『オッペンハイマー』アインシュタインを演じたのは?『戦メリ』でロレンス役
“原爆の父”と呼ばれた理論物理学者J・ロバート・オッペンハイマーを描くクリストファー・ノーラン監督作『オッペンハイマー』(全国公開中)では、主演のキリアン・マーフィをはじめ、ロバート・ダウニー・Jrらオールスターキャストが実在した人物を演じている。そのなかでも重要な役割を果たす登場人物の一人、ノーベル賞受賞物理学者のアルベルト・アインシュタインを演じているのが、スコットランド出身の俳優トム・コンティだ。
60年以上に及ぶキャリアを誇り、1979 年に舞台「この生命誰のもの」でトニー賞を受賞し、1983年の映画『ルーベン、ルーベン(原題) / Reuben, Reuben』でアカデミー賞主演男優賞にノミネートされているコンティ。大島渚監督の『戦場のメリークリスマス』(1983)で、ビートたけし演じる軍曹ハラと奇妙な友情でつながるジョン・ロレンスを演じたことでも知られる。
ノーラン監督は、『ダークナイト ライジング』に地下牢獄「奈落」 の囚人として出演していたコンティをアインシュタイン役にキャスティング。『オッペンハイマー』における登場シーンは長くはないが、強烈な印象を残す演技はもちろん、そのビジュアルにSNSでは「そっくり」という声が寄せられている。
オフィシャルインタビューでコンティは、アインシュタインのようなアイコンを演じようと思ったらどこから始めるかと聞かれ「髪の毛と髭を生やすことだね」と回答。「髭を生やすのは嫌なもんだね。しかも髭を生やすことにおいてアインシュタインはミニマリストじゃなかったんだ。スープもスパゲッティも食べられないし。スープとスパゲッティがなかったら命は縮むんだよ」とジョークを飛ばす。
また、アインシュタインのアクセントにもこだわり「音声学的に重要なんだ。幸運なことに、僕が良く知っている音なんだ。ヨーロッパにいたことがあって、彼のような喋り方をする人と一緒に育ったからね。もちろん知ってるのはアクセントだけ。物理学のほう? それはそんなに詳しくない」と証言。
同時に本作の物語については「恐ろしいストーリーだ。私の年代の人間は皆原爆の製造について知っている。でもその実行に伴う政治の狡猾なやり口や、オッペンハイマーがその後どうなったかをみんなが知っているわけじゃない。奇妙な状況だよね。政府はオッペンハイマーがアメリカを救ったことで彼を許せないんだから。彼は奴らを救ってやったのに、彼らは感謝という手段を用いて彼を滅ぼそうとしたんだ」と真摯(しんし)に語っている。(編集部・入倉功一)