生田絵梨花、絶対に負けられない相手とは?
1923年に誕生してから100年を迎えるウォルト・ディズニー・カンパニーが、集大成と称して“願いの力”を込めた記念作品『ウィッシュ』(公開中)。17歳のヒロイン・アーシャの日本版声優を担当しているのが、幼少期からディズニーのヒロインを夢見ていたという生田絵梨花。2021年に卒業した乃木坂46の在籍時から、その圧倒的な歌唱力と表現力で数多くのミュージカルで実力を発揮してきた。そして今回、ディズニー100周年という記念すべき作品で、“願いの力”を見事に歌と声で表現した。そんな生田が、夢を叶えるために大切にしていることや、絶対負けらない戦いについて語った。
押しつぶされそうになっても「一人じゃない」
ドイツで生まれたという生田は、記憶にはないものの、0歳のときにすでにパリのディズニーランドに足を運んでいたと同作のイベントで話していた。そこからヒロインの格好をして遊んだりするうちに、いつか「ディズニー・ヒロインに」という思いを胸に抱いて多感な時期を過ごす。
そんな夢が結実した際は「ずっと夢でもあり、憧れだったので、当初はうれしすぎてフワフワしていた」というが、収録やプロモーション活動で劇中歌「ウィッシュ~この願い~」を歌うことで「現実なんだ」と実感。その後は、幼少期にディズニー作品から夢をもらってきたエネルギーを、しっかり繋いでいければ……という使命感が湧いてきたという。
「ディズニー100周年記念作品」「願いの力を描いてきたディズニーの集大成」などというキャッチコピーがつく本作。生田は「どうしたってプレッシャーはあるし、緊張もします」と相当な覚悟が必要な仕事だという自覚はあった。しかし「自分の心ががんじがらめになってしまいリラックスできないと、アーシャの豊かな心の表現の幅が狭まってしまう」と肩の力を抜くことを意識した。
大切にしたのは「一人で作っているわけじゃない」という思い。不安や心配はあって当然。「うまくいかないかいことも含めて人間なのだから……」という思いで「うまくやろう、良く見せよう」ではなく「思い」を大切にした。
コロナ禍で変わった夢への考え方
ディズニー・ヒロインという一つの大きな夢を叶えた生田。願いを現実にするために、大切にしたのは夢を何か(誰か)と共有すること。「私も神社でお参りや、星に願いをかけることもあるのですが『お願いします』と言わないようにしています」と控え目につぶやくと「この作品のメッセージにもありますが、夢を叶えるために動くのはいつも自分自身。選択するのも自分なんです」と語る。
では、どんなことをするのだろうかーー。生田は「信頼する人でもいいのですが、『こういう夢があるんだよ』と聞いてもらうことって、わたしにとっては大事なことなんです」と述べると「一人だと自信がなくなったり、挫折したりしますが、誰かが見守ってくれているんだと信じることで、何度でも立ち上がれると思うんです」と理由を説明してくれた。
生田がこうした考えになったのは、コロナ禍が大きかったという。「あの時期は、どれだけ願っても叶わないことが多かった。自分のなかでときめいていたものが失われたり、諦めたりすることを覚えてしまった人がとても多かったと思うんです。そこでわたしもどうやったら気持ちが折れずに夢に向かっていけるんだろうと思ったとき、こうした考えになりました」。
ネガティブな気持ちとの対話
生田が声を吹き込んだアーシャは、祖父・サビーノの願いを叶えるために、国王・マグニフィコと対面する。マグニフィコ王の日本版声優を務めた福山雅治とは、劇中デュエットソングを披露する。
「一緒に収録することができなかったのですが、福山さんがどうやってハーモニーを重ねるか、どういう声の距離感にしていくかということを、すごく繊細に調整してくださったと聞いて感動しました」。
しかし、アーシャはマグニフィコ王の裏の顔を知り、皆の夢を取り返そうと、国王という強大な力に戦いを挑む。生田にとって「絶対負けられない」と思う存在はーー。
生田は「とかく敵って自分の脳内で作って、自分にプレッシャーをかけたり、思ってもいないことを想像しちゃったりするんですよね」と切り出すと「結局は自分の気持ちの弱さが最大の敵なんじゃないかなと思うんです」と回答。特に人前に立つとき、ステージに立つとき、カメラの前に立つとき……自分自身の「緊張」や「弱気」な心に、「絶対に負けないように」戦っているという。
経験を重ねるにつれて、自分の心には打ち勝てるようになったのか。生田は「何も知らなかったときの方が、怖いもの知らずで『行っちゃえ!』と思えていたんです」とデビュー当時を振り返ると「でも経験や失敗を重ねるごとに怖さは大きくなっていきました。いまは打ち勝つというより、そのネガティブな気持ちと対話できるようになってきているような気がします」と現状について語った。
「ネガティブな感情は絶対なくならないだろうし、この先、うまくいくことばかりじゃないと思う」と語った生田。そんなとき、今回アーシャと一緒に過ごしてきた時間を「きっと思い出すと思う」と貴重な経験になったことを明かすと「人生のパートナーができたみたいな感じなので、アーシャにエネルギーをもらいながら、これから走っていきたいです」と抱負を述べる。
最後に生田は「アーシャを演じたからには、これからの人生諦めるわけにはいかないですね」と目を輝かせながら語った。(取材・文:磯部正和)
映画『ウィッシュ』は公開中