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長尾謙杜が演じた青年露伴の魅力 キーワードは“ためらい”

『岸辺露伴  ルーヴルへ行く』より長尾謙杜演じる青年期の岸辺露伴
『岸辺露伴  ルーヴルへ行く』より長尾謙杜演じる青年期の岸辺露伴 - (C)2023「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」製作委員会(C)LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社

 漫画「ジョジョの奇妙な冒険」シリーズの荒木飛呂彦初となるフルカラーの読切で描かれた、「岸辺露伴は動かない」の人気エピソードを、高橋一生主演で実写映画化する『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』(公開中)。本作で青年期の露伴を演じたなにわ男子長尾謙杜は、監督の渡辺一貴たっての希望でキャスティングされた。長尾にオファーした理由や、シーンの魅力について渡辺監督が語った(※一部ネタバレあり)。

【画像】露伴役、高橋一生&長尾謙杜の2ショット

 「ジョジョの奇妙な冒険」とスピンオフ「岸辺露伴は動かない」に登場する人気キャラクターの漫画家・岸辺露伴を主人公にした本作。原作は、国内外の漫画家が参加するルーヴル美術館のバンド・デシネプロジェクトの描き下ろし作品として2009年に発表された同名漫画。相手を本にして生い立ちや秘密を読み、指示を書き込むこともできる特殊能力“ヘブンズ・ドアー”を備えた露伴が、担当編集・泉京香(飯豊まりえ)と共に「この世で最も黒く、邪悪な絵」の謎を追ってルーヴル美術館に赴く。物語の前半は漫画家デビュー間もない若かりし露伴が祖母(白石加代子)の屋敷で過ごした、ある夏が舞台。そこに下宿していた謎めいた女性・奈々瀬(木村文乃)との初恋が描かれる。

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~以下、ネタバレを含みます~

青年期の露伴にあって、現在の露伴にないもの

青年期の露伴と奈々瀬(木村文乃)

 この奈々瀬こそが「黒い絵」の存在を露伴に教えるキーパーソンで、露伴の記憶に強烈に刻まれた存在。当時「描いた女の子が可愛くない」と言われる悩みを抱えていた露伴が、彼女を模写しようとしていたことから接点が生まれ、やがて彼女に惹かれていく。露伴が彼女に惹かれたのはどんなところなのか? 渡辺監督はこう解釈する。

 「10代の男の子って1歳年上の女性でもすごく大人に感じますよね。それは女性も同じかもしれないですけど、1歳違うだけでも自分の手が届かない存在に感じることがある。さらに、そういう人に何か秘密があるんじゃないか、自分の思いが及ばない謎があるんじゃないかと想像するだけでドキドキすると思うんです。まだ大人になりきっていない青年が年上の魅力ある女性に出会った時のときめきだったり慕うような気持ち、淡い恋の情景というのはしっかりと描きたいと思っていました」

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 現在の姿からは想像できないが青年期の露伴には“ためらい”が感じられ、奈々瀬とのやりとりもウブな印象だ。奈々瀬はワケありのようだが、露伴はそこに踏み込むことができずにいる。一度は奈々瀬に“ヘブンズ・ドアー”をかけようとしながら思いとどまる場面も新鮮だ。

 「何かこの人には他人に言えない、ディープな秘密があるということは分かるんだけど、それをどう聞いていいかもわからない。おそらく年上の女性と話すことがこれまでもあまりなかったでしょうし、自分の好奇心をとことん追求できない、思いをうまく伝えられない、そんなもどかしさを出せればと思いました。“ヘブンズ・ドアー”を思いとどまったのは、やはり思いを寄せる人の記憶に土足で踏み込むことにためらいがあったのでしょう。まだ自分の能力にも自信がない、使いこなせていない、不安定な時期だったのかなと。そういったこともふまえると、奈々瀬との出会いは、漫画家・岸辺露伴になるための一つの通過儀礼のようなものだったと思います。この夏の出来事を経て、自分の好奇心にしっかり向き合うこと、興味を持ったものには臆せず進んでいくことへの覚悟ができたのかもしれません」

長尾謙杜の魅力が光るシーン

謎めいた奈々瀬に翻弄される露伴

 ところで、青年期の露伴役の長尾は渡辺監督の希望によりキャスティングされているが、なぜ長尾だったのか。「一生さん演じる露伴との対比もふまえ、まだナイーブな、少し不安定な少年の心を持ったような方にやっていただきたいと思っていました。ちょっと愁いを帯びた表情が印象的な方。そういうことを思いながら、ぼんやりとネットで画像検索をしていたところ、長尾さんの横顔でまさに愁いのある表情の画像を見つけたんです。この方は誰だと調べてみたら、まだ(2021年に)正式デビューする前のアイドルグループ・なにわ男子の長尾さんだった。すでに人気が沸騰しつつある時期でもあったので、お願いしても無理かなと思いつつ、1度お声がけさせていただきました。そうしたら長尾さんご自身も“ジョジョ”ファンということで、ご縁なのでぜひお願いしたいとお話しました」

 当時の長尾は俳優として活動を始めたばかりのころで、まだソロでの主演ドラマや映画もない状況だった。渡辺監督は、実際に演出した印象を以下のように語る。

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 「決して、一生さんのような露伴をやってほしいわけではなかったので、そこを目指してはいけないとは思っていました。むしろギャップを出すことが重要で、青年期の露伴を演じるのはセリフを言わなくても表情だけでも何か感じられるような、そういう存在感がある方がいいなという風に思っていました。長尾さんはそういう雰囲気を持っていらっしゃるので、長尾さんにも“一生さんの露伴を目指してやらなくて全然大丈夫ですよ”とお話しました。10代後半のナイーブな男の子の気持ちでやってくださいとお伝えしたところ、とてもナチュラルでピュアな雰囲気を出していただいたと思います」

 なかでも印象的だったというのが、青年露伴のクライマックスでの奈々瀬との場面。「先にお話した露伴が奈々瀬に“ヘブンズ・ドアー”をかけようとしてやめるというシーンがあるんですけど、僕の中では濃密なラブシーンだと想定していたので、その雰囲気はとてもよく出していただけたと思います。これまでの『岸辺露伴』は恋の要素は無かったので、そういった面でも新鮮に感じていただけるのでは」

 黒を基調にした高橋演じる今の露伴と対照的に、青年期の長尾露伴はオフホワイトの衣裳。撮影は、国の登録有形文化財になった由緒ある会津若松の旅館・向瀧で行われた。(編集部・石井百合子)

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