松山ケンイチ、11年前の大河ドラマ主演は「気が狂いそうにいっぱいいっぱいだった」
松本潤主演の大河ドラマ「どうする家康」(毎週日曜、NHK総合で夜8時~ほか)で徳川家康(松本潤)の家臣団の間で“イカサマ野郎”と呼ばれる本多正信を好演する松山ケンイチ。30日放送の第29回「伊賀を越えろ!」で約5か月ぶりに姿を見せたが、3月5日放送の第9回からの正信の変化、そして11年前に主演を務めた大河ドラマ「平清盛」からの自身の変化までを語った。
松山演じる正信は、胡散臭く無責任な進言をする“家臣団の嫌われ者”。第5回「瀬名奪還作戦」で家康が今川氏真(溝端淳平)に捕らわれた妻・瀬名(有村架純)を取り戻す作戦で登用された。しかし、第8回「三河一揆でどうする!」では本證寺から年貢を取り立てようとする家康(松本潤)と、住職・空誓(市川右團次)率いる一向宗徒が激突した際、一向宗側に寝返り家康のもとを去った。
再会した家康は「棒からナイフに」
第9回で三河を追われてから約5か月ぶりの登場となる第29回は、織田信長(岡田准一)が明智光秀(酒向芳)に討たれたのちの展開。光秀に首を狙われる家康が側近たちと別行動をとり、服部半蔵(山田孝之)らと共に服部党の故郷である伊賀を越えようとするさまが描かれた。松山にとって9回からおよそ5か月ぶりの撮影になるが、久々の撮影現場でどんなことを感じたのか。
「家康が全くの別人のように感じました。正信がいない間に瀬名の死、信康の死があって、「本能寺の変」の後の回ですから、いろいろなことを経た家康を見た時に、僕が9話まで見てきた家康とは全然違う雰囲気はありましたね。年齢を重ねたということももちろんあるんですけど、棒がナイフになってきたみたいな、そういう鋭さみたいなものも感じますし。今までは石川数正、酒井忠次ら家臣たちにアドバイスを受けてなんとか進むことができていたのが、家臣団の結束の強さは変わらずあるんですけど、決断を家臣たちに委ねるというより、家臣団のアドバイスの向こう側のところで1人で抱え込んでるようなところがある。そういう風な家康になっていると思いました」
三河を追放された正信が再び姿を見せるのは、家康が窮地に陥った時のこと。光秀の息のかかった伊賀流の長である百地丹波(嶋田久作)らに捕らえられ殺されそうになった家康は、自身の首と引き換えに半蔵たちの助命を請う。そこへ伊賀の軍師となっていた正信が現れ、かつて一度は敵対した家康の変化、成長を目の当たりにすることとなる。
「殿さまが伊賀者を守るっていうのは前代未聞だったというか。伊賀者って武士ではなく、ある意味では民衆なので、家康にとっては立ち位置が違う。その人たちを守るための立ち居振る舞いをしているというのは、正信が目指していた世界だったと思うんですよね。なので、そこに感動していた、心を動かされたのだと思います」
なお、主演の松本とは、松山にとって初の連続ドラマ出演となった「ごくせん」(2002)で共演しているが、本格的に顔を突き合わせて共演するのは本作が初となる。座長を務める松本の印象を「痒いところをかいてくれるような存在」と評する。
「松本さんはいろいろな現場で経験を積んでいらっしゃるので、現場全体が見えている方なんですよね。僕らキャストに対しても、スタッフに対してもそうですけど、痒いところをかいてくれるみたいな存在。なのですごく現場に居やすいです。おそらく相当重い責任、何かを背負い続けているので、少しでも軽くできたら、自分にできることがあればとアンテナを張ってはいるんですけど、全然弱くない人なので。9話から随分時間が空いて、久しぶりに現場に戻りましたが、松本さんのエネルギーは何も変わっていないというか、パワフルな印象はずっとあって。僕ができることはないのかもしれないと思うほどです」
11年前の大河ドラマ「平清盛」で格闘した日々
ところで、松山にとって本作は11年ぶりの大河ドラマとなるが、11年を経て俳優としても大きな変化を感じているようだ。「以前は主演だったこともありますが、現在(インタビュー当時)撮影している37話目の時点ではもう気が狂いそうにいっぱいいっぱいになっていました。自分の持てる全部を出してもまだ足りないんじゃないか、そういう思いでずっと現場に向き合ってたところがあったんですけど、今回はそれとはまた全然違う居方になっているなと。主演ではないことももちろんありますけど、キャラクター設定もそうですし、言葉を選ばずに言うなら現場に遊びに来ているみたいな感覚すらあります」
「平清盛」では当時26歳、現在は38歳。「俳優を続けていく考え方や、役へのアプローチの仕方も全然変わってきた」と松山。その変化には2011年に起きた東日本大震災が大きく影響しているという。
「今回は気持ち的に楽にやれているというのは感じますが、「平清盛」は前年に東日本大震災があって、そんななかで自分たちはどんなふうに作品と向き合い、皆さんの心を動かしていけばいいんだろうと考えさせられた時期でもあったんですよね。なので必要以上に力んでしまったり、悩んでしまうこともありましたが、そういう時期を経て今があるとも思います。今回、また大河ドラマの現場に参加させていただいて、いろいろな発見、気づきが改めてありましたし、こんなに楽しいものなんだと感じることができました。こういう雰囲気のまま、監督やスタッフの皆さん、松本さんたちキャストの皆さんと楽しく“遊んで”いけたらと思っています」
第29話で家康の窮地を救ったのち、再び家康のもとに戻る可能性を示唆しながら姿を消した正信だが、次に現れるのはいつなのか。風来坊な正信だけに、再び思わぬ場面でひょっこり顔を見せ驚かせてくれることだろう。(編集部・石井百合子)