飯豊まりえ、井之脇海、佐津川愛美…「ちむどんどん」脇で光ったキャラたちの活躍を振り返り
4月11日より放送されてきた連続テレビ小説「ちむどんどん」(月~土、NHK総合・午前8時~ほかにて放送、土曜は1週間の振り返り)も残すところ後わずか。ヒロインの暢子(黒島結菜)をはじめとするメインキャストたちに大きな影響を与えてきたキャラクターたちの魅力を振り返ってみたい。
朝ドラの第106作にあたる「ちむどんどん」は、ふるさと沖縄の料理に夢をかけた暢子(黒島)と、支えあう家族の歩みを描く50年の物語。現在は第24週「ゆし豆腐のセレナーデ」が終わり、放送は来週の最終週を残すだけとなった。暢子(黒島)は和彦(宮沢氷魚)と健彦(三田一颯)と家族三人で、沖縄やんばるへの移住を決意したのだった。暢子の長い“冒険”も終わりを迎えようとしているが、その道中には記憶に残る数々の出会いがあった。
その筆頭は、和彦が勤める新聞社の同僚にして恋人として登場した大野愛(飯豊まりえ)。当時はそれほど多くはなかった女性の新聞記者として高い社会意識を持ち、ファッションの記事を担当したいという熱い思いを持っていた。婚約にまで至ったものの、和彦は暢子に惹かれて煮え切らない態度を見せ、その関係はギクシャクしたものに。結果、記者としてパリで活躍する夢を胸に、和彦と別れて渡仏した。
裕福な家に生まれた愛は聡明な女性で、誰に対しても対等に接することのできる広い心の持ち主。新しい価値観を追い求めつつ、仕事や結婚に関して旧来的な考えとも向き合う大人な女性として魅力を発揮し、多くの視聴者の心を掴んだ。ファッショナブルな出で立ちも好評で、愛をヒロインにしたストーリーも観てみたいという声も多く上がっていた。
そして、愛と和彦の上司にあたる田良島甚内(山中崇)も夢を追いかける若者たちの力強い味方となった。愛との関係に優柔不断な態度を示し続ける和彦に喝を入れ、フランス行きを考える愛の背中を押すなど、視聴者の共感を集める存在に。独立して自身の店を持った暢子のことも気に掛け、その姿は頼もしいの一言。一方で、ユーモアを交えた皮肉屋な顔を見せることもしばしばで、いわゆる“理想の上司”とも一味違う独特の存在感で視聴者を魅了した。
暢子が開業するにあたって欠かせない存在となったのが、フォンターナで同僚だった矢作知洋(井之脇海)。同僚時代は暢子に意地悪にあたる一面もあり、その印象はあまりよくないものだった。その後、ほかの同僚とともに退職し、行方がわからずにいたなか、食い逃げをして捕まったところを暢子と再会。開店準備を進める暢子は、矢作を料理人として雇うことに決めると、冷たい口調ながらも冷静な意見を口にして問題点を指摘し、身重の体の暢子を気遣う言葉をかけるなど、しだいに気持ちを開いて変化していく様子を見せた。繊細な表情で心情を表現する演技は熱い視線を集めた。
同じく暢子が店を軌道に乗せるのに一役買ったのが、のちに賢秀(竜星涼)と結婚することになる清恵(佐津川愛美)だ。驚くべきルーズさで問題を引き起こし続ける賢秀にズバズバものを言い、賢秀との遠慮のない掛け合いはどこか心和むところもあり、養豚のことにも勤勉な一面を見せていたが、隠していた過去のことで自分自身を責めてしまう。その後、賢秀の思いに心を動かされ、賢秀とともに猪野養豚場を支えていくことを決意する。リリーとなって客商売をする姿と普段の姿をギャップたっぷりで、演じ分けも見事だった。
また、長きにわたって姿を見せるなかで、その変化によって魅力を伝えたのは石川博夫(山田裕貴)だろう。良子(川口春奈)の学生時代からの友人として登場し、のちに良子と結婚することになった博夫。結婚後は実家からのプレッシャーに弱気な態度を示していたが、その問題も自らの成長によって乗り越えた。今では年齢を重ねて、自然体ながらも貫禄も感じさせる姿に。開業資金を失った暢子に優しい言葉をかけて助け舟を出す場面などは、本作のハイライトの一つといってよいだろう。
暢子たちの高校の音楽教師・下地響子(片桐はいり)も忘れ難い。歌子の歌の才能を見抜いて、強引さもありながらも熱心に指導しようとした。どこまでも追いかけてくる強烈なインパクトで強い印象を残した。その後、人前で歌えるようになった歌子は、智に向けて歌で思いを伝えることにもなった。そのときに下地の顔を思い出した視聴者も少なくないはず。
最終週を残すのみとなった「ちむどんどん」。ほかにもフォンターナではオーナーの房子(原田美枝子)やシェフの二ツ橋(高嶋政伸)、鶴見の人々では三郎(片岡鶴太郎)と多江(長野里美)の夫妻、そして和彦の母である重子(鈴木保奈美)など、数々の人々がヒロインを励まし、支えてきた。これまで活躍してきたキャストたちが再び集結することもあるのか、最後まで見届けたい。(編集部・大内啓輔)