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窪田正孝、結婚、コロナ禍…30代で劇的変化 インプットする時間の大切さ実感

窪田正孝
窪田正孝 - 写真:木川将史

 医療を縁の下で支える放射線技師にスポットを当てた月9ドラマ「ラジエーションハウス~放射線科の診断レポート」は2019年4月期に放送され、昨年10月期にシーズン2が放送。そして、映画版となる『劇場版ラジエーションハウス』が公開中だ。本シリーズで主人公の放射線技師、五十嵐唯織(いがらし・いおり)を演じる窪田正孝は、「『劇場版ラジハ』が俳優としての分岐点」と語る。コロナ禍を挟んで制作された本シリーズを通し、コロナ禍、結婚など、30代で迎えた劇的な変化を語った。

【初日の様子】窪田正孝、ラジハ完結に寂しさ

映画化に至った「ラジエーションハウス」の魅力

劇場版でラジハメンバーが対峙するのは未知の感染症 (C) 2022横幕智裕・モリタイシ/集英社・映画「ラジエーションハウス」製作委員会

 横幕智裕(原作)、モリタイシ(漫画)の原作に基づき、レントゲンやCT検査などで病変を写す放射線技師の戦いを、芸達者な俳優陣が構築する笑いとグッとくる人間ドラマの中に描く「ラジエーションハウス~放射線科の診断レポート~」シリーズ。主役を演じてきた窪田は、このシリーズが愛される理由を「皆さんもどこか孤独を感じているからではないか」と分析する。いつか病気になるかもしれない不安は誰もが抱くもので、「そうなったとき、ラジハメンバーに診てもらえたらうれしいと思うのかも。“この患者さんを救うには?”と医師ではない立場で、治療の権限がないからこそ病院内で根回しをしたり、地味な作業を続けて、もがきます。少なくともこのシリーズでは、そうして一人の患者に時間をかけて大切にしてくれると思わせてくれるし、その思いはコロナ禍でより加速したかもしれません」と続ける。

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 シーズン1から続く鈴木雅之監督の演出も魅力の一つで、「『ロングバケーション』(1996)などのトレンディドラマの時代からドラマを観てきた方が『HERO』(2001・2014)シリーズなどを経て、そのままこのシリーズを見続けて下さっているのかもしれません。視聴者の年齢層が幅広く、だから最強なのだと個人的には思っています」。演じる上では共演者の存在も大きいようで、「監督は舞台経験豊富な方などを起用され、僕ら若者衆は引っ張り上げてもらっています」

唯織と杏の関係は……? (C) 2022横幕智裕・モリタイシ/集英社・映画「ラジエーションハウス」製作委員会

 ラジエーションハウスのチームプレーに加え、唯織と初恋の人である放射線科医・杏(本田翼)との関係も本シリーズの魅力の一つ。唯織は、仕事面では医師免許を持つからこその常識にとらわれない洞察力やひらめきで患者の病に切り込む天才だが、私生活ではとことん不器用。窪田は唯織と杏の関係について「彼の原動力は杏ちゃんで、幼いころにイジメられっこだった自分を助けてくれた彼女のために動く。そこは今作に至るまで一ミリも成長していません」と振り返る。

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 劇場版では、杏が父の危篤を受けて離島へ。大型台風で土砂崩れなどの被害を受けた島を、未知の感染症というさらなる脅威が襲う。杏はアメリカ留学を72時間後に控える設定とあって、唯織との関係に変化が起きそうだが「結局、どっちが動くかなんですよ。早く動け! と思うんですけど(笑)。自分でも、変化を起こしたい! と思うところはありましたが、そうすると唯織の軸が消えてしまう気もしていて」と、演じながらも葛藤があったことを明かす。唯織は経験より知識が上回っていたことから、「この映画までの彼は人ではなく、病に侵された体とひたすら対峙するマシーンのような存在。だから心が厳かでした。それが人と言葉を交わし、感情をやりとりし、少しずつ少しずつ経験をして変化していくんですよね」

結婚を経て心のスペースが広がる

写真:木川将史

 昨年夏の撮影を振り返り、「この劇場版が一つの分岐点だと思うんです」と俳優としての今について語り始める。いくつもの作品を経て、「自分からレールを敷いてやってみたいという思いが強くなりました。プライベートで出会った人、監督さん、人との繋がりから生まれるものにとても興味があります。意外なところから繋がっていったりして、とてもワクワクしますよね」

 もともとは「人と何かを共有するのが得意ではありませんでした」という窪田。集団より一人でいたいタイプだったそうで、「でも……一人でいるのって寂しいじゃないですか。集団でいると疲れるし、って結局はわがままなんですけど」と笑う。

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 しかも20代は「特に休みを欲していなかった」というから驚く。撮影期間に設けられた休日、“撮休”があれば十分で、「作品と作品の間に一週間は空けてほしい、というスタンスで仕事をさせてもらっていました。次の作品の準備のために」というほど仕事に明け暮れた。それでいて私生活を豊かにしようという意識もなく、「お風呂の水滴を拭くとか、そういうことでしか時間を潰せないくらいでした(笑)。それでどんどん閉鎖的な心境になっていた」そう。

 しかし、そうした日々はいつまでも続けられるものではなかったようで、「作品に出続けると、どこかで行き詰まります。気持ちや感情を出す仕事だから、内側から削られていくんです。それで私生活に戻ったとき、僕は喜怒哀楽がわからなくなる時期もありました。毎日芝居をして、感情を表して。自宅に帰ったときに今、自分が疲れているのか楽しいのかもわからない。仕事をさせてもらえてもちろんうれしいけど、それで何を得たのかもわからない。このままいったら精神的におかしくなるな……と、本当に行き詰まる前に気づけました」とギリギリの日々を振り返る。

 そんな彼に大きな変化をもたらしたのが結婚だった。「もちろん結婚のカタチは人それぞれですが」と前置きした上で、「まず家の中のすべてが共有スペースになりますよね。一番一緒にいたい人と、あらゆるものを共有していく。一人一人の時間もあるけど、寝るときも起きたときもご飯を食べるときも、自分だけじゃなく相手の気持ちも考える。すると自然に、いつの間にか心のスペースが広がっているんです」と充実した生活をのぞかせる。

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 そうして昨夏、この映画の撮影を終え、「役者としてではなく人生と向き合う時間があった」そう。きちんと休みをとりインプットする時間の大切さを実感したといい、「人なのか動物か、森か土かわかりませんが、エネルギーをもらう時間が心を豊かにするなと。そう思うようになって食生活が変わり、寝る時間をしっかりと確保するようになりました。そうしたことを無理なくやっていくと、人との出会いや作品選びにつながっていく気がして」

 最近では区画を借りて畑を始めたそうで、「早く種を蒔かないと。果物って難しいと思うんですけど、スイカをつくりたいんですよ、大好きなので。生きていくことは、食べること。人を良くすると書いて“食”ですから。食べものも飲む水も、体に入るものはこだわるようになりました」と大きな変化を実感する。いくつもの山を乗り越えた今「楽しかった記憶、物理的な大変さを伴った作品、精神的なキツさを覚えたこと、すべてをひっくるめてなかったことにしたくない。ちゃんと受け止めて考え、解決した先に何があるのか? 経験というブロックをどんどん積み上げるというか、横に広げていくイメージが今はあるんですよね」(取材・文:浅見祥子)

ヘアメイク:糟谷美紀 スタイリスト:菊池陽之介

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