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山下智久主演『SEE HEAR LOVE』美しいラブシーンの裏側

『SEE HEAR LOVE 見えなくても聞こえなくても愛してる』より真治(山下智久)と響(新木優子)
『SEE HEAR LOVE 見えなくても聞こえなくても愛してる』より真治(山下智久)と響(新木優子) - (C) 2023「SHL」partners

 電子マンガ・ノベルサービス「ピッコマ」で100万以上いいね!を集めた NASTY CAT の漫画を山下智久主演で映画化する『SEE HEAR LOVE 見えなくても聞こえなくても愛してる』(Prime Video で独占配信中)のメガホンをとったイ・ジェハン監督。2005年公開の映画『私の頭の中の消しゴム』が日本で興行収入30億円の大ヒットを記録したことでも知られるイ監督が、原作をアレンジする中で開発したオリジナルのラブシーンの裏側を明かした(※一部ネタバレあり)。

【画像】衝撃の美しさ!山Pインタビュー撮りおろし

 本作は、次第に目が見えなくなる病を患った漫画家・泉本真治(山下)と、生まれつき聴覚障害のある女性・相田響(新木優子)の前途多難な愛の行方を追うラブストーリー。原作では真治が群司、響は響歌の名。絵柄はほのぼのとしたタッチで、突如群司が視力を失う恐怖などシリアスな出来事とのギャップが印象的だ。映画では、真治と響を取り巻く周囲のキャラクターにコミカルなタッチを残しながら、真治と響の切ないラブストーリーに仕上がっている。

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 イ監督が原作を読んで最も感銘を受けたのは「登場人物たちのポジティブな力」。「群司、響歌はどんなにつらい状況に置かれても、常にポジティブな力に変えていこうとする。肯定的な考え方を失われまいとする努力。そこに感動しました」

 映画化にあたって脚本も兼任したイ監督は、原作からのアレンジについて大きく二つのポイントがあったと話す。「わたしはこれまでの作品でもそうだったんですが、原作がある場合は、その話をどうやって自分のストーリーとして作っていこうかということをまず一番に考えます。あくまで自分の作品、自分のストーリーにしていきたい。2つ目として、もともと原作が持っている魂、エッセンスがどういうものなのかを考え、それをいかに作品に映し込むかというところをポイントに置いて考えます」

 オリジナルの描写の一つが、アメリカの小説家オー・ヘンリーの短編小説「賢者のおくりもの」を取り入れたこと。貧しくも固い絆で結ばれた夫婦が、互いにクリスマスプレゼントを贈るために自分の最も大切なものを手放す。夫は妻に櫛を、妻は夫に時計の鎖を贈るが、それと引き換えに夫は時計を、妻は髪を売っていた……というストーリーだ。この作品が、互いに支え合う真治と響にリンクし、2人の絆を効果的に盛り上げている。

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 「原作を2時間余りの映画にするための工夫の一つですが、原作はWEB漫画ということもあり、あまり重くなり過ぎず、ある程度気軽に読めるようなものになっている印象でした。わたしが映画化するにあたっては、そこに文学的な面白み、そして深みを加えたいという風に思いました。そこで浮かんだのがオー・ヘンリーやライナー・マリア・リルケ(オーストリアの詩人)の詩でした。相手に対して何か贈り物をする時に、自分の一番大切なもの、本来なら投げ出すことができないであろうものを犠牲にしてでも相手のことを考える。その気持ちを何らかの形で表現できたらいいなと。原作の主人公が漫画家で、彼の作品タイトルが『ONLY FOR YOU』ということもあり、少し通じるものがあったかなとも思いました」

 また、真治が響を送り出すときに手をつないだまま手を振る独特の挨拶もオリジナルだ。「真治は目が見えない。そして響は聴こえないということなので、シナリオを書く段階からもそうですし、現場で俳優さんたちと二人の意思疎通をどのようにとるべきなのかについて、かなり研究して話し合いをしました。互いの存在を確認するためには、やはり頻繁に身体的接触が必要になるかと思います。挨拶についてもいろいろと考えた末、あの方法しかないのかなと。撮影現場で真治だったらどうするだろうと、わたし自身も目を閉じて何も見えない状態で、すごく想像しました」

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 美しいラブシーンについても、イ監督自身「目が見えない、聴こえない立場だったら?」と二人に想像を巡らせてシーンを構築していったという。「例えばキスする場面においても、もし目が見えなかったら必ず相手の顔に触れて顎を触って唇を探すだろうと。とにかく想像して、頭の中でいろいろなパターンを考えてみました。わたしが最も好きな場面の一つが、二人が手をつないで手を振ったあと、真治の手が響の顎を伝って唇を探してキスをするシーンです」

 銀杏が敷き詰められた夕暮れの公園で夢を語り合う真治と響など、秋冬をクローズアップした景色もうっとりするほどの美しさ。言葉を超えた触れ合いを、全身を使って細やかに体現した山下と新木に、目も心も潤う一作となっている。(取材・文:編集部 石井百合子)

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