ADVERTISEMENT

『ジュラシック・ワールド』を支えた日本好きの古生物学者に聞く、恐竜研究のリアル【インタビュー】

『ジュラシック・パーク』から29年、古生物学者にも変化が! -画像は最新作『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』より
『ジュラシック・パーク』から29年、古生物学者にも変化が! -画像は最新作『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』より - (c) 2022 Universal Studios and Amblin Entertainment. All Rights Reserved.

 映画『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』(7月29日全国公開)にコンサルタントとして参加した古生物学者のスティーブ・ブルサットがリモートインタビューに応じ、本作に携わることになった経緯や役割、新発見が続く恐竜研究の現状について語った。

【画像】29年経っても変わらない!オリジナルキャストの現在

 恐竜の解剖学と進化を専門とするブルサット教授は、シカゴ大学で理学士号、ブリストル大学で修士号を取得。現在はスコットランド・エディンバラ大学に拠点を置き、 古生物学者や進化生物学者として活動している。研究結果をもとに恐竜をCGで再現した「よみがえる恐竜図鑑」(出版社:SBクリエイティブ)の著者でもあり、最新の恐竜研究を網羅した書籍「恐竜の世界史: 負け犬が覇者となり、絶滅するまで」(出版社:みすず書房)も記憶に新しい。

ADVERTISEMENT

 『ジュラシック・ワールド』に参加するきっかけとなったのは、自身が執筆した「恐竜の世界史」だったというブルサット教授。最新作のメガホンを取ったコリン・トレヴォロウ監督が彼の本を手に取り、直接アプローチをかけたそうだ。

 「2018年の夏ごろ、私の本を読んだ監督からメールが送られてきました。最初は友人か生徒が私を騙そうとしているのではと疑いましたが、『科学的に正確な恐竜映画を作りたい。あなたと会って話がしたい』という内容を見て、そうではないなと。その後、監督はエディンバラまで来てくださり、数時間かけて恐竜について語り合いました。彼の知識量には驚きましたね。『ジュラシック・ワールド』の次回作についても明確なビジョンを持っていて、羽毛が生えた恐竜を登場させたいと話し、『コンサルタントとして映画に参加してほしい』とオファーしてくれました。私はシリーズのファンでもあるので、すごく光栄でしたね」

(c) 2021 Universal Studios and Storyteller Distribution LCC. All Rights Reserved.

 最新作におけるブルサット教授のミッションは、製作陣が抱く疑問を解消し、恐竜に関するあらゆる情報を提供すること。「監督やスタッフが投げた、恐竜に関する全ての質問に答えました。自分でデザインを担当したり、シナリオに口出しすることは全くしていません。あくまで古生物学者として、『この恐竜の特性は?』『皮膚の質感はこれで正しいか?』などの質問メールや電話に回答しながら、恐竜に関する正確な情報を製作陣と共有することに努めました」

ADVERTISEMENT

 本作で描かれるのは、恐竜たちが日常生活の至るところに紛れ込んだ社会。“人間と恐竜は共生できるのか”というテーマは、古生物学者にとっても興味深かったという。「輸送中に脱走した恐竜が都市部に出現することもありましたが、基本的にシリーズ6作品のほとんどは、パークがある島で物語が展開されました。本作では、人間がパーク外で恐竜たちと接触することになります。『現在も恐竜たちがこの世界に生息していたら?』『もしT-レックスが私たちの身近に潜んでいたら?』など私たちも考えにくいことを映像化しているので、非常に優れた作品だと思っています」

(c) 2021 Universal Studios. All Rights Reserved

 そんなブルサット教授は、過去に二度日本を訪れたことがあるといい「妻も日本文化や日本食が大好きなんです」と告白。近年日本では新種の恐竜が次々と発見されており、ブルサット教授も福井県にある化石発掘現場や県立の恐竜博物館を訪れていた。「恐竜たちにとって、日本は魅力的な国なんです。日々新たな発見がありますし、白亜紀に中国大陸から移動してきた恐竜たちの化石も大量に発掘されます。恐竜研究において、日本は最も重要な国の一つなんです」

ADVERTISEMENT

 また、『ジュラシック・パーク』1作目(1993)が公開されてから今日までの約30年間で、古生物学者の研究方法も大きく変わったと証言する。「(1作目の主人公)アラン・グラント博士は、とにかく発掘現場に繰り出すことが大好きな、当時の典型的な古生物学者として描かれていました。時代が進み、古生物学者にも多様性が生まれ、グラント博士のようにテントを張って発掘現場にとどまる人もいますが、ほとんどは現場に出ることはありません。コンピュータ技術を駆使して化石をスキャンする方や、アナリストのように数字を分析する方もいます。1993年と比較すると、恐竜研究の分野は格段に広がっていますし、映画を観て古生物学者の道を目指す若者たちも増えています」

 ブルサット教授によると、新種の恐竜は現在、世界中で1週間に1種類のペースで見つかっているという。「1年を通して50種類もの恐竜が見つかっています。しかも、全て新種です。そのうち数種類は日本で発見されたものです」と説明した教授。「古生物学者にとって、今が一番楽しい時期。若い世代の方も恐竜について学ぶ機会が増えています。しかし、まだまだ謎は多い。私たちの研究はまだ始まったばかりなんです」(取材・文:編集部・倉本拓弥)

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • ツイート
  • シェア
ADVERTISEMENT