『ガンダムSEED FREEDOM』セカンドキービジュアル作画秘話 マイティーストライクフリーダムの翼に込めたこだわり
『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』の大ヒットを記念して公開されたセカンドキービジュアルを手がけた重田智(メカニカルアニメーションディレクター)がインタビューに応じ、テレビアニメ『機動戦士ガンダムSEED』に対するオマージュや、マイティーストライクフリーダムガンダムの翼に対するこだわりといった作画秘話を明かした。(以下、映画のネタバレを一部含みます)
【画像】新たなフリーダム降臨!『ガンダムSEED FREEDOM』新カット
セカンドキービジュアルには、劇場公開前までは情報が伏せられていたモビルスーツ(MS)が集結している。中央には実剣「フツノミタマ」とビームサーベルを構えるマイティーストライクフリーダムガンダム、イラスト上部にはマイティーストライクフリーダムと激突するブラックナイトスコード カルラが大きく描かれ、左右にはデスティニーガンダムSpec II 、インフィニットジャスティスガンダム弐式といった物語の後半で活躍する機体が配置されている。
重田によると、マイティーストライクフリーダムとカルラの決戦シーンを描くことは発注の段階から決まっていたという。「劇場公開前はネタバレになってしまうので、以前のビジュアルではライジングフリーダムとイモータルジャスティスしか載せられないということでした。劇場公開が始まってからの提出になるセカンドビジュアルなので、これまで秘密にしていた機体を出したいということが1つの理由だと思います」
監督の福田己津央からは、マイティーストライクフリーダムとカルラの最終決戦は「一撃で決まる」と事前に聞かされていた。決戦シーンを描くことになった重田は、イメージを膨らませることに苦労したという。
「本編を切り抜いたような画(場面写真)を描くだけでは、面白くないんですよね。自分としてはこういった版権作業で描く時に、機械的な作業をしてしまうと作画の為のテンションが上がらず嫌なんですね。テンションを上げていくためにも、必要最低限の項目(MSの種別等)を守りつつ、必ずしも本編内容に厳密に合わせるわけではなく、キービジュアルとしての引きの強い絵面になるシチュエーションを選んで、本編とは違うカメラアングルでレイアウトをとるようにしています。例えば本編に合わせてマイティーストライクフリーダムをしっかりと見せるようにしようとすると、カルラがカメラ手前で背中向きになってしまう。本編の場面写真のように見せたい気持ちはわかるのですが、キービジュアルはキービジュアルとしての印象強さがなければいけないと思っているんですね」
そこで重田が閃いたアイデアは、テレビアニメ『機動戦士ガンダムSEED』放送当時に制作されたキービジュアルへのオマージュだ。「決闘・暴風・電撃・盾・攻撃 五機のガンダム現る!!」というキャッチコピーと共に、エールストライクガンダムとイージスガンダムが描かれていた。
「今回の『FREEDOM』が完結編とするなら、『SEED』スタート時に自分で描いたキービジュアルのオマージュでSEEDシリーズのスタートとラストで対になる様にしてはどうかと思いました。対決シーンというよりはイメージシーンに近いですね。イージスの位置には、ラスボス的なイメージでカルラを、手前のストライクの位置にマイティーストライクフリーダムを配置して、印象的な刀を斜めに構えるようにして、レイアウトを決め込んでいきました」
重田は作画のこだわりとして、マイティーストライクフリーダムの“翼の展開具合”を挙げた。「ディフェンダーのウイングを大きく展開して、作中のように多くの種類のエフェクトをのせると下絵のフリーダムが見えずらくなるので、そこはあえて省略しています。設定では、ディフェンダーの翼はキービジュアルのようには展開しないんですよ。アニメーション上の演出として、ディフェンダーの白のウイングと黄金の粒子を放出するシーンも込みで、ケレン味を加えたくて絵的に決まりの良いバランスで展開させています。『SEED』の『舞い降りる剣』でのフリーダムのウイング展開も同様の考え方で展開させています」
MSのみならず、月面にはミレニアムやエターナル、敵の巨大戦艦といった艦船類も描かれているなど、細部まで注目すべき点があるセカンドキービジュアル。重田は「キービジュアルは、アニメーションの動画と違ってスチールの静止画なので、じっくりとした鑑賞に堪えられる物だと思うんです。かなり意図してキービジュアルならではのシチュエーションで情報を盛り込んでいますので、謎解きではないですが、飽きる程鑑賞していろんな発見をしていただけたら嬉しいですね」とファンに向けてアピールした。(取材・文:編集部・倉本拓弥)
『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』全国公開中