樋口真嗣、山崎貴監督と熱いゴジラトーク『ゴジラ-1.0』に期待と嫉妬「ゴジラ映画やれていいな」

　15日、映画『ゴジラ-1.0』を手掛ける山崎貴監督が厳選した、過去の『ゴジラ』作品を上映するイベントの第1回作品『ゴジラ』 60周年記念デジタルリマスター版の上映会が池袋HUMAXシネマズで開催された。上映前には山崎監督と、2016年公開の『シン・ゴジラ』で監督を務めた樋口真嗣が登壇。ゴジラ愛あふれるトークを繰り広げた。

【画像】戦後日本を蹂躙するゴジラ…『ゴジラ-1.0』場面写真

　二人の出会いは、樋口監督が特技監督として参加していた平成『ガメラ』シリーズまでさかのぼるという。樋口監督は「その頃に合成をやっていた会社が下北沢にありまして。打ち合わせが終わるとみんなで飲みにいったりするわけですが、そこに（山崎監督が）いたんですよ」と述懐。そこでクリエイター同士「あのシーンはどうやって撮ったの？」といった話題で盛り上がっていたという。

　それゆえに樋口監督は、山崎監督が新たなゴジラ映画を手掛けるという報（しら）せに「うれしかったですね」と思いを告白し「下北沢の話に戻りますけど、年齢で言うと1個上の先輩なんですけど、ほぼ同じ時期にこの世界に入っていますからね」としみじみ。

　一方の山崎監督は、デビュー作『ジュブナイル』（2000）の関係者向け試写を振り返り「試写が終わったあとに（興奮した）樋口さんがすごい顔で駆け寄ってきたんです。でも変質者だと思われて、まわりのスタッフから止められてたことがあった。ものすごい喜んで来てくれたのに」と苦笑。「俺は、良かったよと言いたかっただけなんですけどね」と情に厚い樋口監督の言葉に、山崎監督は「うれしかったですよ」と感謝していた。

　イベントでは『ゴジラ-1.0』について「誰も、俺に新作を見せてくれないんですよ」と樋口監督がボヤく一幕も。ただ、予告編について触れた樋口監督は「（ゴジラの）足がかっこいいなと思いましたね。足のツメって難しいんですよ。邪魔くさいし引っかかっちゃう。だから、だんだん形として主張がなくなっていくんです。でも、3DCGだからというのもあるけど、好きにできるじゃないですか。そうした時に、足の指の表情が、今までのどのゴジラにも似てないなと。いいなと思いましたね」と語っていた。

　その後はお互いの好きなゴジラ映画や、初体験のゴジラ、そして初代『ゴジラ』のヒロインを演じた河内桃子や、難易度の高いアナログな合成技術など、その話題はどんどんとディープな方向に。両監督のユニークな視点に、会場内は笑いが絶えなかった。そして、山崎監督からあらためて、『シン・ゴジラ』について「プレッシャーはあった？」と尋ねられた樋口監督は、「あったのかな……？」と思案顔。だが、山崎監督が「『シン・ゴジラ』をやる直前に（樋口監督に）会った時は、行くも地獄、帰りも地獄って言ってましたよ」と告白して会場はさらなる笑いに包まれた。

　そこで「怪獣が出てくるエンタメ映画として、越えちゃいけない一線があると思うんです。でも何が難しいかって、災いの話だったし。『シン・ゴジラ』で人の死を近くで見せるようなシーンを撮ったことがあったんですけど、そこもカットしましたからね」という樋口監督に、この日の司会を務めた笠井信輔アナウンサーは「『ガメラ3　邪神＜イリス＞覚醒』は？　渋谷でけっこう（人の死が）……」とツッコミが。「それはいいんですよ」と返した樋口監督だったが、山崎監督は「僕も『ガメラ3』を基準に考えています。そういう前例があるから大丈夫だと。スタッフから、大丈夫？　と聞かれた時は、『ガメラ3』って知ってる？　と言います」と付け加えた。

　トークに花を咲かせるうちに、『ゴジラ-1.0』への期待が高まっている様子の樋口監督は「ある意味で、期待もあるけど、嫉妬心もあって。いいな、ゴジラできていいなって」と一言。大変な苦労をしたはずなのに、という声にも「喉元過ぎればというやつで。暴れているゴジラを観ると、うわ、ずるい。その手があったか、と思ってしまう」と笑みを浮かべる。山崎監督も「偉大な先人たちが作った『ゴジラ』の新作ということで、プレッシャーはありますけど、なかなかのものができたと思います。楽しんでいただければ」と新作に自信を見せた。

　特集上映会「『ゴジラ-1.0』公開記念 山崎貴セレクション ゴジラ上映会」のために山崎監督が選んだ『ゴジラ』映画は全部で4作。9月は、この日に上映されたオリジナルのリマスター版となる『ゴジラ』と、オールスター怪獣がキングギドラに挑む『三大怪獣　地球最大の決戦』（9月29日上映）の2本。10月の上映作品は後日発表予定。（取材・文：壬生智裕）