岸井ゆきの、キネ旬主演女優賞受賞!『ケイコ 目を澄ませて』は4冠
映画雑誌「キネマ旬報」による映画賞「第96回キネマ旬報ベスト・テン」発表&表彰式が1日、Bunkamuraオーチャードホールにて開催され、岸井ゆきのが主演女優賞を受賞。対象作品の一本である主演映画『ケイコ 目を澄ませて』は日本映画作品賞第1位に輝いたほか、三浦友和が助演男優賞、三宅唱監督が読者選出日本映画監督賞を受賞し4冠を達成。岸井は「これからも新しい挑戦をしてきたい」と抱負を語っていた。
『ケイコ 目を澄ませて』『神は見返りを求める』『犬も食わねどチャーリーは笑う』『やがて海へと届く』の4作品により、同映画賞で初受賞にして主演女優賞を獲得した岸井。なかでも『ケイコ 目を澄ませて』で演じた聴覚障害のあるボクサー・小河ケイコの鬼気迫る芝居は圧倒的だった。岸井は「歴史ある賞をいただけて嬉しいです」と感無量の表情を浮かべると「『ケイコ 目を澄ませて』の現場では、自分がどれだけシーンをとらえているのか、共有できているのか不安になりました」と手探りの状態での撮影だったという。
しかし、3か月のボクシングの練習中、ずっと三宅監督が寄り添ってくれたそうで「ボクシングのトレーニング中は、ほとんどプライベートなお話はしていないのですが、拳を突き合わせることでコミュニケーションが取れました。しっかりと共通言語が作れた」と回顧。三宅監督が自身にとって力強いパートナーだったことを強調した。
本作でボクシングジムの会長を演じた三浦友和は、クランクインの日に岸井がプロボクサーとしての心も体も出来上がっていたため、役づくりの必要がなかったと明かしていた。
確かな演技力で映画界をまい進する岸井は、司会の笠井信輔アナウンサーから「この経験は今後に生かせる?」と聞かれると「どうでしょう、難しい質問ですね」と微笑みながらも、「もうこの手は使えない。二度と出来ない瞬間を残していただいたので、また新しい挑戦をしていきたいです」と未来に思いを馳せていた。
「キネマ旬報ベスト・テン」は、1919年に創刊した映画雑誌「キネマ旬報」が選出する同映画賞は、その年を代表する「日本映画」「外国映画」「文化映画」を10本、さらに「日本映画」と「外国映画」の読者選出部門10本を選出する。受賞結果は下記の通り。(磯部正和)
2022年第96回キネマ旬報ベスト・テン
日本映画作品賞第1位『ケイコ 目を澄ませて』
外国映画作品賞第1位『リコリス・ピザ』
文化映画作品賞第1位『私のはなし 部落のはなし』
<個人賞>
主演女優賞:岸井ゆきの(『ケイコ 目を澄ませて』『神は見返りを求める』『犬も食わねどチャーリーは笑う』『やがて海へと届く』により)
主演男優賞:沢田研二(『土を喰らう十二ヵ月』により)
助演女優賞:広末涼子(『あちらにいる鬼』『バスカヴィル家の犬 シャーロック劇場版』『コンフィデンスマンJP 英雄編』により)
助演男優賞:三浦友和(『ケイコ 目を澄ませて』『線は、僕を描く』『グッバイ・クルエル・ワールド』により)
新人女優賞:嵐莉菜(『マイスモールランド』により)
新人男優賞:目黒蓮(『月の満ち欠け』『映画 おそ松さん』により)
日本映画監督賞:高橋伴明(『夜明けまでバス停で』により)
外国映画監督賞:ペドロ・アルモドバル(『パラレル・マザーズ』により)
日本映画脚本賞:梶原阿貴(『夜明けまでバス停で』により)
特別賞:小林信彦(小説の執筆活動と並行して、喜劇論からエンタテインメント時評までさまざまな映画に関する書籍やコラムを発表し、映画文化全体の発展に大きな功績を残されたことに対して)
読者選出日本映画監督賞:三宅唱(『ケイコ 目を澄ませて』により)
読者選出外国映画監督賞:シアン・ヘダー(『コーダ あいのうた』により)
読者賞:川本三郎(連載『映画を見ればわかること』により)