ガンダム、マジンガーZ…巨大ロボットの魅力伝える展覧会開催
今年9月9日からの福岡市美術館を皮切りに、順次巡回が予定されている展覧会「日本の巨大ロボット群像」の記者会見が都内スタジオで行われ、福岡アジア美術館学芸課長で本展監修を務める山口洋三、本展ゲストキュレーターの廣田恵介、五十嵐浩司、そしてメカニックデザイナーの宮武一貴も来場した。
本展覧会は、日本独自のジャンルである「巨大ロボットアニメ」のデザインとその映像表現の歴史を紐解き、「巨大ロボットとは何か」を問いかける内容。「わたしの顔に見覚えがある方もいらっしゃるかもしれませんが、2019年に(展覧会)『富野由悠季の世界』の担当者の一人として企画に関わっておりました。今回はその第二弾というわけではないですが、巨大ロボットに特化した展覧会を企画しております」と切り出した山口は、「今年は初のロボットアニメ『鉄人28号』が放送されてから60年という節目の年ということで、ロボットを振り返るのにうってつけのタイミングではないかと思いました」と開催の意図を明かす。
展覧会の見どころとしては、「巨大ロボットのメカニズムに注目」「気分はパイロット? ロボットの大きさを体感できる」「内部メカにもえる!」「メカニックデザイナー宮武一貴による圧巻の巨大絵画を展示」の4点だという。
「巨大ロボットのメカニズムに注目」では、「マジンガーZ」「ゲッターロボ」など1970年代に考案された、搭乗、合体、変形といった巨大ロボットアニメのメカニズムを実際の造作物によって伝えるコーナー。「ここでは資料が並ぶというよりは、ロボットのメカニズムをいかにして分かってもらえるか。そうした展示を考えています」と語る廣田は、美術館という空間で“ロボットを体感できるためにはどうしたらいいか”というテーマを踏まえて、「コンセプトとしては飛び出す絵本の中に入り込んだような感覚を味わってほしい。原画などアニメーションの制作素材はとても小さいので、それを並べただけでは巨大ロボットの大きさは表現できません。だから最初に頼まれた時にどれくらいの大きさにしましょうかと尋ねられたので、『美術館を突き抜けるくらい』『美術館の壁をぶち抜くくらい』と言ったんです。それくらい言わないとこぢんまりとしたものになってしまうから」と説明。
さらに廣田は「勇者ライディーン」の展示プランのスケッチを見せながら、「ライディーンは、ロボットの状態と非戦闘的な状態、そして一番戦闘的なゴッドバードという鳥形の状態の三形態に変化できるのが最大の特徴。その変化を見せるには、ななめに板を並べて、どの面から見ても、次の面につながるような立体的な構成を考えてあげれば、このロボットの特徴が出るんじゃないかと思う。それはマジンガーZやゲッターロボも同じ事です」と付け加えた。
二つ目の「気分はパイロット。ロボットの大きさを体感できる」は、実際のロボットの一部分(あるいは全部)を劇中で設定された通りの大きさに引き伸ばしたらどうなるかを考察するコーナー。そこでは美術館の床に全長18メートルの実物大ガンダムが描かれるそうで、「美術館の面白さって体感できることなんです。その特性を最大に生かすためには、頭から足元まで自由に歩いてもらえたらいいと思った。そこでガンダムのこぶしってこれくらいなんだといったことが確かめられますから」と解説する廣田。さらに「太陽の牙ダグラム」の設定画をもとに、ダグラムの頭部にある窓型のコックピットを再現するコーナーも設置されるという。「これはまだ僕たちも実物を見ることができていないんですが、これをアニメーションの寸法通りにつくったときに、本当に人間が中に入れるのかどうか。それは僕たちもまだ分からない。ですから、会場に来てくれた方が『これは中に入れないね』となっても構わない。それはそれで事実なんですから。だから写真を見るだけではなく、実際に美術館に来て。実際に座れるのかどうか、ご自身で確かめていただければと思います」とコメント。
展覧会での変形メカは、変形前、変形後の実物大で出力するそうで、OVA「メガゾーン23」の主人公が搭乗するガーランドの再現コーナーも登場するという。「ガーランドのデザイン図を描いた荒牧伸志さんからは、これはアニメーションをつくるために描いた図であって、立体をつくるための図ではないと言われたんですが、だからこそつくるんです。この展覧会では、デザインがすばらしいとか、そういうことではなく、アニメーション用に描かれた設定通りに実際につくってみて、そこに矛盾が生じたとしても、本当につくってみたらどうなんだということを真面目に考えたものなんです」とそのコンセプトを語る廣田。
さらに『天空の城ラピュタ』のロボット兵の元ネタとも言われる、「ルパン三世」に登場したラムダに関連する展示もあるという。「このロボットの画期的なところは、1980年代の東京の街中を飛び回って、縦横無尽に暴れ回るところ。デザインは『天空の城ラピュタ』に継承されましたが、それ以前は東京の街を大暴れしていたんです。それを体感できるような、資料も用意しているので、このラムダのまわりで考察を深めてもらいたいと思います」と廣田。
その他、ロボットの内部構造図を紹介するコーナーや、メカニックデザイナーの宮武一貴(スタジオぬえ)が描く巨大絵画なども見どころになるという。さらにこの日紹介されたロボット作品は「ほんの一部」とのことで、全体で45タイトルのロボット作品がさまざまなスタイルを使って紹介される予定だという。(取材・文:壬生智裕)
展覧会「日本の巨大ロボット群像」は9月9日~11月12日まで福岡市美術館、2024年2月10日~4月7日まで横須賀市美術館、以降京都(2024年夏)など追加巡回を調整中