トニー・レオン、来年ドイツ映画に出演 ヨーロッパ進出へ意欲
第36回東京国際映画祭
俳優のトニー・レオンが26日、第36回東京国際映画祭で行われた映画『2046』(2004)のマスタークラスに出席。同作のメガホンを取り、20年来タッグを組んできたウォン・カーウァイ監督との撮影秘話などを語りながら、来年ドイツ映画に出演することを明らかにした。
『2046』はカーウァイ監督が描く近未来のラブストーリー。日本から木村拓哉が出演したほか、コン・リー、フェイ・ウォン、チャン・ツィイーら錚々たるアジアの人気俳優が出演して話題を呼んだ。登壇したトニーは「こんにちわ、トニーです。東京国際映画祭に来ることができて光栄です。本当にお久しぶりですね」と日本語を交えてあいさつ。
『2046』はトニー自身が「上映してほしい」とリクエストして上映された作品だといい、「監督と一緒に撮った中では特別な作品。もう一本の映画『花様年華』(2000)の続編のような作品で、私は『花様年華』のチャウと同一人物を演じていますが、監督からは前回とは違う人として演じてほしいと要求されていました」と撮影中の裏話を紹介する。
トニーは「監督は一本の映画を撮る時にすごく時間をかけるんです。だから同じ人物を何年にも渡って演じるのは大変でした」と述べ、久しぶりにチャウを演じるにあたって、監督に「今回のチャウにはちょっとヒゲをください」とリクエストしたことを紹介。「監督の返事は『ダメです』でした」と振り返るも、その主張を押し通してチャウのヒゲを認めてもらったことを回顧した。
後日カンヌ映画祭のパーティーの際、監督から「正解でした。あなたにはヒゲがある方がよかった」と言われたことを嬉しそうに述べ、「役者にとっては演技をする時に小さなこと、小さなきっかけが何かあった方が、それだけでも役の中に入りやすくなるんです」とヒゲ姿にこだわりがあった理由を明かした。
トニーは自身の演技に転機を与えてくれた監督が、カーウァイやホウ・シャオシェンだったとも告白。カーウァイ監督と初めて出会った時は「自分の演技の壁にぶつかっていた時だった」と振り返り、「自分の演技は進歩がないと悩んでいた時期でした。出演した映画は『欲望の翼』(1990)で、共演はマギー・チャンでした。監督は僕の演技をずっと見ていたのか、僕のよくないところをわかっていて、マギーにはすぐにOKを出すけど、僕の時はなかなかOKを出しませんでした」とカーウァイ監督とのやり取りを紹介。
また、カーウァイ監督がトニーの作りこんだ演技を嫌がっていたといい「僕の作った演技はいらないのでそれをバラして潰していったようなんです。でも完成したものを見た時に自分の演技はこうなるんだって。監督は役者のいいところを見つけるのが上手い人なんだなって感心しました。それでこの監督とずっとやっていこうと決心したんです」とカーウァイ監督の作品に出続ける理由を説明。「監督と20年仕事をしていて、この20年は私にとって(ホウ・シャオシェン以来)、2度目の演技の訓練期間だった気がします」と述べた。
今後は「いろんな国、いろんな地域の異なるチームで仕事をしたい」と話すトニー。「これからはヨーロッパ映画にも出てみたい」と述べ、「実は来年ドイツの映画に出ることが決まりました」とそのヨーロッパ映画への出演が決まったことも報告。「今8か月間の準備期間をもらって色々準備をしている最中です」と嬉しそうに話していた。(取材・文:名鹿祥史)
「第36回東京国際映画祭」は10月23日~11月1日まで日比谷・有楽町・丸の内・銀座地区で開催