「今際の国のアリス」青柳翔、アグニとヘイヤは名作映画をイメージ
Netflixドラマ「今際の国のアリス」で、元自衛官の武闘派、アグニを演じている俳優の青柳翔。22日中より配信され日本のNetflix作品として最高視聴を記録するシーズン2でも、アグニの強靭な肉体、そして繊細な感情までを体現して鮮烈な存在感を放っている。青柳がシーズン2でのアグニの変化や、熾烈なアクションシーン、40代への展望までを明かした。
「イカゲーム」の大ヒットが刺激に
麻生羽呂のコミックを映画『キングダム』シリーズを手掛ける佐藤信介監督が実写化した本作は、ある日突然、正体不明の“今際の国”に迷い込んだ主人公アリス(山崎賢人※「崎」は「たつさき」が正式表記)たちが、元の世界に戻るために命懸けの“げぇむ”に挑むサバイバルドラマ。青柳演じるアグニは、圧倒的な戦闘力で“げぇむ”を制圧するキャラクターだ。丸刈り頭にムキムキの肉体というビジュアルも印象的だが、シーズン1配信時のプレミアイベントで青柳は、アグニを演じるにあたってマックスで20キロほど増量したことを明かしている。シーズン2でもその迫力はもちろん健在。“げぇむ”が過酷さを増すにつれ、さらなる苦境に追い込まれていくアグニの苦悩を体現している。
2020年12月にNetflixで配信されたシーズン1から久しぶりにアグニを演じることになった青柳は、「シーズン1は、海外を含め反響をたくさんいただけて、皆さんに喜んでいただけたと思うと、とてもうれしかったです」と喜びを噛み締めながら、2021年9月から配信された韓国発のNetflixのサバイバルドラマ「イカゲーム」にも刺激を受けたと告白。「『イカゲーム』が世界的に大ヒットをして、実際に観てもとても面白かった。『イカゲーム』が世の中に出た上で『今際の国のアリス』シーズン2をやるからには、日本のサバイバルドラマとしていい作品にしなければいけないというプレッシャーや責任感も生まれて。佐藤監督ともそういった話をしていました」と振り返る。
アグニとヘイヤは、レオンとマチルダのよう
個性的なキャラクターがひしめく本シリーズの中でも、「アグ二は、とりわけ弱い人間だと思う」と分析した青柳。シーズン2では、親友のボーシヤ(金子ノブアキ)を手にかけてしまった罪悪感にさいなまれ、葛藤するアグニの姿が描かれる。彼の行き場のないやるせなさを体現した青柳は、「アグニは体は大きいけれど、心は弱い人間。演じる上では、ボーシヤの存在を心に刻むことを一番大切にしていました」と役へのアプローチを語る。
そんなアグニと、特別な絆を育んでいくのが恒松祐里演じる弓道部の高校生ヘイヤだ。母親と確執があり心に傷を持つヘイヤはアグニを慕い、アグニもそんな彼女を守ろうとするが、青柳は「ヘイヤはアグニの足りない部分を補ってくれるような、大切な存在。とても特別な関係ですよね」としみじみ。「あまりにも名作でおこがましいのですが」と前置きしながら、「恒松さんとは、『レオン』のレオンとマチルダのようなニュアンスなのかなと話していました。恒松さんはメンタルがとても強い方。ずいぶん年下(13歳差)ですが、彼女の明るさや心の強さに、とても助けられていました」と感謝しきり。
ヘイヤと共にサバイバルする中では、肉弾戦のほか銃を武器に戦う場面もある。撮影の数か月前からアクション練習に励んだという青柳は、「ガンアクションには、“これは簡単に人を殺めることができてしまう武器なんだ”という銃の重みをしっかりと理解して、取り組まなければいけないと思いました」と覚悟し、とりわけアグニにとって最大の敵にもなるシーラビ(谷田歩)と激闘を繰り広げる7話のアクションが思い出に残っていると続ける。「アグニは自衛隊にいた経験があるので、戦う上である程度の知識を持っている。でもアグニは、シーラビよりは戦いに精通していないという、差別化も必要。シーラビは、アグニ自身を映し出す鏡のような存在でもあって。そういった思いも大事にしていました」と心の見えるアクションを作り上げた。
「まだまだ小僧」
世界中で大ヒットを果たした本シリーズだが、青柳は「佐藤監督をはじめ、みなが『全員でいいものを作っていくんだ』という気持ちを持った、プロフェッショナルな現場。誰もが『どうしたらもっとよくなるのか』と貪欲な精神で撮影に臨んでいるような現場です。その空気が、僕たち役者にも勇気をくれたように感じています」と俳優としても刺激を受けた様子。
シーズン1に続いてタッグを組んだアクション監督の下村勇二、佐藤信介監督に絶大な信頼を寄せる青柳。下村に「いろいろなアクション練習をしながら、キャラクターに合ったアクションを考えてくださる。ものすごく情熱的な方で、とても信頼しています」と頼れる存在であることをアピール。佐藤監督にも「以前、“大物監督になれる条件”が書いてある本を読んだことがあって。佐藤監督はその条件、すべてに当てはまるんですよ!」と賛辞を贈り、「ものすごくクレバーな方で、カットをかけた後にも『どう思ったか』と探ってくださったり、必ず役者の意見も聞いてくださる。こちらから案を出すと、『それはいいね』と受け入れてくれたりもします。真摯に作品に向き合っていて、こういう監督がいるならば全力で取り組みたいと感じさせてくれるような方」と熱く語る。
今年の4月に上演されたラサール石井演出の舞台「三十郎大活劇」で映画スター役で主演を務め、6月公開の映画『ALIVEHOON アライブフーン』では主人公のライバルとなるドリフトレースのカリスマレーサーに。映画、ドラマ、舞台と活躍の幅を広げ、シリアスからコメディーまで演じられる役者として進化を遂げてきた。現在37歳となった青柳だが、「まだまだ小僧です」と自身の現在地を分析。「僕は自分に自信があるわけでもないですし、天才でもないです」と苦笑いしながら、「人生の折り返し地点だと思っています。こういう作品をやりたかった、こういう芝居ができなかったと後悔するのは嫌なので、可能な限りさまざまなことにチャレンジしていきたい。みんなでやってよかったなと思えるような作品、また次もこのメンバーで一緒にやろうよと思えるような作品が、自分にとってのいい作品なのかなと思っています。これからもそういった作品にたくさん出会えるよう、一つ一つ真摯に取り組んでいきたいです」と熱い想いを口にしていた。(取材・文:成田おり枝)