戦下における人間の尊厳とは?不朽の戦争映画『戦場にかける橋』BS12で放送
第30回アカデミー賞で7冠に輝いた映画 『戦場にかける橋』 がBS12(トゥエルビ)にて5月14日よる7時より無料放送される(英語・日本語字幕)。
『戦場にかける橋』は、『旅情』『アラビアのロレンス』『ドクトル・ジバゴ』などの巨匠デヴィッド・リーン監督による、戦下における人間の尊厳を描いた戦争ドラマ。キャストにはウィリアム・ホールデン、アレック・ギネス、ジャック・ホーキンス、早川雪洲、ジェームズ・ドナルドなどが名を連ねる。英・米合作映画として製作され、1957年に公開されると世界的に大ヒット。日本でも両国とほぼ同時期に公開された。
1943年、第二次世界大戦下のビルマ。日本軍の斉藤大佐を長とする捕虜収容所に、ニコルソン隊長率いる英軍捕虜が送られてきた。鉄橋建設を急ぐ斉藤大佐は、米軍のシアーズとともに建設現場で働くことを彼らに命令。工事は着々と進み橋は完成に近づくが、丁度その頃、同じ英軍の手によって橋の爆破工作が進められていた。(編集部・大内啓輔)
見どころ(映画評論家・立花珠樹)
『戦場にかける橋』は、1957年に公開され、世界的に大ヒットした英・米合作映画だ。監督は、『旅情』『アラビアのロレンス』『ドクトル・ジバゴ』などの名匠、デヴィッド・リーン。日本でも両国とほぼ同時期に「お正月映画」として公開され、主題歌の「クワイ河マーチ」と併せて、人々の心をつかんだ。第2次世界大戦の戦勝国側が作った戦争映画なのに、敗戦国である日本でも共感を得られたのは、作品の根底に、戦争を否定する精神が流れているためだろう。
1943年の初め、タイの日本軍捕虜収容所に、ニコルソン大佐(アレック・ギネス)に率いられた英軍捕虜の一隊が移送されてくる。収容所の責任者、斉藤大佐(早川雪洲)は、彼ら全員を、収容所の近くを流れるクワイ河にかける鉄道橋の建設工事に従事させようとする。当時、日本軍は泰(タイ)と緬甸(めんでん)(ビルマ、現ミャンマー)を結ぶ泰緬(たいめん)鉄道を建設中。この鉄道橋が工事の大きなヤマだったのだ。
だが、ニコルソンは「将校を労役に使用するのはジュネーブ条約違反」と主張。斉藤の要求を拒絶する。一方、以前から捕虜になっていた米軍のシアーズ中佐(ウィリアム・ホールデン)は、真っ向から対立する道を避け、収容所脱走に成功する。しかし、鉄道橋が完成間近になってくると、現地に戻って橋を爆破する任務を命じられる。
米アカデミー賞で、作品賞、監督賞、主演男優賞(ギネス)など7部門を受賞した。見どころの一つは、英国出身のリーン監督が、日・英・米の国民性の違いを、それぞれの国の出身俳優を起用して、見事に表現していることだ。『スター・ウォーズ』のオビ=ワン・ケノービ役でも知られる名優ギネス、『慕情』などの二枚目俳優ホールデン、1910年代のハリウッドでスターになった国際的俳優早川。名優3人の演技が、映画を格調高いものにしている。
泰緬鉄道の工事には、英・オーストラリア・オランダなど約6万人の連合軍捕虜と、推定20数万人のアジア人労働者が、日本軍によって動員された。難工事を強行し、1943年10月に完成するまでに、捕虜1万人以上、労働者8万人前後が死亡したといわれている。映画を深く理解するために、このことだけは知っていてほしい。