目黒蓮の胸に刺さる演技!「silent」の好演話題に
今期秋ドラマでとりわけ注目を浴びているのが、川口春奈主演のドラマ「silent」(フジテレビ系・木曜よる10時~放送)だ。10月6日に放送された初回の見逃し配信は、1週間で531万回再生を記録し、TVerにて配信された民放ドラマとして、歴代最高を塗り替えた(10月14日時点)。オリジナル脚本によるラブストーリーとしても期待が高まる本作では、川口演じる青羽紬の“好きだった人”佐倉想を演じる目黒蓮(Snow Man)の好演も大きな話題となっている。
本作で目黒が演じるのは、高校卒業のころ、病気によって次第に聴力を失った青年・想。“好きな人”である紬を悲しませたくないという思いから、病気のことは明かさずに別れを切り出し、以降8年のあいだ音信不通となっていた。偶然、紬と再会し、一度は拒絶しようとするが、音声アプリや、紬が習い始めた手話を通し、徐々にだが再び笑い合える関係になっていく。
映像作品への出演はまだ多くはない目黒。しかし、「教場II」(2021)では新しい家族を守る決意をする警察学校の生徒、「消えた初恋」(2021)ではピュアな誠実さが魅力の高校生を好演。これら二作で見せた不器用で深い優しさは、「silent」で演じる想とも通ずるものがある。想の場合、紬への想いが深いばかりに自己犠牲に決着し、結果として紬を悲しませた。「好きな人(紬)がいる」から別れてほしいと、嘘のつけない性格で、現在の紬に大切な人がいると知ったときに見せた表情からは、安心とうれしさ、ほんの少しの寂しさが漂う。
相手に背を向けられたときの孤独感や、湊斗(鈴鹿央士)の決意に対してすぐさま返すことのできないもどかしさ、紬の言動に覚える懐かしさや愛おしさ。目黒は、わずかな視線や眉の動きで、想像の余地のある芝居を見せている。泣く、笑うといった強い感情表現は、自分を後回しにしがちな想が、時折思いきり見せるからこそ胸に刺さる。
言葉と言葉の会話でも、お互いに同じ気持ちであっても、ときに行き違うのが人間同士。本作では、それを伝える目的もあってか、あえて誤解を招くような言語表現を用いているように感じられることも。それによって、さまざまな立場に置かれた登場人物の心情を考えるきっかけとなり、こうした余白や奥行きがあればあるほど、作品は深みを増す。実際に、多くの視聴者が、想の表情一つひとつに意味を探してその胸のうちを想像。SNSには、多数の見解が投稿されている。
出演作を重ねるたびに話題となる目黒だが、12月2日公開の映画『月の満ち欠け』が控えている。2017年に直木賞を受賞したベストセラー小説を実写化した本作で、目黒は初の単独での映画出演を果たす。生まれ変わりを題材に描かれる本作で、物語の鍵を握る謎めいた女性・瑠璃(有村架純)との許されぬ恋に落ちる大学生・三角を演じる目黒。主演の大泉洋ほか、柴咲コウや田中圭や実力派キャストが勢ぞろいの注目作だが、いまや目黒の出演も、期待できる要因の一つといって過言ではないだろう。(文:新亜希子)