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2023年後半の成功作・失敗作

2023年はなんといっても「バーベンハイマー」の年! - 『バービー』と『オッペンハイマー』
2023年はなんといっても「バーベンハイマー」の年! - 『バービー』と『オッペンハイマー』 - Warner Bros. / Universal Pictures / Photofest / ゲッティ イメージズ

 2023年もいよいよ終わり。今年後半、ハリウッド最大の出来事は、俳優と脚本家のダブルストライキだった。俳優が出演作のプロモーション活動をできなかったため、予想されたほど稼げなかった作品がある一方、そんな状況にもかかわらず見事スマッシュヒットした作品もある。この半年の成績表を見てみよう。(文:猿渡由紀)(数字は Box Office Mojo 調べ、1ドル145円計算)

【画像】可愛すぎると話題!実写バービー役のマーゴット・ロビー

 2023年は、なんといっても「バーベンハイマー」の年。7月21日に、クリストファー・ノーラン監督の『オッペンハイマー』と、マーゴット・ロビー主演の『バービー』が公開されることから、この2本を同じ週末に観に行こうと、ソーシャルメディアでお祭り騒ぎが起きたのだ。すごいのは、それが公開初週末だけの盛り上がりで終わらなかったこと。どちらの作品も批評家と観客の満足度が非常に高く、数字を伸ばし続けて、『バービー』は14億ドル(約2,030億円)、『オッペンハイマー』は9億5,000万ドル(約1,378億円)の世界興収を達成してしまった。とりわけ『オッペンハイマー』はお見事。上映時間3時間のR指定映画、しかもシリアスなテーマを持つ伝記映画で10億ドル弱も稼げるのは、ノーランくらいだろう。

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 『テイラー・スウィフト:THE ERAS TOUR』も特筆すべき。スウィフトのコンサートを収録したこの映画は、全世界で2億5,000万ドル(約363億円)を売り上げて、業界を驚かせた。スタジオを通さず、スウィフトが自分のスタッフを使って撮影、製作し、直接劇場チェーンと交渉して公開したこの映画でスウィフトはボロ儲け。彼女はビジネスの才能も豊かなようだ。

ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ
ホラー界の大ヒット作『ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ』 - (C) 2023 Universal Studios. All Rights Reserved.

 ほかには、低予算のホラーをヒットさせることで知られるジェイソン・ブラムが、『ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ』でまたもや手腕を発揮。人気のビデオゲームの映画化とあり、予算は2,000万ドル(約29億円)とブラムの基準では高かったが、世界興収は2億9,000万ドル(約421億円)弱で、見返りは十分だ。ホラーのジャンルではまた、A24が北米配給したオーストラリアの新人兄弟監督による予算450万ドル(約6億5,000万円)のホラー映画『TALK TO ME/トーク・トゥ・ミー』も、全世界で9,000万ドル(約131億円)を売り上げるスマッシュヒットとなった。

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 いよいよ年の瀬が迫ったクリスマスには、『カラーパープル』が1,800万ドル(約26億円)で絶好調デビュー。これはクリスマス公開作として、2009年の『シャーロック・ホームズ』に次ぐ史上2番目のオープニング成績だ。観客評価も「A」で、今後も成績を伸ばしていくと思われる。もうひとつ、『ゴジラ-1.0』にも触れておきたい。全く宣伝しなかったにもかかわらず、北米で4,000万ドル(約58億円)を売り上げたのは上等だ。

 さて、今度は残念だった作品。今年前半に続き、スーパーヒーロー映画の不振が目立った。2億2,000万ドル(約319億円)の予算をかけた『マーベルズ』の世界興収は2億500万ドル(約297億円)で、赤字。これはMCUの歴史で最低の成績でもある。DCの『ブルービートル』も1億400万ドル(約151億円)の予算に対し、世界興収はわずか1億2,900万ドル(約187億円)。日本での劇場公開もなくなってしまった。これらの作品については、ストライキで俳優が宣伝活動をできなかったことも理由に考えられなくはないが、ストライキが終了した後の公開で、主演のジェイソン・モモアがそれなりに宣伝を頑張った『アクアマン/失われた王国』も、ぱっとしない。一応首位デビューではあったものの、初日3日の北米興収は予想を下回る2,700万ドル(約39億円)にとどまっている。2018年の1作目は世界で11億ドル(約1,595億円)を売り上げ、DC映画最高のヒット作となったのだが、この続編はそこには到底辿り着けそうもない。

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 また、予算1億5,000万ドル(約218億円)にして世界興収1億1,700万ドル(約170億円)の『ホーンテッドマンション』、予算8,000万ドル(約116億円)で世界興収1億ドル(約145億円)止まりの『ザ・クリエイター/創造者』も、がっかりだった。この2作品は、俳優のストライキの影響をもろに受けている。『ウィッシュ』も、予算2億ドル(約290億円)にして現在までの世界興収は1億4,600万ドル(約212億円)にとどまっているが、遅れて公開された日本で年末年始に少し取り戻すかもしれない。

 失敗とは言えないが成功とも呼びづらい作品もある。たとえば『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』。世界興収は5億6,700万ドル(約822億円)で、一見悪くないものの、一つ前の『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』の7億9,100万ドル(約1,147億円)を下回る。それに、このシリーズ7作目はパンデミックの中で撮影され、何度も中断した結果、製作コストが2億9,000万ドル(約421億円)にまで膨らんだのが痛い。

 また、マーティン・スコセッシ監督、レオナルド・ディカプリオ主演の『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』。予算は2億ドル(約290億円)、現在までの世界興収は1億5,600万ドル(約226億円)という数字を見ると、赤字だ。しかし、この映画はAppleが全額出資し、パラマウント(日本は東和ピクチャーズ)は配給を委託されているだけなのである。“本業”を持っているAppleにとっては、この映画自体が自社広告のようなもの。オスカー戦線に確実にかかってきそうなだけに、この投資は十分意味があったと言えるかもしれない。

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