『ファンタビ4』の予定は現状ナシ…プロデューサーが明かす
映画『ハリー・ポッター』『ファンタスティック・ビースト』シリーズのプロデューサー、デヴィッド・ハイマンが『バービー』の来日プロモーション時にインタビューに応じ、ハリー・ポッター魔法ワールドの今後などについて語った。
【画像】可愛すぎると話題!実写バービー役のマーゴット・ロビー
『ファンタスティック・ビースト』は、『ハリー・ポッター』シリーズの新章としてスタートし、これまでに『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』(2016)、『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』(2018)、『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』(2022)の3作が公開された。5部作になる予定だったが、北米では興行収入が右肩下がりになっており、第4弾の行く末は不透明になっている。
ハイマンは第4弾実現の可能性について、「わからない。現時点では考えていない」とコメント。彼がハリー・ポッター魔法ワールドで現在取り組んでいるのは、米ワーナーの動画配信サービスMax用の「ハリー・ポッター」実写ドラマシリーズだ。同ドラマの制作は今年4月に発表され、ダニエル・ラドクリフらが出演した映画版からキャストを一新、本1冊を1シーズンかけて描くといい、少なくとも7シーズンが作られる予定の壮大なプロジェクトとなっている。
4月の発表時には交渉中の段階だったが、『ハリー・ポッター』『ファンタスティック・ビースト』シリーズ全作を手掛けてきたハイマンも同作に正式に参加することになったのだという。「ものすごく初期段階だが、ドラマシリーズを進めている。まだ脚本家も決まっていない段階だけどね」と明かしていた。
今回の『バービー』に関しては、もともとマーゴット・ロビーと夫のトム・アカーリーの制作会社が進めていた企画で、ハイマンはマーゴットと『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』で組んだことがあり、大作プロデュースの経験でサポートできるのではと参加することになったのだという。ハイマン自身、配給のワーナー・ブラザースと長年にわたる関係があるだけでなく、ノア・バームバック監督の『マリッジ・ストーリー』『ホワイト・ノイズ』そして新作映画もプロデュースしているため、彼のパートナーであるグレタ・ガーウィグ監督とも知り合いだったことも重なり、スムーズな製作につながった(ノアはグレタと共に『バービー』の脚本も執筆している)。
『バービー』の製作はプロデューサー人生のハイライトの一つと言えるほど楽しかったというハイマンは、ガーウィグ監督について「彼女ならではのビジョンを持っているが、とても包括的でもあり、皆を巻き込むことができる。今まで会った中でも最も賢い人の一人で、映画史についての深い理解があり、映画の中に他の映画の引用が出てくるのだが、それを彼女独自の言語で形にしているんだ。人間の感情を敏感に感じ取る人で、映画はおかしくて、深く、エモーショナル。それが彼女の強みだと思う」と大絶賛。
『レディ・バード』『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』などで高い評価を得てきたガーウィグ監督だが、これほどの規模の大作を手掛けたのは初めてだ。だが、以前にも大作経験のなかったアルフォンソ・キュアロン監督、デヴィッド・イェーツ監督を『ハリー・ポッター』シリーズに抜てきしてきたハイマンには、それが問題にならないことは明白だったのだという。
「監督たちにとって、大作というのは“遊べるおもちゃ”が多いというだけのこと。製作費100万ドル(約1億4,000万円)で作る時も、1億ドル(約140億円)で作る時も、どちらにしたって十分な資金、時間があるとは感じられないんだ(笑)。だからサイズにかかわらず全ての映画の制作には困難があるが、突き詰めれば、それは演技であり、物語を語るということ。大きかろうが、小さかろうが同じことなんだ」(1ドル140円計算)
映画業界にも大打撃をもたらしたコロナ禍を経て、映画スタジオはより一層、すでに人気が確立されているIP(知的財産)やフランチャイズに注力していく姿勢を明確にしている。ハイマンは「興味深いことに『バービー』はIPだが、完全にオリジナルな映画。バービー人形はこの映画のコンテクストではあるけど、主題ではないからだ。これからの映画界がどうなっていくかはわからないが、本作のような映画が作られていってほしいと思う。もっとオリジナルな映画を作ることが奨励されるようであってほしい」と語る。
「だけど、どうなるかな。スタジオは企業、ビジネスマンによって運営されている。金が第一のモチベーションだ。僕にとってのモチベーションは、シェアすること。自分たちの映画を世界とシェアしたいと思っていて、観客がそれを観てくれるのは素晴らしいことだから。だが、スタジオはそれとはまた違い、7%の利益率で運営している。だから彼らにとっては、リスクは取らず、安全にやることが重要。それは恐ろしいことでもある……。だからこそ、この映画を作れたことには信じられない思いだ。勇気があることだし、実現できたことにとても興奮している。こういう映画がもっと作られることが許されればと思っている」と『バービー』が良い例となることに期待をかけていた。(編集部・市川遥)
映画『バービー』は公開中