第45回PFFラインナップ発表 新企画「イカすぜ!70~80年代」特集、大森一樹&斎藤久志の自主制作映画など上映
若手映画監督の登竜門として知られる「第45回ぴあフィルムフェスティバル2023」(以下PFF)のラインナップ発表会が9日、京橋の国立映画アーカイブで行われ、招待作品部門に登場する山中瑶子監督、PFFスカラシップ作品『恋脳Experiment』の岡田詩歌監督、PFFディレクターの荒木啓子が出席し、今年の見どころを語った。
【画像】「PFFアワード2022」グランプリに輝いた河野宏紀監督
自主映画を対象とした本格的なコンペティションとして知られる「PFFアワード」。45回目となる今年は、応募総数557本の中から22作品を9つにプログラムに分けてスクリーン上映する。最終審査員の5名は後日発表。9月22日の表彰式では、5名の審査員が選ぶグランプリのほか、8つの賞が選ばれ、翌23日にはグランプリ、準グランプリ作品の上映が行われる。荒木ディレクターは、「アニメーション、実写、長さも混在している。22名の監督に会って印象的だったのは、映画づくりがカジュアルになったということ、まわりに知っている人がいなくても、インターネットで俳優、スタッフ、機材を見つけて映画を始める人が多い。スタートラインが開かれている感じがします」と今年の傾向を分析する。
招待作品部門では、「イカすぜ!70~80年代」と題した特集を実施。これは、2028年に迎える第50回に向けて連続して行われる予定の大型企画で、PFFが誕生した1970年代から毎年10年区切りで、自主映画のみならず、当時の傑作たちを上映し、当時の息吹を追体験する内容となる。今年は1970年代から80年代にかけて発表された作品が上映される。
本特集では、初期のPFFを彩った映画人を偲ぶ特集が行われる。「大森一樹再発見」では、昨年11月に逝去した大森一樹監督が手掛けた8ミリおよび16ミリフィルムの自主制作映画を上映。高校2年生の時に手掛けたデビュー作『革命狂時代』から、みずみずしい魅力に満ちた初期作品9本を一挙上映するほか、斉藤由貴主演の『女優時代』、高岡早紀主演の『悲しき天使』を35ミリで上映する。
また、昨年12月に逝去した斎藤久志監督を追悼する「斎藤久志再発見」では、自主制作時代の『うしろあたま』から、塚本晋也監督がプロデュースした『サンデイドライブ』、矢口史靖監督や鈴木卓爾監督が提唱した固定カメラ、ワンシーンワンカットの短編映画集「ワンピース」から、斎藤監督が手掛けた『Whatever』『DON'T LOOK BACK IN ANGER』、遺作となった東出昌大主演『草の響き』も上映する。
初期のPFFコンペティション部門で審査員を務めるなど、PFFの礎を築いた「日比野幸子プロデューサー再発見」では、山口小夜子主演の幻の映画『杳子』のデジタルリマスター版をワールドプレミア上映。アジアの新鋭を紹介した日比野プロデューサーにちなみ、ホウ・シャオシェン監督の『風櫃の少年』、イ・チャンホ監督の『旅人は休まない』も上映される。
さらに『あみこ』の山中瑶子監督が影響を受けた作品を紹介する「山中瑶子『あみこ』への道」では、アレハンドロ・ホドロフスキーの『ホーリー・マウンテン』、アンジェイ・ズラウスキーの『ポゼッション』、山中監督の『あみこ』、テレビ作品「おやすみ。また向こう岸」をスクリーン上映する。また、「塩田明彦監督がみつめる相米慎二の少年少女」と題した特集では、相米作品の『ションベンライダー』『お引越し』と、塩田監督の『どこまでもいこう』を三本立てで上映。相米監督の世界観を考察する機会となる。
新作『私の大嫌いな弟へ ブラザー&シスター』(9月15日)も間もなく公開される、フランスの名匠アルノー・デプレシャン監督の特集上映も東京日仏学院やムヴィオラの協力で行われ、『二十歳の死』『そして僕は恋をする』『魂を救え!』といった初期作品、劇場未公開作『イスマエルの亡霊たち』が上映される。デプレシャン監督は来日を予定しており、梶芽衣子主演の『女囚701号 さそり』について語り尽くすプログラムも企画されている。
そのほか、第29回PFFスカラシップ作品『恋脳Experiment』もワールドプレミア上映。アニメ作品『Journey to the 母性の目覚め』でPFFアワード2021新作員特別賞を受賞した岡田詩歌監督が、祷キララ、平井亜門、中島歩らを迎えた実写作品で、現在制作中とのこと。期間中は、その他にも数多くの作品が上映予定となっている。(取材・文:壬生智裕)
「第45回ぴあフィルムフェスティバル2023」は9月9日~23日まで東京・国立映画アーカイブにて実施(月曜休館)(京都でも開催予定)