「ハケンアニメ!」原作者・辻村深月も驚き!制作陣のハンパない熱量
吉岡里帆が主演を務め、中村倫也、柄本佑、尾野真千子が共演する映画『ハケンアニメ!』(5月20日公開)。日本のアニメ業界を描く本作の原作者である辻村深月が、制作陣の熱量や撮影現場を見て感じたことなどを語った。
本作は、公務員出身の新人アニメーション監督・斎藤瞳(吉岡)が、憧れのスター監督・王子千晴(中村)と最も成功したアニメの称号「ハケン(覇権)」を巡り熾烈な闘いを繰り広げるさまを描く。
本企画が動き出したのは2015年。紆余曲折ありコロナ禍での撮影延期を含め7年の期間を経て公開となるが、製作陣は、並々ならぬ思いで本作に挑んでいた。原作者の辻村は、映画化の話が来た時について「最初に来てくださった時から、熱量がものすごかったです。プロデューサーの方々にとっても、映画づくりやものづくりの話として、原作に共感できるところがたくさんおありだったようで、自分ごととしてこの原作を映画にしなければならないと思っている、と熱意を込めて語ってくださいました。とても光栄なことで、これはお任せしたいなと思いました」と振り返る。
「いったん『映像化します』となると、原作者側にはいちいち確認が来ないことも普通はたくさんあるんです。途中で進捗状況を教えてもらったりはせずに、気づいたら完成を迎えるようなことも多い中、でも『ハケンアニメ!』に関しては、『今、こういう状況です』『作中のアニメをこの声優さんに受けてもらいました!』というふうに原作者もスタッフの一人に加えてくれた感じがありました。このチームにお願いできてすごく幸せです」と笑顔を見せる。
また、辻村は、脚本やアニメについて、制作陣と何度もやり取りを繰り返した。「ボリュームのある原作なので、これをまず、2時間の形に完璧にまとめてくださったことに感謝を覚えます。このセリフは大事だろうから、というのを汲んでくださってる感じがすごくして。原作のセリフや展開をただそのまま映像化するのではなくて、そこを最大限魅力的に見せるにはどうしたらいいかを考え抜いてくれた脚本になっている。原作者と一緒にお客さんのほう向いて、より良いものをつくろうとする気持ちが感じられました。すごく幸せなやり取りでした」と感動したという。
辻村が一度オッケーを出してからも、さらにブラッシュアップしたものがあがってくるなど、制作陣の本気度に目を見張った。吉野耕平監督も、何度もアニメ制作会社に取材に行き、知識をパンパンにしてから撮影に挑んだそうで、「原作をもう一回ご自分が書き直すくらいの勢いで取材をしてくれている」と喜びをにじませる。
また、本作で最も重要と言っても過言ではない劇中アニメ「サウンドバック 奏の石」と「運命戦線リデルライト」。原作だと劇中のアニメの内容は飛び飛びになっているが、辻村は映画のために2作品それぞれシリーズ12話分のプロットを新たに書き下ろした。
アニメ業界の監修には東映アニメーション、劇中アニメの制作には Production I.G、そして谷東監督、大塚隆史監督ら豪華スタッフと、高野麻里佳、梶裕貴、潘めぐみ、高橋李依、花澤香菜、速水奨ら声優陣が名を連ねる。本当に“ハケンアニメ”を狙っているような布陣だ。スタッフや声優の名前を聞いたとき、辻村は「くずおれました(笑)」と衝撃を受けたそうだ。
また、この日は、吉岡演じる瞳と中村ふんする王子が対峙するシーンの撮影が行われ、それを見学していた辻村は、「吉岡さんは、かわいらしいイメージが強い女優さんと思いきや、でも、実はすごく凛々しい女優さんなんだと、彼女が主演した『見えない目撃者』を観たときに感じたんです」と吉岡の印象を明かし、「瞳は新人監督で感情が表に出にくいけれど、内なる闘志がある。吉岡さんがその瞳の、コミュニケーションが苦手な子が精一杯頑張って伝える喜びや怒りをめいっぱい表現してくれていて驚きます。これ、私が書いたあの子だ! って」と笑みがこぼれる。
対する王子については、「撮影を見ても感じたんですが、王子って天才的なんだけれど、実はそういうふうに見せたくて、すごく自己演出をしている。本当はすごく泥臭いし、かっこいいより可愛いところの方が強いキャラクターなんじゃないかなぁ、と。中村さんだったら、そこを的確に演じてくださるんじゃないかという思いがとても強かった」と中村に厚い信頼を寄せる。
王子役には中村を最初から希望していたそうで、「以前、中村さん出演の舞台『ヒストリーボーイズ』を観て、なんて素敵なんだ! と思っていたので、王子役は誰がいいですか? と聞かれて『中村倫也さん』とお名前を挙げました。その時はまさか実現しないだろうと思っていたので、まさかお受けいただけるなんて、と。今もまだ夢のようです」と回顧していた。(編集部・梅山富美子)