Ado、“歌姫”としての挑戦 『ONE PIECE FILM RED』で目指したウタとの調和
映画『ONE PIECE FILM RED』(全国公開中)で歌姫・ウタの歌唱キャストに抜てきされたアーティストのAdoがリモートインタビューに応じ、キャラクターとして歌い上げた楽曲への思いや『ONE PIECE』の魅力を語った。
本作のカギを握るウタは、別次元と評されるほどの歌声を持つ歌姫で、赤髪海賊団を率いる四皇・シャンクスの“娘”であることが判明している。音楽の島・エレジアで初めて人前でのライブを開催するウタは、会場でルフィら麦わらの一味と出会うことになる。
ボイスキャストの名塚佳織とダブルキャストでウタ役を担当したAdo。「未だに夢のようで不思議な気持ちです。『ONE PIECE』に携わるとは思ってもいませんでしたし、事務所の方からオファーが来たと言われた時は、『洋服(ワンピース)のコラボですか?』と返答したくらい。海賊の『ONE PIECE』であることが信じがたいことだったので、ウタとして歌わせていただけたことを大変嬉しく思っております」と大役を任された心境を打ち明ける。
Adoはこれまで、主にボカロPが書き下ろした楽曲を歌ってきた。本作では、中田ヤスタカ、Mrs. GREEN APPLE、Vaundy、FAKE TYPE.、澤野弘之、折坂悠太、秦基博といったアーティスト7組が楽曲を提供。ビッグネームとのタッグは、アーティスト活動においても刺激になったようだ。「新たにいろんな自分の声を引き出せたなと思いますし、それ以上に楽曲が『ONE PIECE』にマッチしていて、歌詞の言葉一つ一つがウタをわかりやすく描いているんです。こんなに素晴らしい楽曲を私の声で歌い、それがウタというキャラクターになるという事実が信じられなくて、レコーディングは大変貴重な時間でした」
主題歌や劇中歌含む全7曲は、Adoではなくウタとして歌唱している。「Adoの声なのですが、ウタという役があってこその楽曲。『この歌い方はAdoじゃない?』『ウタはこうやって歌わないんじゃないか?』みたいなところは意識して直しました。自分とウタの調和は難しかったですが、自分にとってすごくいい経験になりました」といつものAdoらしさを“封印”しながらレコーディングを進めていったという。
提供曲の中には、バラードやラップ調の楽曲も含まれている。「純粋にラップは難しかったですね。普段はパワフルでハードな楽曲が多いので、バラードで優しさを歌うこともすごく大変でした。『本当に優しいのかな? ちょっと強くない?』みたいなところも気になったりして。ただ声色を変えても弱すぎるとか、強さが足りない部分もあったりしたので、そのバランス調整が難しかったです。今まで趣味でもラップやバラードに触れてこなかったので、自分の成長にもつながったと思っています」と新境地開拓に手応えを感じていた。
自身が担当したウタについて「ただ輝いている歌姫ではなく、人間のいろんな部分を描いている。輝いた美しさだけではない、いろんな感情を歌に乗せている力強い歌姫だと感じました」と語るAdo。自分とウタは真逆な存在だが、「私は怒りや悲しみなどの感情を大事にするところがあるのですが、ウタにも人間らしいが負の感情も備わっている。そういった強い感情は、つい重ねてしまうところがありました」と共通する部分もあったそう。
『ONE PIECE』との出会いは10代後半。Adoは「自分が生まれる前から連載されている作品で、いろんな人に愛されている世界的な作品。『ONE PIECE』=世界だと思っています」と表現すると、「『ONE PIECE』の魅力はキャラクターの個性もそうですし、各キャラクターの生い立ちや過去を見ていくと、それぞれの苦悩や人生が丁寧に描かれている。その過去があるから、現在の姿や言動を知ると胸が熱くなるものがありますよね。敵であっても、その人なりの信念を貫いていると思うと、カッコよく見えてくる。情けないと思うキャラクターが一人もいないんです。私も彼らのようになりたいと思いました」と熱く魅力を語っていた。(取材・文:編集部・倉本拓弥)