実写『ゴールデンカムイ』“不死身の杉元”と山崎賢人の共通点 監督が見た作品への献身
野田サトルの人気漫画を実写化する映画『ゴールデンカムイ』の久保茂昭監督が、俳優陣の役づくりを支えた撮影の裏側と共に、主人公・杉元佐一役に挑んだ山崎賢人（崎は正式には「たつさき」）と、相棒となる少女・アシリパ（リは小文字）を演じた山田杏奈の献身的な姿勢とキャラクターとの共通点を語った。
明治時代の北海道を舞台に、アイヌの埋蔵金をめぐる争奪戦を描く本作。“不死身の杉元”の異名を持つ日露戦争の英雄・杉元とアイヌの少女・アシリパが、24人の脱獄囚に刻まれた、金塊のありかを示す「刺青人皮（いれずみにんぴ）」をめぐって、歴戦の猛者を相手に戦いを繰り広げる。
杉元とアイヌの少女アシリパを中心に、個性豊かな脱獄囚や軍人たちが入り乱れる群像劇も魅力の本作。原作の“ガチファン”を自称する久保監督は、キャラクターについても自ら資料を作成し、俳優たちに渡していたという。
「漫画を自分でバラバラにして、各キャラクター別にまとめたノートを作成し、ト書きで登場人物の感情などを全て記して、本人に渡しました。もし役づくりで迷うことがあったら、これを見れば全部（感情などの）流れがわかるようになっているよと。キャラだけではなくて、アイヌ、動物、自然、料理といった項目もありましたが、特に分厚くなったのが“杉元ノート”でしたね」
「彼はどんな体つきをしているのかとか、体の傷痕の様子もアニメなどから引っ張ってきて、この期間までに肉体を作ってほしいとか、そういったことを全部オファーしたんです。山崎さんは体作りのエキスパートでもあるので、その点は本人の意見を反映しましたが、基本的に間に合わせてくれました」
『キングダム』シリーズでも主演を務める山崎は、アクションの達人でもあるが「確かに山崎さんはアクションスキルもすごいものを持っていますが、今回は、これまでと違う動きになるので、みっちりやってほしいと伝えました。出演が決まった当時は、その時に撮影していた役柄に合わせて、体が少し細かったのですが、そこから筋肉も10キロぐらいつけてくれて。見ていると、どんどん首が太くなっていくんですよ。約2か月のアクション練習に、兵士役なので軍事訓練も受けて銃器の扱いなども学んでもらいました。冒頭の二〇三高地のシーンも本当にハードな撮影でしたが、乗り切ってくれました」とその献身ぶりを明かす。
“不死身”の異名の通り、どんな状況からも生還し、襲いくる敵には容赦しない杉元。そんな力強いキャラクターに挑んだ山崎について、久保監督は「杉元と山崎さんは、純朴で優しいという共通点があると思います。原作に『自分のためだけならとっくに諦めてる。そもそもの始まりが人助けだ。』というセリフがあるように、彼の行動の始まりは人助けであったりする。そうした一面を芝居で表現することは、誰にでもできるわけではない。山崎さんには、そういう魅力があると思います」
また、相棒として杉元と金塊争奪戦に挑むアシリパを演じた山田も絶賛。アイヌの少女を演じるために、山育ちの体作りから、弓矢などの扱い、アイヌの文化、言葉の勉強などハードワークをこなしていたといい、久保監督は「原作は少女の設定ですが、もしこの先の物語も実写で描けるとなった場合、（成長を考えると）同じ人物が演じるのは難しくなる。そこで、年齢感を少し上げさせていただきました。ただ山田さんは、できるだけ原作のアシリパの雰囲気に近づこうと、自主的に体を絞ってくれたんです。衣装も原作のようにダボっと着ているイメージにしたいと、小柄に見えるように頑張ってくれました」と舌を巻く。
さらに「山田さんは何かを背負ってる役をたくさん演じられていて、そういう（背景を感じさせる）瞳を持っている」という久保監督は「そこがアシリパに通じるものがあるし、表情によってすごく美しい瞬間があったり、逆にちょっと幼い愛らしい瞬間もあって、アシリパを実写化するうえで、すごくぴったりというか。撮っていて、本当にゾクゾクしましたね」と撮影を振り返っていた。（編集部・入倉功一）