クリストファー・ノーラン、『TENET テネット』は全てを理解できるようには作っていない
クリストファー・ノーラン監督が米CBSのトーク番組「ザ・レイト・ショー・ウィズ・スティーヴン・コルベア」に出演し、監督作『TENET テネット』はそもそも観客が全てを理解することを意図しては作っていないと語った。
逆行する時間の中で展開するスパイアクション『TENET テネット』は、その複雑さによってさまざまな分析や議論が行われるなど人気を博した一方、全然理解できないとさじを投げた人もいる。司会のスティーヴン・コルベアに「あなたの映画は理解するものなのか? それとも体感するものなのか?」と問われたノーラン監督は、「僕の映画を体感すれば、それが“理解”することになると思う。僕は強くそう思う」と回答。
「過去の僕の物語にフラストレーションを感じた人たちは、少しポイントがずれていると思う。映画は、解き明かさなくてはならない難問ではない。映画は、体感すべきことなんだ──望ましいのは映画館でだけど、もちろん自宅でも。願わくば、中断することなしにね。“体感する”というのがポイントだ。もし人々がそれについて話すことに興味を持って深掘りしていったり、そのアイデアが共感を呼んだりするならそれは素晴らしいボーナスだけど、僕にとっては、観客と一緒に映画を観るという感情的な体験が全てなんだ」
『TENET テネット』について、全て、あるいは一部理解できないという人々もいると畳みかけられたノーラン監督は、「観客は『TENET テネット』の全てを理解する必要はない。全てが理解できるようになっているわけではないんだ」とコメント。『TENET テネット』を真に楽しむには細かいことにはとらわれずに身を委ね、主人公たちの旅路にただ没入することが肝心なようだ。
ノーラン監督の新作『オッペンハイマー』は“原爆の父”と呼ばれる米物理学者ロバート・オッペンハイマーの姿を描いたドラマで、第96回アカデミー賞で作品賞、監督賞など最多13部門ノミネートを果たしている。人類最初の核実験「トリニティ実験」のシーンを含めCGショットゼロで作り上げるなど、圧倒的な劇場体験にこだわって作られた同作は世界で大ヒットを記録。日本では3月29日に公開される。(編集部・市川遥)