高橋洋監督『リング』目標プロジェクトも予想外の方向に? 主演女優は脚本に「逸脱が過ぎる」
9日、映画『リング』(1998)などの脚本家・高橋洋の監督最新作『ザ・ミソジニー』の初日舞台あいさつが新宿シネマカリテで行われ、高橋監督のほかに、女優の中原翔子、河野知美、横井翔二郎が登壇。本作の製作の経緯を語った。
ある山荘で、謎めいた母親殺しの事件を題材にした舞台を演じるうちに、現実と物語の境界が次第に曖昧となっていく2人の女優を描いた本作。舞台あいさつのチケットは完売となり、キャスト陣は客席を見回し笑顔。本作のプロデューサーも務めた河野は、高橋監督に満席となったことをメールで伝えたといい、高橋監督から「やったー!」と子供のように無邪気な返信が返って来たことを紹介。その高橋監督は「完売と聞いてから緊張してしまって……」と照れ臭そうな笑顔を見せる。
河野は本作の企画を自ら持ち込んだという。「『リング』を超える商業映画的な映画を作りましょう」と高橋監督の代表作の一つである『リング』を目標にプロジェクトを進めたと明かした河野だが、高橋監督が作った脚本はかなりそれとは逸脱したような内容のものだったといい、河高橋監督が横井に脚本を紹介する際に、「わけわからない台本でごめんなさい」と謝罪していたエピソードなどを笑顔で回顧した。
そんな高橋監督の世界観について、「高橋監督とは役者として20年くらいの付き合いがあるんですけど」と切り出した中原も「毎回、私、口癖のように『意味わかんない』って言うんです。今回は特に『意味がわからない』って。逸脱が過ぎる本が来たなって動揺しながらやっていました」と感想を述べる。
高橋監督は「キャメラの前で虚構を演じている人たちをドキュメンタリーで撮っているんだって、いつもそういう意識でいるんです。虚構なのでリアルでは無い。きっと1人の人格で終焉するような綺麗なものでは無い。それをドキュメンタリーで伝えられたらいいなって。だから今回も相当、関節を外したような作品になっていると思います」と自身の世界観を説明する。
一方の横井は、高橋監督のそういった姿勢にむしろ共感の気持ちを覚えたといい、「昨今、世の中にいっぱいある説明しすぎるエンターテインメントをやりすぎてもねって思いがあったんです。観た人に驚きや考える時間がある映画が最高だって。映画は観て、(観た後の感情を)持って帰れてなんぼ。後で『あの映画ってこうだったんだ』って言えるような映画っていいと思います」と理解を示していた。(取材・文:名鹿祥史)