「鎌倉殿の13人」義経、サイコパスから悲劇のヒーローへ 何が彼をそうさせたのか
15日に放送された小栗旬主演の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」(NHK総合ほか)第19回では、後白河法皇(西田敏行)の思惑により、源頼朝(大泉洋)と義経(菅田将暉)の溝が決定的になっていくさまが描かれ、タイトルのほか「白河法皇」「時政パパ」などの関連ワードがトレンド入り。「サイコパス」から一転して「悲劇のヒーロー」と化していく義経の行く末が注目を浴びている(※ネタバレあり。第19回の詳細に触れています)。
本作は、野心とは無縁だった伊豆の若武者・北条義時(小栗)が鎌倉幕府初代将軍・源頼朝にすべてを学び、武士の世を盤石にした二代執権に上り詰めていくさまを追う物語。前回「壇ノ浦で舞った男」では義経がおきて破りの戦法を交え、ついに平家を滅ぼすさまが描かれた。「九郎がやってくれた!」と涙ながらに非願成就を喜ぶ頼朝だったが、一躍ヒーローとなった義経が後白河法皇の信頼を得て力を強めたことから、次第に両者の関係は悪化。第19回「果たせぬ凱旋」では頼朝が義経に手を差し伸べようとするも、二人が手を取り合うことを許さない後白河法皇や、源行家(杉本哲太)らの思惑により、義経はさらに追い詰められていくことに。
とりわけ注目を浴びたのが、頼朝との仲が険悪と知り義経に挙兵を促した行家。頼朝にも毛嫌いされているトラブルメーカーの行家はネット上でも「疫病神」扱いされていたが、ナレーションでも「死神のような男」と紹介されていた。そして頼朝と義経の関係をかく乱させた後白河法皇。後白河法皇にとって都合がいいのは、頼朝と義経がつばぜり合いにあり、両者に力を持たせないこと。必死に兄・頼朝に会おうとする義経を、脈まで止める大芝居(「真似をしてはいけない」とナレーションで注意)を打って阻止した挙げ句、頼朝追討の宣旨を出した。しかし、義経が劣勢におかれ雲隠れしたと知るやいなや、今度は義経追討の宣旨を出し、あまりの掌返しに周囲も困惑し、九条兼実(田中直樹)も二度聞き返すほどだった。
後半では、兵が集まらず後白河法皇にも裏切られ、孤立無援となった義経の悲壮な場面が展開。藁をもつかむ思いで彼が向かったのは義時&時政(坂東彌十郎)親子のもとだった。捕まる覚悟で現れた義経は、やつれた姿で「兄上のこと何とかならぬか」と二人に語りだした。しかし、すでに義経追討の宣旨が出されていることを知ると「平家を滅ぼしたのはついこの間ではないか」と愕然とした表情に。「わたしの、何がいけなかった?」とすがる義経に、義時は悲しそうに「人をお信じになりすぎるのです」と一言。また「戦のない世でわたしのような者がどう生きていけばよいのだ……」と沈む義経に放った、時政の含蓄ある言葉も多くの心をつかんでいた。
これまで己の感情をコントロールできない性分や傲慢さ、目的のためなら手段を問わない残虐な一面などが注目を浴び「サイコパス」とさえ呼ばれていた義経だが、今や翼をもがれた鳥のよう。時政は、義経を「まるで平家を滅ぼすためだけに生まれてきたようなお方」と評していたが、日ごとに輝きを失っていく義経に同情が集まっている。
次回「帰ってきた義経」予告では涙を流す義経、彼の子を身籠った静御前(石橋静河)が舞う姿などが収められている。(編集部・石井百合子)