綾辻行人「十角館の殺人」実写映像化決定 原作者も驚きの企画実現「どうやって実写化するの?」
推理作家・綾辻行人の「館」シリーズ1作目にして、日本ミステリー界に多大な影響を与えたデビュー作「十角館の殺人」(講談社文庫)が実写映像化され、2024年3月22日からHuluオリジナルとして独占配信されることが決定、ティザービジュアルと特報映像が公開された。
「十角館の殺人」は、十角形の外観を持つ館が存在する無人島で起こる、連続殺人を扱ったミステリー。巧妙な叙述トリックで読者をその世界に引き込みながら、ある一行で事件の真相を描く大胆な手法は衝撃をもって迎えられ、その特異性から「映像化は不可能」と言われ続けてきた。
その不可能に挑んだ監督は、有栖川有栖と綾辻の共同原作によるドラマ「安楽椅子探偵」シリーズも手掛けた内片輝。親交のあった綾辻へ、自ら本作の映像化を打診したという内片監督は、20年間夢見たという映像化プロジェクトを実現させた。脚本は「半沢直樹」「下町ロケット」「陸王」「家政夫のミタゾノ」など、重厚な人間ドラマにサスペンス、ミステリー、人情劇まで幅広く話題作を手がけてきた八津弘幸が担当する。
原作者の綾辻も「どうやって実写化するの? できるの?」と疑念を抱いたという映像化。内片監督の企画とあって「内片さんが『やりたい』と云うのだから、何か彼なりの(実写化のための)アイディアがあるのだろうな、とは思いました」といいながらも「アニメならまだしも、実写ではとうてい無理だろう、と僕自身も考えていたので、今になって本気でそれにチャレンジしようという企画が成立してしまったのは驚きでした」と告白する。
さらに「原作をすでに読んでおられる人にとっては、気になるのはやはり、『映像化不可能』であるはずのメインの仕掛けをどうやって『可能』にしているか、という点でしょうから、まずはその興味でご覧ください。ですが、その試みが成功しているか否かについては、原作を読まずに観た人の感想を伺うしかないわけです。そのあたり、なかなか向き合い方がむずかしい作品かもしれませんね」と続けた綾辻は「ともあれ、内片監督渾身の作であることは間違いないはずです。どんな仕上がりになるのか、僕も大いに楽しみにしています」と期待を寄せている。
そんな念願の企画について「自分自身の演出家としての成長が必要不可欠。結果、20年間もの月日が必要でした……。感慨深いです」という内片監督は、本作について「『“あの1行”』に至るまでをいかにして映像で伝えるか、の部分」を意識したと証言。綾辻から「傑作にしてください」という、重い言葉を送られたというが「鳥肌が立ちます。一気に観たくなります。必ず2回目も観たくなります。楽しみにしていてください!」と自信のコメント。
また、脚本の八津は「この作品の映像化がいかに難しいかはファンの皆さんが誰よりもわかっていることと思います。そのチャレンジがうまくいったかどうか、ぜひ皆さんの目で確かめて頂きたいのと同時に、それ以外にも、クセのある登場人物たちや、十角館の異様なビジュアルなど、本格ミステリーならではのこの作品の魅力を存分に味わって頂けたらと思います」と原作ファンに呼びかけている。
特報映像は「お前たちが殺した千織は、私の娘だった」という謎に満ちた手紙、原作のイメージそのままに実写としてその姿を現す十角館の館内、そして島にやってきた登場人物たちの姿が映し出されており、“あの1行”の衝撃をどう映像化するのか、期待が高まる仕上がりとなっている。
原作者・綾辻行人のコメント全文は以下の通り。(編集部・入倉功一)
綾辻行人
・内片輝監督から『十角館の殺人』を実写化したいと言われた時の感想。
どうやって実写化するの? できるの? という疑念を、やはりまず抱かざるをえませんでした。ただ、内片監督はかつて、非常にマニアックかつアクロバティックな犯人当てドラマ「安楽椅子探偵」シリーズ(有栖川有栖さんと綾辻の共同原作による深夜枠のTVドラマ)を計7作、撮ってくれた人です。その内片さんが「やりたい」と云うのだから、何か彼なりの(実写化のための)アイディアがあるのだろうな、とは思いました。
・1987年9月から36年の時を経て、今この時代に映像化されることについての感想。現在も「館」シリーズを書き続けている綾辻行人さんにとって、デビュー作でもある『十角館の殺人』の存在について。
「映像化不可能」と云われつづけてきた小説です。アニメならまだしも、実写ではとうてい無理だろう、と僕自身も考えていたので、今になって本気でそれにチャレンジしようという企画が成立してしまったのは驚きでした。
36年前のデビュー作が時代・世代を超えて今なお多くの人に読まれつづけている、というのは本当に幸せなことです。そんな未来など微塵も想像せずに書いた『十角館』でしたが、ここまで来ると「偉いねえ、きみ」と讃えてあげたい気分です。
・先日発表された、タイム誌が選ぶ【史上最高のミステリー&スリラー本】オールタイム・ベスト100に『十角館の殺人』が選出された際のお気持ち。また、本作のどういった部分が選ばれたポイントについて。
ひたすら嬉しく、夢のように感じました。『十角館』よりも優れた本邦のミステリーはいくらでもあるので、何だか申しわけないような気も。ただ、この作品が結果として、当時の日本のミステリーシーンに画期的な変化をもたらすきっかけになったことは確かなので、選出にあたってはおそらく、そういった歴史的な位置づけも相応に勘案されたのだろうと想像します。
・実写化を楽しみにしているファンの皆さまへのメッセージ。
原作をすでに読んでおられる人にとっては、気になるのはやはり、「映像化不可能」であるはずのメインの仕掛けをどうやって「可能」にしているか、という点でしょうから、まずはその興味でご覧ください。ですが、その試みが成功しているか否かについては、原作を読まずに観た人の感想を伺うしかないわけです。そのあたり、なかなか向き合い方がむずかしい作品かもしれませんね。ともあれ、内片監督渾身の作であることは間違いないはずです。どんな仕上がりになるのか、僕も大いに楽しみにしています。
※12月21日更新