市原隼人、「鎌倉殿の13人」八田知家役は「人生で一番悩んだ」
三谷幸喜脚本の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」(NHK総合ほか)で鎌倉殿を支える13人の宿老の一人である八田知家役として人気を博した市原隼人が、「人生で一番悩みました。難しかったです。この役は本当に難しかったです」と同役に懸けた思いを語った(※一部ネタバレあり。第42回の内容に触れています)。
本作は、鎌倉時代を舞台に、野心とは無縁だった伊豆の若武者・北条義時(小栗旬)が武士の世を盤石にした二代執権に上り詰めていく物語。知家は、情に流されず常に冷静に状況を見極めて勝ち馬に乗るしたたかさをもつクールな男。武芸に秀でており、源頼家(金子大地)を呪詛して流罪になった阿野全成(新納慎也)を粛清し、実朝(柿澤勇人)が頼家の跡を継ぎ三代目・鎌倉殿となると、武家の棟梁にふさわしい武芸を授けていた。ワイルドな風貌で胸元を大きくはだけていることが多く、口数は少ないが言うときには言う男気のある性格から「セクシー八田殿」と視聴者の間で人気を博していた。
6日放送の第42回「夢のゆくえ」では実朝の宋船建造のエピソードが描かれ、知家が造船の責任者を務めた。その際、知家は「この仕事を最後に隠居しようと思っている」と三善康信(小林隆)に引退を打ち明けていた。
演じる市原は知家の決断について「自分ではない誰かの思想で未来を決めるのではなく、己の道を自分で決めていくというのが八田らしい」と話し、「どの時代も、時代につくられてしまう人間が多いと思うんです。その中で、時代につくられるのか、時代をつくるのかと言うと、知家は『自ら時代をつくってやろう』と。存在意義を、精いっぱい旗を振りながら『俺はここで生きているんだ』というのを、必死に汗をかいて。それが決して押しつけではなく、誰かに認めてほしいわけでもないと思うんです。自分を納得させるために自分で自分の生き方を選ぶ、自分の主君は自分である、という思いでずっと演じていました」と誰にも流されない生きざまに触れる。
しかし船は完成するも海に浮かべることはかなわず、市原は「ロマン」をキーワードに、知家の胸中に以下のように思いを巡らせる。「ロマンなんですよ。やっぱりなんでもロマンです。こういう時代劇であっても当時のことを知っている人間はいないんです。『日本人はこうであってほしい』という、ある意味ロマンが含まれていまして、それがまたNHK大河ドラマなりのロマンを描かせていただいているわけで、その中の八田知家というのは、それもまた八田知家が思うロマンですので。『こうなりたい』『こうしたい』という思いももちろん大事なんですけど、そこに向かっていく思いが一番、自分を強くしてくれるんです。形ではなく目には見えないプロセスを一番大切にする知家としては、失敗だとか、できなかったということは思ってはいないのではないでしょうか。まだまだこれからやり続ければ、途中で終わったということはないですし、諦めなければいつかは成功すると思いますので、そんな思いでやっていました」
ちなみに、知家が三善に引退を打ち明けた際、「まだお若いのに……」という三善に「実はあなたと(年齢が)そう変わらない」と“カミングアウト”する場面があり、視聴者をざわつかせていた。また、船を海に運ぼうとする場面では知家がムキムキの上半身を披露し、SNS上では「最終形態」「サービスショット」と沸いていた。
知家と共に過ごした時間について「人生で一番悩みました。難しかったです。この役は本当に難しかったです」と振り返る市原。「ただ、この八田知家という役を通じて、今回この『鎌倉殿の13人』、こんなに愛をもらえるとは思っていなかったです。本当に死ぬほどうれしいです。何にも変えられない財産をいただきましたので、本当にすてきな、貴重な経験をさせていただいて心から感謝しています」と作品に対する反響、かけがえのない体験になったことに感謝を述べている。(編集部・石井百合子)