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伊藤沙莉、女優人生の失敗から得た教訓

伊藤沙莉のポリシーとは。
伊藤沙莉のポリシーとは。

 伊藤沙莉は、9歳で子役としてキャリアをスタートさせて以来、今年で芸歴20年目。今や個性派かつ、演技派女優として唯一無二の存在感を確固たるものにさせている彼女は、2024年度前期の連続テレビ小説「虎に翼」のヒロインに抜てきされ、さらなる注目を浴びている。

【画像】唯一無二の存在感…伊藤沙莉インタビューカット集

 そんな伊藤が「歌舞伎町の女探偵」という異色のキャラクター・マリコを演じる最新作『探偵マリコの生涯で一番悲惨な日』は、Netflixオリジナルシリーズ「全裸監督」の内田英治監督とディズニープラス「スター」オリジナルシリーズ「ガンニバル」の片山慎三監督が、6つのエピソードを分業し、1本の映画として創り上げたコラボレーション作品。鬼才と言われる両監督に「伊藤沙莉をヒロインに撮りたい」と言わしめた、伊藤の女優としての魅力に迫った意欲作だ。

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 台本を受け取ってから撮影がスタートするまで、どんなふうに準備をしていくか、芝居をかっちりと決めていくのか、それとも当日まで決めずに行くのか、スタイルは役者によってさまざまだが、伊藤は「自分の中でも基本的には当日になって何が出るかな状態」だという。「なんとなくのイメージはありますが、家でセリフ練習をする時に感情を込めるのが難しくて。プロとして当たり前なんですけどなんだか恥ずかしくなっちゃうんですよね。だからマリコに限らず、芝居を決めていくことはほとんどなく、棒読みの状態で覚えて撮影現場に行くことが多いです」と話す。

 真っ白な状態で撮影に臨むと、監督の演出、役者たちとの芝居が役柄を自然に作り上げていく。本作では竹野内豊をはじめ、北村有起哉宇野祥平ら個性派俳優たちが勢ぞろいした撮影現場。「やっぱり濃い方々だったので、誰と一緒のシーンも面白くて、すごく贅沢な現場でした。それぞれの役者さんとの芝居を受けながら、マリコのリアリティが作り上げられていった気がします」と撮影を振り返る。

伊藤沙莉
(C) 2023「探偵マリコの生涯で一番悲惨な日」製作委員会

 マリコのパートナーであるMASAYAを演じた竹野内とも自然なやりとりの中で2人の微妙な距離感を作っていったという。「竹野内さん自身、なんの努力もいらずに信じさせてくださる方です。本来なら、『竹野内豊だ』ってなると思うんですよ(笑)。もちろん顔は変えられないのでかっこいいんですけど、撮影現場では自然に忍者のMASAYAがいて。私もごく自然にMASAYAに向き合えました」

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 本作では2人の監督によるコラボ作品という異色作だが、どちらの監督作品であっても伊藤のマリコ像は一切ブレることがない。「2人の作品をぬって撮っているような感覚が最初はありましたが、途中からそれもなくなりましたね。内田さんも片山さんもすごくおだやかに任せてくださる監督で、大事なところだけポイントで伝えてくれるんです。だからこそどの物語でもマリコのキャラクターがブレることはなかったですね」という。

 どんな映画でも自然に溶け込んでいく伊藤の芝居は、ニュートラルから始まるからこそ、撮影現場で魅力が積み上げられていく。「余計な役づくりはしない」と決めたのは、内田監督がメガホンを取った映画『獣道』でのある出来事がきっかけだったという。「撮影現場からの帰りの電車の中で、今までそんなことしたことなかったのに、台本を読んでラストシーンの準備をしたんです。こんな演技しようかなとかいろいろ考えて。そうしたら当日、本番で全然うまくできなかったんです。やりたかったこと何一つできなくて、本当に完全に大失敗で(笑)。カットしてくれ!! と思うくらいできなくて、実際にカットされましたね。そのときに、もう2度としない! と決意しました」と笑いながら女優人生の失敗を振り返った。

 見る者の胸にスッと溶け込んでくる気負いのない自然な芝居のみならず、伊藤の魅力は失敗談をも成功に昇華させる彼女自身のポジティブさなのだろう。多くの監督から愛される伊藤が演じる、ハスキーボイスの主人公・マリコの活躍に期待したい。(取材・文:森田真帆)

映画『探偵マリコの生涯で一番悲惨な日』は6月30日より公開

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