アン・ハサウェイが信じられないほどクールでカッコイイ!いつの間にか働き盛りの40代
アン・ハサウェイが元気である。御年41歳で、いよいよ働き盛りになってきたわけだが……先日、アメリカの雑誌「V」に掲載する表紙用の写真をInstagramに投稿した。これがまた信じられないほどクールでカッコいい系だったのである。これほどカッコいい系に仕上がるとは、正直、ビックリである。と言うのも、どうしても映画だけで彼女を見ていると、そういった「カッコいい」系のイメージが薄いからだ。
アンハサさんは、抜群に優れたビジュアルの持ち主だが、彼女が最も得意とする役柄は「等身大の可愛い女性」である。努力家で、真面目で、しかし少し抜けていて、シャレも通じる。そういうコミカルで親しみの持てる女性キャラを演じるとバッチリとハマる。もちろん本人のビジュアルは凄いし、冷静に考えたら「絶対にその辺にいない」はずなのだが、何故か彼女には妙な親しみやすさがあるのだ。この奇妙な等身大感は、彼女がデビューした頃から一貫している。
アンハサさんの最初のブレイク作品は、『プリティ・プリンセス』(2001年)だろう。さえない女子高生が突然に一国の王女になってしまうコメディ作品だ。何もかもイマイチな女の子が、王女として教育を受けて変わっていく。『マイ・フェア・レディ』(1964年)的なド定番のお話だが、ここで彼女は、『メリーポピンズ』(1964年)などで知られる名優ジュリー・アンドリュースと共演し、さえない女子高生から王女様への見事な変身を披露。映画は大ヒットして、彼女は一躍アイドル的な大人気を得る。
しかし、その後にアンハサさんは、堅実に演技派としての方向性を模索する。『ブロークバック・マウンテン』(2005年)などの助演で磨いた演技力を使って、再び十八番の「等身大の可愛い女性」に挑んだ。それこそ言わずと知れた『プラダを着た悪魔』(2006年)である。彼女が演じたのは、名優メリル・ストリープが演じるファッション雑誌の鬼編集長のもとで、激務に放り込まれるアシスタント役だ。当初は1ミリもファッションに関心がなく、それどころかファッション業界全体に「なんでそんな必死になるの?」と疑いの目を向けていた女性が、激務の中で仕事の楽しさを知り、変わっていくが……やがて労働の虚しさと超えられない一線に直面する。お仕事映画、そしてファッション映画の傑作として、今なおファンの多い1本だ。
同作でもアンハサさんのコミカルな演技は健在で、鬼編集長の「まだ発売されていない『ハリーポッター』の新作の原稿を貰ってこい」などのムチャクチャな命令に懸命に応える姿は、彼女のコメディエンヌとしての才能が爆発している。そしてこの映画は『プリティ・プリンセス』と同じく、変わっていくアンハサさんが大きな魅力だ。服に無頓着だった彼女が、鬼編集長の蛮行に文句を言いながらも、最先端の流行に触れることで、徐々にファッションの楽しさに目覚めていく。ただし、ここでは変わった先にある自分が、決して理想通りではないこと、変わり続けた先に待つ「一線」を前にどう振る舞うか、しかし「一線」を超えた人間は本当に悪魔なのか? などなど、ホロ苦い大人の問題も提示され、後半のシリアスな部分では、アンハサさんの絶妙な演技も楽しめる。もちろん劇中で最先端の服を身にまとった彼女は、今日の視点から見ても非常にオシャレで、見ていて単純に楽しい。
その後もクリスファー・ノーラン監督と組んだ『ダークナイト ライジング』(2012年)では、ノーランの「こういう感じならギリギリで『あり』かな~~?」という苦悩が聞こえてきそうなネコ耳を装着し、カッコよくてセクシーなキャットウーマンを演じ、オールスター共演作となった『オーシャンズ8』(2018年)では、間が抜けているようで、実は……という、セルフパロディ的な女優役を好演。もちろん十八番の「等身大の可愛い女性」ぶりも忘れずに、役者として色々な役を演じつつ、良い形でキャリアを形成している。
そんなアンハサさんが40代の頭に、どストレートにカッコいいビジュアルを提示してきたのは、まだまだこれから色々な役に挑戦していきたい、という熱意の発露に思えてならないだろう。アン・ハサウェイという人物は、これからもさらに役者として幅を広げるはずだ。彼女の活躍を引き続き注視していきたい。(加藤よしき)