「どうする家康」ダチョウ倶楽部ネタはアドリブ!ムロツヨシ、松本潤との思い出のシーン明かす
松本潤主演の大河ドラマ「どうする家康」(毎週日曜夜8時~NHK総合ほか)で豊臣秀吉(羽柴秀吉)を演じたムロツヨシが、共に“三英傑”を演じた徳川家康役の松本、織田信長役の岡田准一との共演や、6月11日放送の第22回で繰り広げた“ダチョウ倶楽部ネタ”のアドリブの裏側を明かした。
ドラマの公式サイトで「戦国乱世を最も楽しんだ男」というキャッチコピーがつけられている秀吉。「リーガルハイ」『コンフィデンスマンJP』シリーズなどの古沢良太が脚本を務めた本作で、秀吉は“欲望のかたまり”として描かれた。明るく人たらしな性格で早口が特徴。信長に仕えていたころは腰が低く、人前で足蹴にされても笑顔を絶やさない“道化”に徹していた秀吉だが、「本能寺の変」で信長が討ち死にするなり天下を取るべく動き出し、関白となったことで信長をも超える存在に。何を考えているのかわからない得体の知れなさが注目を浴び、“サイコパス”とSNSなどには戦慄の声が上がっていた。
ムロは、本作で描かれた秀吉と信長、家康の関係を「いびつではあるけども三角形がずっとあった」と表現する。
「信長様というのは演じる岡田さんあってこそですけど、やはりカリスマ、絶対的存在。そこは説得力も含め凄かったですね。大きな背中でした。秀吉がついていきたい、この人のためなら死ねる、この人の代わりなどできない、この人のためなら何でもできると思える。少なくとも秀吉は確実に信頼を置いている。第27回で秀吉が弟の秀長(佐藤隆太)に『(信長が)そろそろおらんくなってくれんかしゃん』と漏らすシーンがありますけど、それはあまりに信長様の存在が大きすぎて時代が動かないだろうという意味だったと思います。すべての時代をこの人が背負っていくと考えているし、この人のそばにいることが幸せ、生きがいでもあった」
一方、家康については信長が存命だったころと亡きあとで変化があったとみている。「その(信長が存命だった)ころの家康と秀吉の関係はライバル関係だと思います。友情もないですね。(秀吉が亡くなる)第39回で秀吉の『わしはおめえさんが好きだったに』というようなセリフがあるんですけど、信長が誰よりも認めているのは秀吉ではなく家康という描かれ方をしているので、秀吉のそこに対する嫉妬はあれど、嫉妬を超える認める力があったと思います。嫉妬だけだったら天下は取れていないと思うので。認める力があるからこそ、小牧・長久手の戦いで一度家康に負けても、天下を取るまでの計算のスピードが速かった。プライドを捨てることができる人が、さらに先を読む能力や自己分析能力が高かったら、とてつもなく強いと思うんです。恐ろしいぐらいに。秀吉にとって家康はライバルでありながら認めてもいる。だけど家康は秀吉を嫌っていて、そこまでは読めていなかったと思う」
撮影現場では松本、岡田にイジられ、ムードメーカーでもあったムロ。本作にはアドリブも多々取り入れられているが、ムロはどうだったのか。すると、第22回「設楽原の戦い」でダチョウ倶楽部の定番ギャグ「どうぞどうぞ」を取り入れたシーンを挙げた。本家は、気が進まないチャレンジに対し、寺門ジモンと肥後克広が「俺が」「俺が」と手を挙げ、一番最後に手を挙げた上島竜兵が引き受けるハメになるというもの。「どうする家康」では、徳川・織田連合軍が長篠城の西・設楽原で武田軍と対峙した際、リスクを伴う策を誰が引き受けるかという話になると、柴田勝家(吉原光夫)が「柴田勝家にお申し付けくだされ」と口火を切ると佐久間信盛(立川談春)、秀吉も“わたしに”“わたしに”と続き、しばし間を置いたのち家康が押されるように「我ら……徳川勢に」とつぶやき、勝家、秀吉、信盛、信長が一斉に「どうぞ」とばかりに家康に手を向ける……というシーンだった。
「僕は尾張ことばをしゃべらなきゃいけなかったので今回はあまりアドリブができなかったんですけど、“ダチョウ倶楽部ネタ”はそうです。台本を全うするやり方と、あえてダチョウさんに近づけるのか。どっちにするのかと僕が質問させてもらって、僕は後者がいいと。最後に松本さんが『クソッ!』って言ったんですけど、あれは松本さんのアドリブです(笑)。あの場面は思い出に残っていますね」と振り返るムロ。さらに、岡田とのシーンではこんなエピソードも。
「アドリブじゃないんですけど、岡田さんはシーンによってはあえて決めないで臨んでいて、その緊張感を楽しんでいるってご本人がおっしゃっていたこともありますけど、何が出てくるかわからない信長様でしたので、僕もワクワクしました。ただ、“ムロさん、蹴るシーンではここを蹴りますから気をつけてくださいね”って親切にアドバイスしてくれたかと思ったら、全く違うところを蹴ってきたりしますから非常に恐ろしい男でございます(涙)! 僕の身体能力を信じてくれたという風に解釈していますが……」
「しっかり嫌な奴、敵になって終われたらいいなと思いながら演じさせていただきました」というムロ。本作では秀吉が家康にとって苦手な存在として描かれていたが、ムロは松本をどう見ていたのか。
「まず松本さんの魅力と聞かれてすぐに出てくるのがとてつもなく強い責任感。一つの役を演じるだけでなくこの作品を背負う責任感は誰よりも強い。役者以外のお仕事でもご一緒させていただいたことはありますけど、そことはまた違う背負い方と言いますか、いろんな人の思いを背負う形というのを見させていただきました。ある意味、そこまでもたなくてもいいのにと思うぐらいもってしまうところが魅力といいますか、それがかっこよく見えますし、役者としてお芝居に悩んでいる姿も松本さんらしい魅力。ほかのお仕事と違って、しっかり弱音を吐いてくれる。そこは人として、役者としてすごく素敵なところだと思います」
10月15日放送の第39回「太閤、くたばる」では秀吉がついに最期を迎えたが、ムロは「家康と秀吉にしかわからない、天下一統というものを成し遂げてしまう者同士の会話をできたのが、とてつもない財産になっています」と感慨深げ。映画やドラマにおいては、時に演者同士で話し合うことを避けてきたというムロだが、本シーンでは松本から事前の話し合いを提案されたという。
「松本さんから“合わせたい”と言ってくださいました。第37回までは敵対関係にあったので打ち合わせは必要なかったと思うんですけど、第39回では二人がわかり合える関係になっていて、台本を超えなければいけないところがたくさんあったので、意見を出し合うことはしました。第39回の家康と秀吉の最後の会話で、秀吉が『うまくやりなされや』って言うんですけど、家康が天下人になることは読めていて、彼が天下を取った後、本当に戦のない世を作れるのか、というのは楽しみにしていたんじゃないかと思う」
取材会ではムロが時々ジョークを挟んで記者たちの緊張を解き、笑いが絶えなかったが、そんな「人をとりこにする」一面は秀吉とも重なる。ムロだからこそ演じられた恐ろしくもおかしみのある秀吉像は、大河ドラマの歴史にしっかりと刻まれることだろう。(編集部・石井百合子)