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『ロード・オブ・ザ・リング』なぜアニメ映画化?「攻殻機動隊」神山健治が監督を引き受けた理由

『THE LORD OF THE RINGS:THE WAR OF THE ROHIRRIM(原題)』場面写真
『THE LORD OF THE RINGS:THE WAR OF THE ROHIRRIM(原題)』場面写真 - (c) 2024 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.

 現地時間11日、『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズ初のオリジナル長編アニメーション映画『THE LORD OF THE RINGS:THE WAR OF THE ROHIRRIM(原題)』の記者会見が、フランスで開催中の「アヌシー国際アニメーション映画祭」で行われた。同作を監督したのは、アニメ「攻殻機動隊」シリーズなどで知られる神山健治。プロデューサーは、『ロード・オブ・ザ・リング』『ホビット』3部作全て脚本を手がけたフィリッパ・ボウエンだ。実写映画3部作へとつながる物語を描く神山監督とボウエンが、アニメ映画化の経緯や、作品の魅力について語った。

【画像】『ロード・オブ・ザ・リング』アニメ化!主要キャラのビジュアル(全3点)

 ボウエンによると、本作の企画は『ホビット』3部作が終了したタイミングで浮上したという。「実写版でまたあの世界観を創り上げるというのは途方もないことに思え、さすがにもう一度、中つ国に行こうという気持ちにはならなかった」とさらなる実写映画には消極的だった中、「アニメーションというのは?」という声があがった。「それはとてもフレッシュな響きがあったし、すごく興味深いアプローチだと思いましたね。そもそも『指輪物語』の最初の映像作品はアニメーション(1978年、ラルフ・バクシの『指輪物語』)だったわけですし、J・R・R・トールキンもおそらく、映像化するならアニメーションだろうと考えていたと思います」

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 アニメは「息を呑むくらい美しいビジュアルとストーリーテリングが大きな魅力」だと語るボウエン。中つ国の世界観をアニメで表現すると考えた時、彼女の目に留まったのは神山監督の作品だった。「とにかくビジュアルに大きなインパクトがあり、胸に迫るようなものを持っていると感じたんです。実際、一緒に仕事をしてみると、神山監督のストーリーテリングに対してのタックルの仕方がとにかくワクワクするものでした。私は、ピーター(・ジャクソン)と仕事をしているときと同じような感覚になりました」

神山健治監督

 日本のアニメを長年プロデュースしていたワーナーのジェイソン・ディマルコが、『攻殻機動隊SAC_2045』を製作していた神山監督に接触。ジェイソンは、『ロード・オブ・ザ・リング』を日本のスタイル=手描きのアニメーションで映像化したいと神山監督に打診したそうだが、神山監督の答えは「とても難しいんじゃないの?」だった。

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 「馬が2,000頭も出て来たり、オークの軍勢が出て来たり、ホビットだけでも大変ですよって。ホビットが大変なのは、その大きさ。ルックは人間と同じようなのでいいんですが、彼らは小さいでしょ? そういうキャラクターの比率を考えただけでも、日本(スタイル)のアニメで作るのは難しいんじゃないかと思いましたね」

 「同時に日本国内に、これをやりたいというアニメーターがいるんだろうかとも考えました」とも語る神山監督。「日本のアニメーターにとってもっとも重要なのは、その作品に対してモチベーションを持てるのかということです。彼らには『LOTRだよ? そんな人気作をやりたくない人なんているの?』と言われたんですが、『やりたくないわけじゃない。それがどれだけ大変かということがわかるので、凄く難しいんじゃないのかな』と答えたんです」

 しかし神山監督は、企画について話を聞くうちに「彼らは本気でアニメを作りたい、しかも日本のスタイルで作りたい」とワーナーやニューラインの熱意を受け止め、「僕にとってもこんなチャンスはない」と企画に参加することを決意。特に魅力を感じたのは、本作の主人公が人間であるという点だ。物語は「指輪物語 追補編」の一部であるローハンの最強の王ヘルムについての記述を膨らませたオリジナルストーリー。ヘルム王の一人娘である戦士・ヘラと、幼馴染にして宿敵となるウルフの宿命の対決が描かれる。

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プロデューサーを務めるフィリッパ・ボウエン

 「そのエピソード自体が面白かったこと、そして物語がオリジナルというところでした。追補版にはわずか一行だけ『3人のきょうだいがいて、その末っ子は娘だ』と書かれていて、その娘の名前は記されてない。あの時代は女性の名前が残ることはなかったからですよね。『ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔』でもセオデン王の姪であるエオウィンは活躍するとはいえ、剣をもつことすら禁じられていたのでこっそり闘っていたくらいですから」

 ボウエンも「神山監督が惹かれたのは、ちょっと短所もあるヘルム王」と語っており、「子供たちには愛はあり、それが彼の大きな特徴になっています。いまは命を吹き込まれた作品を見て、正しい選択をしたと思っています。アニメというフォーマットを選び、その第一弾としてパーフェクトな作品になったと確信しています」と神山監督の手腕に期待を寄せる。

 神山監督による『ロード・オブ・ザ・リング』のアニメ映画化によって、欧米のアニメ制作の基準が大きく変わる可能性があるとボウエンは胸を膨らませている。「神山さんはストーリーテラーであり脚本家であり監督なんですが、そのなかでもとりわけ、ストーリーテリングという才能にあふれた人だと思っています。そして、彼はやっぱりアーティスト。何がビジュアル的に美しいのかということもはっきり見えているし、音楽も大好きでこだわっている。本当に傑出した監督です。実写界が彼をアニメ界から盗まないことを願っています(笑)。本当に誇らしい作品、日本のアーティストたちが本当に素晴らしい仕事をしてくれて。彼らの創造性や力強さはマジで最高。本当にこの作品にかかわれてよかったと思っている。日本の観客と早く一緒にこの作品を観たいです」(編集部・倉本拓弥)

『THE LORD OF THE RINGS:THE WAR OF THE ROHIRRIM(原題)』12月全国劇場公開

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