山本千尋「キングダム」で“一人二役” 不思議な縁は「わたしの誇り」
原泰久の人気漫画を山崎賢人(※崎はたつさきが正式表記)主演で実写化した2019年のヒット作の続編『キングダム2 遥かなる大地へ』(公開中)。同作で新キャラクターの羌象(キョウショウ)を演じた山本千尋が、自身にとって縁の深い作品に参加できた喜びを語った。
本作は、累計発行部数9,000万部(2022年6月現在)を突破する原作を映画化し、2019年に興行収入57.3億円を突破するヒットを記録したアクション『キングダム』の続編。春秋戦国時代の中国で、秦の玉座をめぐる争いから半年後。大将軍を目指す信(山崎)が初陣となる隣国・魏との戦い「蛇甘(だかん)平原の戦い」に身を投じる。その信が戦場で同じ小隊の仲間として出会うのが、清野菜名ふんする謎の凄腕剣士・羌カイ(※カイはやまいだれに鬼)で、山本が演じた羌象は、羌カイが姉のように慕う存在。哀しみの一族とも呼ばれる伝説的な暗殺者の一族・蚩尤(しゆう)で羌カイと姉妹のように育ち、限られた登場シーンながら、羌カイが素性を隠して戦場に出た理由に深く関わる重要キャラクターの一人だ。
前作に大感動し、映画館で6回ほど鑑賞したという山本は、元々『キングダム』と縁が深かった。というのも、10代の頃に中国武術の世界大会で優勝経験があり、新世代のアクション女優として注目を浴びる山本は、2016年に原作漫画の連載10周年を記念して制作された実写特別動画で、羌カイ役に抜擢されていたからだ。
「当時から『キングダム』は存じていましたし、初めての原作がある作品への出演でした。3歳から習ってきた中国武術が、役としてこれほど活かせた経験も初めてでしたから、すごく嬉しくて。今後もこんな役をやらせていただきたいと思いましたし、わたしにとって新たな一歩となるようなお仕事だったんです」
2016年に羌カイを演じた際は、留学中だったが予定より早めに帰国し、3日間の撮影のために約2か月の準備期間をとり、約6キロの減量も行った。撮影では羌カイの衣装を着て華麗に舞うような剣技を見せたが、その振り付けは山本自身に任され、原作を読んで感じた自分なりの羌カイを表現して、原作ファンからも好評を得た。そんな思い入れが強い作品で、羌カイが「象姉(しょうねえ)」と慕う羌象役にキャスティングされたことは、「羌カイを演じたことがあるからこそ、羌象役は説得力のあるわたしにと言っていただけたことが、本当に嬉しくて光栄でした。吉沢亮さんも政と漂の二役をやっていらっしゃいますが、また違った形ながら『キングダム』という世界観の中で、姉妹キャラクターを両方演じられたのはわたしの誇りです」と微笑みながら胸を張る。
山本の演じる羌象は、羌カイの過去にまつわるシーンで登場するが、山本自身が羌カイへの思い入れも強いだけに、それを姉としてどう表現すべきか、撮影前に悩むこともあった。しかし、羌カイを演じる清野に会ったことで、そんな悩みは吹き飛んだという。
「撮影前に清野さんのアクション稽古を見学させていただいたところ、清野さんの方が年上ですが、普段の立ち振舞いや、内面から出る無邪気さ、健気さなどが感じられて、大好きで守りたいという思いが自然と湧き上がってきて。役づくりしなくても自然と気持ちが入りましたし、いくらでも表現できると。普段は役に向き合う時に悩むことも多いのですが、こんな経験は初めてで、清野さんが羌カイで本当に良かったですし、ちょっと母性を感じさせる羌象の役どころを引き出していただけたと思います」
自身の撮影期間は数日だったため、残念ながら撮影現場で清野とじっくり話す機会はなかったようだが、「わたしが参加したのは後半の時期だったのですが、清野さんが『やっぱり象姉の笑顔はいいなあ』『早くこの笑顔を見られていたら』と言ってくださって救われた気がしました」と印象的な言葉をかけてもらったそう。山本と清野は年齢も近く、得意なアクションをきっかけに女優としての活躍の場を広げてきており共通点が多いようにも思うが、山本自身、清野に特別な思いを感じたようだ。
「言葉にするのは難しいのですが、初めてお会いした方なのに、ずっと前から知り合いだったような、温かい不思議な感覚がありました。清野さんにはやっぱりすごいなと感じる部分がたくさんあって、学ばせてもらうことばかりでしたが、同じような悩みを抱えているのかもしれないとも思えましたし、共に高め合えるような関係になれたらと思っています」
実は清野も現場での山本について「初めて会ったような気がしないほど心地良い感じがした」「見えない何かで繋がっている感覚があった」とインタビューで話していた。共に多くの言葉を交わさずとも通じ合うものがあったようで、世界に通用する身体能力を持つ山本と清野の再共演を期待せずにはいられない。(取材・文:天本伸一郎)