「岸辺露伴」密漁海岸もほぼCGなし アナログにこだわるワケ
「ジョジョの奇妙な冒険」シリーズの漫画家・荒木飛呂彦の原作を高橋一生主演で実写化したNHKドラマ「岸辺露伴は動かない」の新作エピソード「密漁海岸」(5月5日午後1:00~2:00・BSP4Kで先行放送、5月10日よる10:00~11:00・NHK総合で放送)の試写会・出演者会見が22日、渋谷のNHK放送センターで行われ、主演の高橋をはじめ共演の飯豊まりえ、脚本・演出の渡辺一貴、制作統括の土橋圭介が登壇。高橋と渡辺監督が、ほぼCGを用いていないという本作の裏側を語った。
本シリーズは「ジョジョの奇妙な冒険」のスピンオフ漫画である「岸辺露伴は動かない」を原作のメインとし、2020年から2022年にかけて3シーズンにわたって計8エピソードを放送。高橋演じる相手を本にして記憶を読む能力を持つ漫画家の岸辺露伴が、担当編集の泉京香(飯豊)と共に奇怪な事件に遭遇していくストーリーで、昨年5月には映画版『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』も公開された。
ドラマシリーズの9作目のエピソードとなる「密漁海岸」は原作ファンの間でも人気の高いエピソード。「ようやく5年目にして手が届いた」という渡辺監督だが、なぜ5年かかったのか。
「ドラマにする場合、「岸辺露伴は動かない」を知らない方もいらっしゃる中で、いきなりアワビだとかハイブローなネタで喜んでもらえるのかどうかみたいなところで、最初は遠慮させていただいていました。あとは造形や表現の部分でどれだけできるのかっていうのは最初は未知数だったんですけれども4年間、映画を含めてやっていく中でいろいろとトライしてきたものっていうのが今回の「密漁海岸」の特殊造形だったり表現の中に入っていて。多分1年目、2年目だったら思いつかなかった表現というのがいっぱいあって、やはりここまで積み重ねてきたから“これできるかもね”っていう手応えっていうのができてきたっていうところはあります」
「密漁海岸」で露伴が対峙するのは、伝説の幻のアワビ。露伴は家の近くにひっそりとオープンしたイタリアンレストランで、客の体の悪いところを改善させる不思議な力を持った料理を提供するシェフのトニオ・トラサルディ(Alfredo Chiarenza)と出会う。彼は露伴に、どんな病気でも治してしまうという伝説のヒョウガラクロアワビを手に入れようと密漁を持ちかける。
同エピソードでは高橋が「水中ではこんなに自由が利かないんだ」と格闘したという水中でのシーンのほか、前半と後半のガラリと異なる作風も見どころだという。
高橋は「前半と後半に分かれた作りなんですけど、後半では前半と打って変わってアクティブな話になっていく。とはいえ、露伴らしさのテイストみたいなもの、全体的に暗くゴシックな感じの雰囲気で進んでいく。そこに一貴さんは意図されているんだと思うんですけど日本的な音楽が入ってきたり、菊地(成孔)さんの音楽センスもあると思うんですけど、そういったものが混ざってとても面白いものになっているんじゃないかなと思っています」とエピソードの特徴、魅力を挙げつつ「CGをほとんど使ってないので、そこも見どころなんじゃないかなと思います。岸辺露伴の現場ではアナログでどこまで行けるかっていうことを結構追求していまして」と、シリーズで貫いているスタンスにも言及する。
水中のシーンもCGをほぼ用いていないと言い、渡辺監督は「海のロケプラス潜水用のプールですかね。なので、ブルーバックで撮影したりということは一回もしていなくて、基本的には露伴先生の水中のシーンはリアルに水中でお芝居しているということになります」と説明。アナログにこだわる理由については「チームのみんながアナログでやるのが好きだからということなんですけど(笑)」と自身のみならずチームそのものが同じ方向を向いていることを強調し、CGに対しての持論を展開した。
「CGだから安い、高いとかそういうことでもないんですけど、私たちがいつも話してるのは、今は何でもCGで表現できてしまうけど、それが本当に面白いのかなということ。CGで全部表現できちゃうんですけど、それを全部見せることが表現としていいのかっていうこととか、その部分を全部見せずに隠している影の部分で想像してもらうといったことも大事だなといつも思っています。私は50代なんですけど、子供の頃に見た特撮映画とか特撮ドラマみたいなものっていうのはすごく手作りでやってますけど、 それでチープだなっていう風に思ったことは1度もないですし、そういう手触りというか、アナログでやることでできる臨場感みたいなことが1番大切だなと思っていまして。なので今回もアワビなどは全部造形で作ってますし、 レストランのいろいろな仕掛けというのもほぼほぼ8割、9割ぐらいはその場でやっていて、あとでCGでプラスアルファするっていうような感じでした」(取材・文 編集部・石井百合子)