是枝監督『怪物』二人の子役たち、愛らしさでカンヌを魅了!
第76回カンヌ国際映画祭
現地時間18日、第76回カンヌ国際映画祭でコンペティション部門に選出されている是枝裕和監督作『怪物』のフォトコール(報道用撮影会)と公式会見が行われ、是枝監督、安藤サクラ、永山瑛太、子役の黒川想矢(13)と柊木陽太(11)、脚本の坂元裕二が出席した。映画では真に迫る名演を見せた子役の二人だが、フォトコールでは黒川の肩に柊木が頭を寄せたり、何かを見つけたのか、笑顔で遠くを指さし合ったりとあどけない姿を披露。その愛らしさで人々の心を溶かしていた。
【画像】かわいすぎる!カンヌ映画祭フォトコールでの黒川想矢&柊木陽太
『怪物』はカンヌ常連の是枝監督と、脚本家・坂元裕二、音楽・坂本龍一さんが組んだ人間ドラマ。学校で暴力を振るわれているらしい小学生の息子・湊に心を痛めるシングルマザー(安藤)、事なかれ主義の教師陣、そしてある葛藤を抱えた子供たちと、登場人物それぞれの視点による“怪物”探しの果てを描く。物語の鍵を握る湊役の黒川はこれまでドラマ「トーキョーエイリアンブラザーズ」「きよしこ」など、その同級生・依里役の柊木はドラマ「最愛」「岸辺露伴は動かない」などに出演してきており、本作にはオーディションで選出された。
会見では海外の記者からの質問を受けた黒川と柊木。カンヌであらためて作品を観た感想を聞かれると、「(撮影時に自分は)何も考えていなかったなと感じ、ちょっとショックでした」と自分に厳しいところを見せた黒川。ただし、新たな気付きがあったことは面白い経験でもあったとし、「現場ではみんなが本当に優しくて、撮影している時は一つの家族みたいな感じで、とても楽しかったです」と振り返った。
「えっと……」っと回答を考える愛らしい姿に、記者たちの頬を緩ませた柊木は「作品を観て、すごく自分の役に集中して演じることができていたなと思いました。そのように自然な感じで撮影に取り組むことができたのは、監督のおかげかなと思います」とちゃめっ気たっぷりに答えて笑いを誘う。「撮影はすごく楽しかったです。皆さんと一緒に頑張れたのがよかったです。ありがとうございました」と続けていた。
このほか、本作の構造上ネタバレにつながるため詳細は控えるが、彼らのキャラクターが抱えたある葛藤についての考え、という難しい質問にも自分の言葉で一生懸命答えた二人。彼らのあどけなくも立派な振る舞いに、会見場からは拍手が湧き起こった。
通常子役には台本を渡さず、彼らの個性に則って口頭で演出をする是枝監督だが、本作では取り組み方を変えている。「二人の少年たちが抱えている内的な葛藤も含めて、なかなか本人の個性をそのままというわけにも行かないと思っていました。実はどちらも試してみたのですが、二人とも『台本があった方がいい』と即答だったので、であれば自分の存在の外側に、きちんと二人の少年の役づくりというものをやってみようと思い、本読みしたり、稽古をしたり、一緒に遊んでもらったり、そういう時間を撮影の前になるべく長く取りました」と専門家のサポートも受けつつ取り組んだと明かした是枝監督。
「撮影の現場ではサクラさん、瑛太さんがいてくれたので、安心して任せられました。とても素晴らしい芝居というか、存在感を見せてくれたなと思います」と見事に大役を果たした二人をたたえていた。
最高賞パルムドールを含むコンペティション部門の受賞結果は映画祭最終日の現地時間27日に発表される。(編集部・市川遥)
映画『怪物』は6月2日より全国公開