月28日時点）。（編集部・石井百合子）

映画『FLEE フリー』は6月、新宿バルト9、グランドシネマサンシャイン池袋他全国公開