高畑充希、塩野瑛久の言葉が励みに 「光る君へ」で愛に生きた中宮をまっとう
現在放送中の大河ドラマ「光る君へ」(NHK総合・日曜午後8時~ほか)で、一条天皇に入内し、中宮となった藤原定子を演じる高畑充希。定子と言えば、清少納言が執筆した随筆「枕草子」では、明るくユーモアあふれる才色兼備な女性として描かれているが、本作のなかでは一条天皇との“愛”がクローズアップされている。そんな定子を演じ切った高畑が、一条天皇を演じる塩野瑛久との撮影を振り返った。
本作では、1000年以上の時を経た今もなお世界中で愛されている「源氏物語」の作者・紫式部/まひろ(吉高由里子)の生涯を、平安貴族の最高権力者となった藤原道長(柄本佑)との密やかな恋心を軸に、さまざまな人間模様と共に描く。
これまで、まひろと道長の恋を中心に、花山天皇(本郷奏多)と女御・藤原よし子(井上咲楽※「よし」はりっしんべんに氏が正式表記)らさまざまな恋模様が描かれてきた。ときには大胆なラブシーンが大きな反響を呼んだ。なかでも、一条天皇と定子の仲睦まじさはSNS上でもたびたび話題になっている。
一条天皇を演じる塩野とはドラマ「あすなろ三三七拍子」(2014)で共演経験があるが「当時はほとんど同じシーンがなかったので」とほぼ今回が初めての対峙だったという。「それでも、定子にとって一条天皇との関係は、清少納言と同じぐらい大切な間柄だったので、まったく初めましてではなかったのは、すごく良かったです」と過去の共演が良い効果になっていたようだ。
もともと高畑が定子に抱いていたイメージは、「枕草子」で描かれているような「明るくてユーモアがある魅力的な女性」だったという。高畑はこれまで「誰かに憧れを抱くような役が多かった」と振り返ると「少納言や一条天皇から“推し”のように憧れられる存在を演じることに、すごくプレッシャーがあったんです」と胸の内を明かす。
そんななか、塩野が面と向かって「定子さん好きです」と憚ることなく言葉で表現してくれていたことに「とても救われた感覚が強かった。そう言ってもらえると、自分でも大丈夫かもしれない」と自信につながったという。
一条天皇に溺愛される定子。しかし物語が進むにつれて、高畑は一条天皇とのシーンに対し「どんどん複雑な心境になっていきました」と語る。
その理由について「最初のころは年の差もあり、可愛い弟分のような存在だったのが、徐々に男性として見るようになり、そこから愛し合うことになります」と関係の変化に触れる。物語が進み一条天皇が成長し、その立場が明確になってくるにつれ、無邪気に愛し合うだけではなく「定子が入内した本来の意味、一家繁栄のための役割がのしかかってきた」と話す。
定子にとって愛すべき存在である一条天皇。一方で「この人に見放されたら一族が失脚し、自分と子供も行く場所がなくなる」という保身的な意味も強くなっていく。そんな定子の思いに対して「一条天皇はとにかく愛一本勝負(笑)」と高畑は笑うと「その温度差から男女の考え方の違いも見えてくる。天皇への愛、家族への思い……。定子の心はどんどん混とんとしてくるんです。特に出家してからは、監督に『あざとすぎないですか』と聞いていた」そうで、一条天皇とのシーンは時間を重ねていけばいくほど、難しいものになっていったという。
そんな状況を「真綿で首を絞められるような苦しさでした」と振り返る高畑。それでも「全力の愛」を定子に注ぐ一条天皇を実直に演じた塩野には「本当にまっすぐに向き合ってくださったので、不安はありませんでした」とすがすがしい表情。さらに「塩野さんは顔が彫刻のようにキレイで平安の衣装が似合っていたので、同じ画面に並びたくないな……と毎日思いながら撮影していました」と笑っていた。
一条天皇との3人目の子を出産し、25歳で命を落とした定子。7月21日放送・第28回でこの世を去ったが、高畑に「定子は幸せだったのか」と問うと「すごく難しい質問」と苦笑いを浮かべ「一般的な幸せを知らない方だったのなら恵まれた人生だったのかも……と思うのですが、定子は幼少期、とても家族に愛されて育ったという記憶があるので、やはり最後家族がどんどん離れていってしまったのは可哀そうだったと思います」と考えを巡らせる。
それでも高畑は「定子は一度絶望し、死にたい……という気持ちになりますが、基本的にどれだけ落ちた状態でも幸せを見つけたいと思う気力を持っていた女性だと思うんです」とも言い、「そういう思いを常に持っていた女性だったので、最終的には幸せだったのかなとは思います」と見解を述べていた。(取材・文:磯部正和)