「どうする家康」柴田勝家は秀吉に怯えていた 吉原光夫“三英傑”との共演振り返る
松本潤主演の大河ドラマ「どうする家康」(毎週日曜、NHK総合で夜8時~ほか)で織田家の家臣・柴田勝家を演じた吉原光夫が、本作で描かれた勝家の生きざまや、三英傑を演じた松本潤、岡田准一、ムロツヨシとの共演を振り返った。吉原は信長の忠臣であった勝家について「歴史などから、猛将であり、家来に対し優しかったなど、『漢』っぽさが感じられる人物像を感じましたが、この『どうする家康』では、家康と信長の間にあり、どう繋げてゆくか、そして少しサディステック?(笑)な信長様に一生を尽くす理由を探してみました」と語っている。
2020年放送の朝ドラ「エール」の馬具職人・岩城新平役も話題を呼んだ吉原。大河ドラマへの出演は、「どうする家康」が初となった。吉原演じる勝家は、公式サイトのキャラクター紹介では体は熊のように大きく、声は柱を壊すほどデカい。小心者の家康をいつも怖がらせ、お調子者で機転が利く秀吉と対照的な、めっぽう強い武骨ものとある。6日放送の第30回「新たなる覇者」では信長の死後、織田家の跡継ぎを決める清須会議が開かれ、信長の妹・市(北川景子)は織田家の実権を握ろうとする秀吉(ムロツヨシ)に対抗すべく、勝家との結婚を決意。秀吉と勝家の対立が深まっていくさまが描かれた。
吉原は信長に尽くした勝家について“臆病”をキーワードに以下のように分析する。「1人の男に惚れるということは自分もあるので理解しましたが、やはり、『臆病』でもあったのかな? と仮定し少しキャラクターラインに加えて演じました。信秀の時代から織田家に仕え、この家系のカリスマな血筋を肌で感じて来た勝家は、織田家と共にあることで、己の中にある『臆病』が少し和らいだのかも? と。もちろん、筆頭家老にまでなるということは戦のセンスがあり、強さや気持ちがある武将ではあったんだろうと思いますが、秀吉のような、掴みどころの無い人間に怯えて居たのもまた確かだったと演じながらも感じました。それでもお市と夫婦となり、織田家を繋いでゆこうと思ったのは、信長様の全てが輝かしく愛おしく、捧げるだけの価値があると思い、また、どんな時も忠義を尽くし、我慢を強いられたお市の側に最後まで居る事を選んだのも、勝家なりの織田家に対する愛情だったのでは? と感じました」
信長を演じる岡田とは近年、『燃えよ剣』(2021)、『ヘルドッグス』(2022)などの原田眞人監督の映画でも共演。「どうする家康」での共演を「岡田くんとは、大河以前に映画でも共演させて頂き、彼の一種信長様にも似ている、カリスマ的な部分や、映像やアクションに対する狂気みたいな部分も感じていたので、信長様に仕えるのは容易でした。笑」と振り返る。
一方、ムロ演じる秀吉は勝家と異なるアプローチで信長を支えてきたが、第4回では勝家が秀吉を背後から蹴り倒すシーンが話題を呼んだ。勝家はお調子者の秀吉を苦々しく感じているようだったが、吉原は本作で描かれた両者の関係、ムロとの共演を「秀吉というよりも、ムロさんにやられたという感じでした。笑 ムロさんが本当に現場でも、俳優として、リーダーとしても才覚がある人なので、そのままやられてるな…やられたな…と。勝家にとっては、武将というよりも、『人間』として信長様以来初めて恐ろしさを感んじた、『狂気』を持った人物なんだろうと思います。だからこそ、睨み、尻を蹴り必死に出鼻を挫こうと頑張った…勝家可愛いですね。。」と述懐。第30回について「清洲会議での無礼な程に接近して見下されたあの日は忘れません。笑」とも。
第30回で死を覚悟した勝家は、市と娘たちに対して秀吉のもとへ行くようすすめるも市は拒否し、勝家と北ノ庄城に残る道を選んだ。この時の勝家の心情、勝家にとっての市の存在について吉原は「この作品では、特別お市との恋愛シーンがあるわけでもなく、どちらかというと『最後の家臣』という質感でした。作品の最初の方では、お市と家康が2人で居るところを妬んでる風なシーンもありましたが、勝家は、これまでも織田家のご子息を養育していたこともあるので、お市の事は最後まで、織田家の君主として仕え、織田家の大切なご子女であったのかな? と思っています。ですがお市は、信長様に忠義を尽くし辛抱が多かったと思うので、特別気に掛けた人物ではないのかな? と思っています。なので最後のシーンでは、北川さん演じるお市の姿には、哀しみの中にもどこか解放された自由な雰囲気があり、やっと自分らしく生きて終われる。そんな姿に自然と…泣。茶々が戻ってくる姿には、鳥肌が立つほどの恩愛を感じました」と思いを巡らせる。また「北川さん演じるお市は、空気が割れるほど凛としていて、かっこよかったです。最後のシーンは最の高です」と北川を絶賛している。
出演を終え「やはりホッとしている…というのが本音です。もっとがっつり関わりたかったのも本音です」と心境を語る吉原。主演の松本との共演については「松潤くんとのやりとりが、事務所の中での師弟関係と、信長様と家康との関係と重なるところがあり、見ていて微笑ましい部分と、ヒヤッとする部分にリアリティがありました。最初の頃の2人が相撲を取るシーンは、宛ら相撲部屋のぶつかり稽古のようで、芝居するのを忘れていました。笑 家康という何回も擦られてる人物を松潤くんが毎回新鮮にトライしようとしてる姿が眩しかったです」と惜しみない賛辞を送った。
元劇団四季の団員で、ミュージカル「レ・ミゼラブル」のジャン・バルジャン役など舞台を中心に活動してきた吉原は、近年はドラマ・映画へと活躍の場を広げ今後も新作が続々待機中。現在放送中の日曜劇場「VIVANT」のほか、今後は原田眞人監督の『BAD LANDS バッド・ランズ』や宮藤官九郎脚本の『ゆとりですがなにか インターナショナル』などの映画が控えている。(編集部・石井百合子)