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ハズレなし!ソン・ガンホに圧倒される映画7選

ソン・ガンホ(2019年12月に撮影)
ソン・ガンホ(2019年12月に撮影)

 韓国の国民的俳優ソン・ガンホ。今年5月に開催された第75回カンヌ国際映画祭では、是枝裕和監督による初の韓国映画『ベイビー・ブローカー』に主演して、韓国人俳優として初めて男優賞の栄誉に輝いた。文字通り、世界のソン・ガンホとなった彼の今日までの道のりを7つの作品で振り返る。(前田かおり)

ソン・ガンホの演技が光る新作『ベイビー・ブローカー』【写真】

『JSA』(2000)パク・チャヌク監督

 朝鮮半島を南北に分断する38度線上にある共同警備区域(JSA)で起こった射殺事件。だが、その裏に思いも寄らない真実が浮かび上がる。ソン・ガンホが演じるのは北朝鮮の士官。イ・ビョンホンふんする若き韓国軍兵士から、「ヒョン(=兄貴)と呼んでいいか」と親しみを持たれる男を説得力たっぷりに演じて、韓国の権威ある映画賞、大鐘賞で一つ目の主演男優賞を受賞している。前年公開され大ヒットを記録した『シュリ』にも出演していた彼は、認知度も急上昇した。

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『復讐者に憐れみを』(2002)パク・チャヌク監督

 姉のための腎臓移植費用をだまし取られたろうあの青年と、娘を誘拐された父親との壮絶な復讐劇を描くサスペンス。『オールド・ボーイ』『親切なクムジャさん』と続くパク・チャヌク監督復讐三部作の第一弾。『JSA』に続いて共演したシン・ハギュンが青年を演じ、その彼に犯罪をそそのかす恋人(ペ・ドゥナ)を相手に、ソン・ガンホは愛する娘を奪われて復讐の鬼と化す父親を演じる。狂気のリミッターを振り切り、復讐を淡々とこなす時の表情が恐ろしく、そしてやるせない。

『殺人の追憶』(2003)ポン・ジュノ監督

 実際の未解決連続殺人事件を題材にしたクライムサスペンス。農村で若い女性の惨殺事件が続き、性格も捜査方法も異なる2人の刑事が心理的に追い詰められていく姿をリアルに描く。ポン・ジュノ監督による緻密に構成された脚本とリアルな演出が絶賛され、第40回大鐘賞で最優秀作品賞、監督賞を受賞、体重を10kg増やして、直感で動く田舎の粗野な刑事役に取り組んだソン・ガンホも主演男優賞を獲得。本作から『パラサイト 半地下の家族』へと続くポン・ジュノ監督との盟友関係が始まった。

『観相師-かんそうし-』(2013)ハン・ジェリム監督

 15世紀半ば、朝鮮王朝で実際に起きた凄惨なクーデター事件(癸酉靖難)をもとに描く歴史ドラマ。顔を見ただけで、その人の性格や運命、寿命まで見抜く観相師が、宮廷に取り立てられてことから権力闘争に巻き込まれていく。前半のコメディードラマから次第にシリアスへと転じ、胸を締め付けるような人間ドラマへとけん引するソン・ガンホが、人の相は見抜けても、時代の先を見通せなかった男の哀れさを重厚な演技で魅せる。“狼の相”を持ち、謀反を企てる首陽大君を「イカゲーム」で主演を務めたイ・ジョンジェが怪演した。

『弁護人』(2013)ヤン・ウソク監督

 1980年初頭の釜山を舞台に、不当逮捕された恩人の息子の裁判を引き受けたことから、人権派弁護士へと転じていく男の奮闘を描く。弁護士出身だった韓国の故・廬武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領をモデルに、実際に担当した冤罪事件を題材にしたヒューマンドラマ。軍事政権下の国家の闇に立ち向かううちに、絶対に諦めない不屈の男と化していく主人公を、ソン・ガンホは説得力十分に演じる。冤罪に巻き込まれる青年役は、日本でもリメイクされた大ヒットドラマ「ミセン -未生-」で知られるイム・シワンだ。

『タクシー運転手 ~約束は海を越えて~』(2017)チャン・フン監督

 1980年5月に韓国で起きた民主化運動、光州事件の惨劇を世界に伝えようとしたドイツ人記者と、彼を乗せたタクシー運転手の実話をもとに描いたヒューマンストーリー。ソン・ガンホは妻に先立たれて男手ひとつで幼い娘を育てるのに懸命な主人公マンソプを演じた。政治など無関心で、光州に向かったのも高額な報酬に釣られただけだったが、衝撃的な事件の現場を目撃して記者にシンパシーを寄せていく。しがない中年オジサンの奮闘劇をやらせたら、右に出る者のいないソン・ガンホが真骨頂を発揮している。

『パラサイト 半地下の家族』(2019)ポン・ジュノ監督

 半地下の貧乏アパートに住む一家が、豪邸に暮らすセレブ一家に寄生しようと企んだことから始まる痛烈なブラックコメディー。ポン・ジュノ監督とは4度目のタッグになるソン・ガンホが演じるのは一家の大黒柱の父親ギテク。失業中のダメ親父だが、自分と家族が生き延びるためなら、あらゆる知恵を絞り出す。ヘラヘラと笑いながら、どこか得体の知れない人物を怪演。本作は、第72回カンヌ国際映画祭のパルムドール賞と第92回アカデミー賞では作品賞を含め4部門受賞という、世界の映画史に残る快挙を達成した。

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