山下智久は「どこから撮っても美しい」 『私の頭の中の消しゴム』イ・ジェハン監督が魅力語る
電子マンガ・ノベルサービス「ピッコマ」で100万以上いいね!を集めた NASTY CAT の漫画を山下智久主演で映画化する『SEE HEAR LOVE 見えなくても聞こえなくても愛してる』(Prime Video で独占配信中)の監督を務めたイ・ジェハン。2005年公開の映画『私の頭の中の消しゴム』が日本で興行収入30億円の大ヒットを記録し、2009年には中山美穂主演の『サヨナライツカ』が公開されるなど日本ともゆかりのあるイ監督が、初タッグとなる山下の魅力を語った(※数字は日本映画製作者連盟調べ、一部ネタバレあり)。
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本作は、山下演じる次第に目が見えなくなる病を患った漫画家・泉本真治と、生まれつき聴覚障害のある女性・相田響(新木優子)の愛の行方を追う物語。主演の山下は、衣装合わせでいまだかつてないほどの数の衣装を着用することになり嬉しい驚きがあったというが、イ監督はその意図をこう語る。
「映画において衣装はファッションショーと違って、まずは登場人物の生活感が見えることが必要です。この作品の主人公・真治は漫画家なので、おそらく普段からあまりあれこれ着替えるタイプの人物ではない。だからこそ、数着しかない衣装をちゃんと彼に合うものにしたかったんです。たとえ1着だけだったとしても、きっとその人の歴史や生活環境があらわれるはずなので、そういったことを見定めるためにも山下さんにはたくさん着てもらうことになりました」
真治の衣服の色味は、白、黒、暖色が多いが、どのように決めたのか。「わたし自身が好きな色も反映されているとは思うのですが、あくまで真治のキャラクターから全てがスタートしています。彼が漫画家として今どういうポジションにあるのか。彼は今どんな苦痛を抱いているのか、そして何を熱望しているのか、どんな気分でいるのかといったことを考えた上で、自然と決まっていきました」
『私の頭の中の消しゴム』ではソン・イェジンとチョン・ウソンを、『サヨナライツカ』では中山美穂、西島秀俊らを美しく艶やかに撮り上げ、映像美に定評のあるイ監督。『SEE HEAR LOVE』の山下と新木も同様だが、俳優を美しく撮るためにどのようなことが必要なのか。
「あらゆることです。衣装、ヘアメイクはベースにあるもので、俳優さんの顔立ち、頭の形、それに合うレンズや照明も当然選びます。わたしは自分の美学をもって、美しく撮りたい。だから特に主人公は男性であれ、女性であれ、クローズアップもかなり使います。撮影監督とも、この俳優さんの場合は左側から撮った方が格好いい、あるいは美しいのか、あるいは右側なのかということも確認しながら撮っていきますね」
では、山下の場合は? と問うと満面の笑みを浮かべたイ監督。「山下さんの場合は右だろうが、左であろうが、どこから撮っても美しいので、そういうことを考える必要もなかったと思う。これまで多くの俳優と仕事をしてきましたが、アジアでこんなハンサムな人を見たことがない。撮影をしながらも、撮影監督と一緒にカメラを通して山下さんを見ていると思わず『あぁ……』と。あまりにも格好良すぎて感嘆を何度したことか」
特に山下の美しさが際立つシーンを尋ねると、2つのシーンを挙げた。「自分の中でも特に思い入れのある、丹精込めて作ったシーンがあるんですが、1つ目は真治が響の手をギュッとつかんで手を振ったあとに顔をたどって唇を探してキスをするシーン。2つ目は、わたしたちは“永遠なる抱擁”と呼んでいるんですけれど、真治と響がベランダ、屋内、道端へと場所を変えながらずっとハグをしているシーン。どこであろうと二人は相手をいとおしく思いハグをしているのでそのように名付けました。そこはすごく大切に思っているので、作曲家にも“これは永遠なる抱擁だからそれに合った音楽を作ってください”とオーダーしました。実際にサントラでも、シーンに該当する楽曲のタイトルに“永遠なる抱擁”と付けました」
そのほか、響がベランダから身を投げようとする真治を救うシーンや、恋人同士になった二人が公園を歩くシーンにも触れる。「真治が身を投げようとしている、必死になって響を止める。真治は窓ガラスで手を切り血がついているっていう壮絶な場面ではあるけれども、ベッドの上に転がった二人に差し込んでいる日差しがとても美しい。あとは公園を二人で歩いているシーンもいいですね。二人とも力強く、情熱的に、そして速い速度で歩いていくんですね。二人にはあたかも障害がない風に見えるので、とても気に入っています」
山下は主題歌「I See You」も担当しており、彼が奏でる力強く切ない歌声がエンディングを盛り上げ、心地いい余韻を残す。(取材・文 編集部・石井百合子)