「どうする家康」北香那、セクシュアリティに葛藤するお葉への思い「ここから人生が始まる」
12日に放送された松本潤主演の大河ドラマ「どうする家康」(毎週日曜、NHK総合夜8時~ほか)第10回「側室をどうする!」で、松本演じる徳川家康の初めての側室となるお葉役として初登場した北香那。「ロボットのような動き」を意識したというキャラクターや、お葉が苦悩の末に下した決意への思いを語った(※ネタバレあり。第10回の詳細に触れています)。
戦国乱世に終止符を打ち、江戸幕府初代征夷大将軍となった徳川家康の軌跡を追う本作。「コンフィデンスマンJP」シリーズや映画『レジェンド&バタフライ』(公開中)などの古沢良太が脚本を務め、次々にのしかかる試練に「どうする?」と決断を迫られ、迷い葛藤しながら成長していく家康を等身大で描く。北にとって大河ドラマへの出演は「いだてん~東京オリムピック噺~」(2019)、「鎌倉殿の13人」(2022)に続いて3作目。「鎌倉殿」では源頼家の正室・つつじを演じ、2年連続の大河出演となった。
~以下ネタバレあり~
目指したのはロボットのような動き
北が演じるお葉は、侍女として松平家に入った、今川家臣・鵜殿家の血筋の娘。控えめで働き者で、家康の側室となる女性を探していた正室・瀬名(有村架純)と母・於大の方(松嶋菜々子)に見初められ、抜擢される。お葉を演じるにあたり監督から出されたリクエストは「ロボットのような動きをしてほしい」というもの。お葉は動きのみならず、ロボットのように感情を表に出さない性質でもあり、北にとって新境地となった。
「これまであまりクールな役を経験したことがなくて、感情が読めない役は初めてだったので難しかったですね。ロボットのような動きにするため、一つ一つの動きが流れないように歩いたり、作業をしたり、お辞儀をしたり、そのあたりはかなり気にしてやらせていただきました。どうしても自分の普段の動きってそこまでテキパキしていないので、お葉ちゃん仕様にするのにかなり時間がかかりました」
お葉は序盤から強烈なインパクトを放つ。松平家でイノシシを調理する際、誰も捌ける者がおらず困っていたところを名乗り出たのがお葉だった。イノシシを鉈で一撃で捌き、その度胸と鮮やかな動きで周囲を圧倒した。
「あのシーンは何度もリハーサルをしたんです。“ここでこうして、ここでこう!”みたいな段取りが細かくあったので、ある意味ダンスを踊っているような感覚だった気がします。序盤のシーンだったので大事にしたいと、監督もかなりこだわっていました」
監督がとりわけこだわったのは、お葉が鉈を振り下ろすときの掛け声。「“ソイ!”って言うんですよ(笑)。初めは“ヤー!”とか“エイ!”みたいな掛け声でいいんじゃないかという感じだったんですけど、監督がどうしてもお葉に愛くるしさを足したいと“ソイ!”っていう言葉を付けたんです。素晴らしいアイデアだなと」と、リハーサルを振り返る北。一方で監督の思いに応えたい熱意が大きかったためか、こんなエピソードも。
「撮影前には、実家に帰るたびに“ソイ!”ってやっていたみたいで、母に『あんた、なんかやたらとソイソイ言ってたよね』って言われて(笑)。どうやら無意識に練習していたみたいです(笑)。鉈を振り下ろしているときは北香那として“仕留めるぞ”という気持ちになっていましたね。ものすごく気合が入っていました」
初共演の松本潤にリードされた夜のシーン
真面目過ぎるゆえに、どこかズレているところもお葉の愛すべき魅力だが、家康と夜を共にするシーンはその最たる例。瀬名から「家康の好み」を聞いたお葉はアドバイス通りに動こうとするが、家康はやたらと耳を触ろうとしてくるお葉を怖がり、かみ合わないやりとりが笑いを誘う。松本との共演は本作が初となる。
「松本さんとお芝居させていただくのは初めてだったんですけど、何よりもアクションがすごくお上手で、お葉が家康さんに飛び乗ってお腹をなでるシーンでも、すごくリードしていろいろと教えてくださいました。どうしたらこう見えるとか詳しく教えていただいて、もう身を委ねてやらせていただきました」
自身のセクシュアリティを告白したお葉への思い
やがてお葉は10か月後に家康の子を出産。初めは何を考えているのかわからないお葉が苦手な様子の家康だったが、「喉が渇いた」と言えばすぐさま白湯が出てくる、草履の緒が切れていたら新しい草履が出てくる……といった具合で、細やかな気遣いのできるお葉にたちまち魅了される。しかし、そんな矢先にお葉は側室を辞退したいという衝撃的な申し出で家康を驚かせる。お葉は思い人がいることを告白するが、その相手が侍女の美代(中村守里)だったことで家康はさらに動揺する。北自身は、そんなお葉の決意をどう感じたのか。
「お葉にはものすごくいろいろな葛藤があったと思うんです。どうしてこんなに男性が苦手なんだろうと。多分、自分のセクシュアリティにまだたどり着いていないなかで、流れで側室になって子どもまで生んだ。いろいろなことに蓋をしていたと思うんですよね。それが、“美代のことが好き”“わたしは女性が好きなんだ”って気づいた時に引き出しがパパパっと開いていく感覚といいますか。ものすごい覚悟だった思いますが、立場はあったとしても、きちんとセクシュアリティのことも伝えられて、解き放たれた。ここからお葉ちゃんの人生が始まるんだなと思うとうれしかったです。わたしの周りにもLGBTQのお友達がたくさんいるので、大河ドラマでこういったキャラクターが描かれるのはうれしかったですね」
北といえば、映画化もされたドラマ「バイプレイヤーズ」シリーズ(2017・2018・2021)の中国人ジャスミン役も人気だが、同シリーズで長きにわたって現場を共にした松重豊が、「どうする家康」では家康の家臣・石川数正役で出演。昨年3月末より配信された松重主演の「孤独のグルメ」配信ドラマでも共演している。残念ながら現段階では「家康」での共演シーンはないものの、現場では会う機会があったという。
「スケジュール表を見た時に“あ、いらっしゃる!”とうれしくなって、すぐに探して会いに行きました。『ジャスミ~ン』って呼んでくださって(笑)。『よく会うねー。元気だったの?』と聞いてくださって。お話できてうれしかったです。(ゲスト出演した)『孤独のグルメ』から一年経たずにお会いできました」
3作目の大河では10回でメインキャラを演じ、「うれしい反面、あまり現実味がないというか。今も喜びのあまり少しふわふわしています」と目を輝かせる北。新たな人生を歩んでいくお葉に、どんな未来が待っているのか。再登場となるか? 期待して待ちたい。(編集部・石井百合子)