「舞いあがれ!」空飛ぶクルマに託された“未来”への思い
第25週まで放送が終わり、残すところ最終週となった連続テレビ小説「舞いあがれ!」。25週では、ヒロインの舞(福原遥)が人力飛行機サークル「なにわバードマン」の刈谷(高杉真宙)たちと“空飛ぶクルマ”という新しい夢に向かって奔走し始める姿が描かれた。物語のクライマックスが控えるなか、ドラマに“空飛ぶクルマ”に込められた制作陣の思いについて、制作統括を務める熊野律時チーフ・プロデューサーが明かした。
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連続テレビ小説の第107作となる「舞いあがれ!」は、ものづくりの町・東大阪と自然豊かな長崎・五島列島でさまざまな人との絆を深めるヒロイン・舞が、空への夢に向かっていく姿を描く物語。第25週は、舞がかつての仲間だった刈谷と玉本と意気投合。舞は二人が開発する“空飛ぶクルマ”が東大阪の町工場にとって大きなチャンスになると考え、周囲の人々の力を借りながら前へ進んでいく。
“空飛ぶクルマ”を通じて物語の中で未来を描くことについて、熊野は「最初の構想から『“空飛ぶクルマ”をやりましょう』という話になっていたんです。作品の題材としてもそうですが、やはり『空を飛ぶことを最後に描きたいですよね』と脚本の桑原さんとも話していました。今、まさに国内外で“空飛ぶクルマ”が実際に作られる時代になっていて、ドラマの出口としても、舞がそこに関わっていく。そして、世の中が多くの可能性のある未来に繋がっていく。ここから明るい未来を目指していくのだという願いを込めました」と説明する。
ドラマに出てくる“空飛ぶクルマ”は、実際に開発に携わっている人たちの協力を経て製作されたものだ。「実際に機体を開発していらっしゃるところを訪ねて、取材させていただきました。立ち上げた時は誰も実物を見たことがないようなものをやるわけです。最初は手作りからのスタート。子どもの頃から夢見ていた『“空飛ぶクルマ”を作りたい』という素朴でシンプルな想いからみなさんやり始めているんです」と話す。
そんな“空飛ぶクルマ”を描く中で「人と人との繋がり」を描くことの重要さも強調される。「空を飛ぶことは一人ではできない。いろんな人の手を借りなければいけない。最初に桑原さんとこのお話を考えたときに、ドラマの核に『人と人がいろんなものを持ち寄って協力し合うことで空さえ飛べるという、そういった人間の可能性を信じられるような物語にしたい』というのがありました。その構想から出発しているので、このテーマで現代を舞台にドラマを描くなかで“空飛ぶクルマ”に行き着くのは必然だったかなと思います」
未来への物づくりが描かれる一方、引き続き、貴司(赤楚衛二)の葛藤にもスポットが当てられる。熊野は「貴司の物語も継続して描いていきたいという思いがあるんです。歌人である貴司は、どこかでスランプに陥ったりもするけれど、自分の歌を最終的にどう紡ぐかを見出していく、そういう部分も描いておきたいという思いがあります」と紹介。「順調さの陰で創作の苦しみを抱えている貴司の一面が、ドラマを通じて明らかになっていく。彼がどう向き合っていくのかは最終週にかけて、ぜひやっておきたいところです。貴司がどんなふうに歌を詠めるようになっていくのかというのも、物語の大きなポイントになります。楽しみにしていてください」と話していた。(取材・文:名鹿祥史)