「鎌倉殿の13人」山本耕史が見た三谷大河の魅力 視聴者の期待をいい意味で裏切る新しさ
大河ドラマ「鎌倉殿の13人」(NHK総合ほか)で小栗旬演じる主人公・北条義時の幼なじみであり盟友だった三浦義村は、ある意味で魑魅魍魎がひしめく鎌倉をしたたかに生き抜いたキーパーソンとなる御家人だったと言えるだろう。10月16日放送の「穏やかな一日」以来、オープニングタイトルのキャストのクレジットで留めを飾るまでになった。そんな義村を演じた山本耕史が、三谷幸喜脚本の大河ドラマに3度出演して改めて感じた魅力を語った。
3度目の三谷大河!「新選組!」「真田丸」との違いは?
本作は、鎌倉時代を舞台に、野心とは無縁だった伊豆の若武者・北条義時(小栗)が鎌倉幕府初代将軍・源頼朝(大泉洋)にすべてを学び、武士の世を盤石にした二代執権に上り詰めていく物語。山本にとって、三谷大河への出演は「新選組!」(2004)の土方歳三役、「真田丸」(2016)の石田三成役に続き3度目。山本は「物語の最初から最後まで出演したのは『新選組!』以来で、どちらも主人公の相棒というか盟友という部分で共通していたように思います。土方は近藤勇(香取慎吾)を押し上げるために自分が2番手に回っていた人物ですが、義村は義時のそばにいるものの、常に頭の中には三浦の存続があったので、立ち位置は似ているのですが、真逆の描かれ方だと思いました」と「鎌倉殿の13人」で担った役割を分析する。
さらに「真田丸」で演じた石田三成との違いについて「三成は物語のなかで、人生を全うしたんです。でも義村は生きていた。大河ドラマっていろいろな人がやってきて、そして去っていきますが、何が魅力かと言えば、ガッと花を咲かせてパッと散っていく気持ち良さだと思うんです」と語ると「三成にはそうした爽快感がありました。土方も本編では死ななかったのですが、続編を書いてもらって人生を全うできた。でも義村に限っては、まだ生きているので終わった感はあまりないんですよね。僕のなかではまだ義村は生き続けているんです」と胸の内を明かす。
緩急自在な三谷脚本に脱帽
三谷大河には欠かせない存在の山本。3度目の出演で山本が改めて感じたのが、スピード感と視点の斬新さだという。「僕が言うのはおこがましいかもしれませんが、確実に腕に磨きがかかっていると思います」と語り出すと「これまでも、例えば『真田丸』で関ヶ原の戦いを描かないみたいな部分はありましたが、大胆に事象を省略してテンポを上げる一方で、その出来事の舞台裏では、こんなことが起きていたという部分を描いたりする。いい意味で視聴者の期待を裏切っていく新しさがあります」
その一方で、「シビアな出来事でも、三谷さんらしいちょっとおとぼけな部分を入れることで、喜怒哀楽がより強調されるというのは素晴らしかったと思います」と感想を述べていた。
山本の言葉通り、随所に緩急が見られたストーリー。演じている方は難しさを感じないのかという疑問が湧くが「そこが面白いんですよね」と笑うと、「普通シリアスなシーンだったら、その緊張感で最後まで行くと思うのですが、三谷さんは一回外すことでずっと緊張させないんです」と特徴を話す。
その一例として山本が挙げたのが、義時の最初の妻・八重(新垣結衣)が川で事故に遭い亡くなるシーン。「あのシーンで義村は上半身裸になっているんです。台本を読んで僕は『脱ぐ必要あるんですかね』と聞いたんです。だって普通川に入るのなら、袴を脱ぐか捲し上げるじゃないですか。でも上を脱いじゃおうって言うんです。その意図を聞くと、あまりにも重たくなるシーンだったので、義村の裸体で視聴者の視線を一度外したいと言うんです。そこまで計算できるのってすごいですよね」と驚きを隠せない。
約1年半の撮影。山本の奥深い演技も相まって、最後の最後まで三浦義村という男の真意は掴みづらかったが「僕も義時との関係がどういう風に決着するのか楽しみだったのですが、すごく腑に落ちる終わり方でした」と最終回に自信を見せていた。(取材・文:磯部正和)