松下洸平「セリフの半分以上が中国語…」 初大河で一筋縄ではいかない役柄
吉高由里子が紫式部(まひろ)役で主演を務める大河ドラマ「光る君へ」(NHK総合・日曜午後8時~ほか)でまひろが越前の地で出会う見習い医師・周明を演じる俳優、シンガーソングライターの松下洸平が、本作で大河ドラマ初出演を果たした心境や、謎めいたオリジナルキャラクターについて語った(※一部ネタバレあり)。
平安中期に、のちに1000年の時を超えるベストセラーとなる「源氏物語」を生み出した紫式部の人生を、社会現象を巻き起こした恋愛ドラマ「セカンドバージン」(2011)や大河ドラマ「功名が辻」(2006)などの大石静のオリジナル脚本により描く本作。松下演じる周明は、朱仁聡(浩歌)らとともに越前にやってきた、宋の見習い医師。海辺でまひろと出会った彼は宋語を話し、日本語を理解しない様子だったが前週・第22回のラストでは彼が日本語を発し、彼が宋人なのか日本人なのか判明しないままになっていた。
大河ドラマ初出演となった本作について「周明は宋から訪れた見習い医師という設定ですが、セリフの半分以上が中国語だったことがびっくりしました(笑)」と驚いたことを明かす松下。劇中で披露した流ちょうな宋語が話題を呼んだが、「日本語にはない発音が多くて大変な部分もありましたが、オリジナルキャラクターである<周明>にリアリティを与えるためにも、言語の習得が最も大切なポイントだと感じ、先生のご指導のもと準備を積み重ねました。このような一筋縄ではいかない配役をいただけたのは役者冥利に尽きますし、色々な方のお力を借りて中国語での芝居もなんとか乗り越えることができて、本当に良かったなと思っています。大河ドラマ初出演で、ひとつ大きな試練を与えてくださったことに感謝しています」と宋語の特訓を経て撮影に臨んだと話す。
主演の吉高とは2021年放送のTBSドラマ「最愛」で殺人の容疑をかけられる女性実業家・梨央と、初恋の相手である刑事・宮崎大輝役として共演。また制作統括の内田ゆき、演出の中島由貴とは松下が俳優としてブレイクするきっかけとなった朝ドラ「スカーレット」(2019)で現場を共にしている。
「大河ドラマにはなんだか“独特の緊張感”が漂う厳しい場所というイメージを勝手に持っていましたが、主演の吉高由里子さんを筆頭にとても明るい方々に囲まれ、和気あいあいとした現場でした。以前のドラマでご一緒させていただいた俳優さんやスタッフさんとの再会もあり、あたたかい雰囲気に包まれた中で撮影に臨むことができ、とても嬉しく思いました」
9日放送・第23回「雪の舞うころ」では、周明がまひろに対馬に生まれ宋で育ったことを告白。12歳の時、口減らしのために父親に海に捨てられたこと、宋の船に拾われてからは牛や馬のように働かされたことなど過酷な生い立ちを語った。彼の複雑な身の上に、松下はこう思いを巡らせる。
「周明は対馬で生まれながら、ひとりの宋人として生きねばならない複雑な宿命を背負った青年。彼は自分の居場所や拠り所がないことに対する葛藤や苦しみをずっと抱いて、生きてきたのだと思います。日本に帰ることはできないし、けれども生粋の宋人でないことも理解しているはず。宋で優しい医師(くすし)に出会い、なんとか生きるすべは身につけましたが、自分には故郷や帰る場所がないことを心のどこかで引きずり、それに対してコンプレックスを持っているのではないかと思いました。周明が抱える葛藤や壮絶な過去、影のある人物像が少しでも伝われるといいなと思いながら、彼を演じていました」
また周明は、第22回で朱仁聡が殺人の疑いをかけられた際、証人を伴い「話があって来た!」と為時に直談判する場面があった。この時、周明は初めて日本語を発する展開となったが、松下はこの時の周明の心境を以下のように振り返る。
「朱仁聡は周明を医師として迎えてくれ、面倒をみてくれる“命の恩人”のような存在です。第22回の最後で周明がまひろや為時たちに日本語で話すシーンがありますが、それはある意味、周明にとっても(日本語が話せることを同僚の宋人など周囲に知らしめることになるため)リスクのある行動だったと思います。それでも捕らえられた朱を守りたいという強い衝動に駆られて証人を探し直訴に出るほど、とても大切で心から尊敬する人物なのだと思っています」
第23回では周明がまひろに宋のことばを教え、急速に親しくなっていく展開となったが、彼はまひろに「俺を信じるな」と意味深な一言をつぶやき、終盤には朱に衝撃的な言葉を放っていた。果たして彼の目的とは? その動向から目が離せない。(編集部・石井百合子)